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「ダイレクトに物語を渡したい」、壱劇屋の“Wordless”な殺陣芝居「独鬼」

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劇団壱劇屋「独鬼~hitorioni~」合同取材会より。左から大熊隆太郎、竹村晋太朗、西分綾香。

劇団壱劇屋「独鬼~hitorioni~」合同取材会より。左から大熊隆太郎、竹村晋太朗、西分綾香。

劇団壱劇屋 東名阪三都市ツアー2018 Wordless×殺陣芝居「独鬼~hitorioni~」の合同取材会が、昨日6月19日に東京都内で行われた。

本作は、壱劇屋の竹村晋太朗が作・演出を手がけるセリフを一切用いない“Wordless”な殺陣芝居。2016年に初演され、不死身の鬼と、その鬼が拾った人間の女が描かれる。なお6月15日から17日にかけて大阪公演が行われたばかりで、7月には東京、愛知を巡演予定だ。

取材会には壱劇屋代表で俳優の大熊隆太郎、脚本・演出・殺陣を担当し、物語の軸となる鬼役を演じる竹村、所属俳優の西分綾香が出席。大熊は本公演について「劇団10周年企画の1つで、毎年恒例の3都市ツアーです。2015年から竹村が作・演出を手がけているのですが、今回初めて竹村作品を東京と愛知で上演することになります」と解説する。

いいむろなおきや小野寺修二の作品に参加し、京都のノンバーバルパフォーマンス「ギア-GEAR-」では、パントマイムパートを担当した大熊は、壱劇屋を「身体表現をメインとした集団」と表現。そんな大熊と高校の演劇部時代からの仲だと話す竹村は、役者一筋から作・演出も手がけるようになったきっかけについて「養成所でアクションの勉強をして、感情は人間の行動原理に沿っていれば必要最低限の表現で伝わると思ったんです。感情がたかぶらないと殴ったり斬りかかったりはしないので、殺陣は感情表現として有効だと思い、セリフのない作品を作りはじめました」と原点を回想した。

竹村はセリフのない作品を"ノンバーバル"でなく"Wordless"と言い換えた理由を「ノンバーバルは非言語コミュニケーションではあるのですが、僕はコミュニケーションを多く必要とする作品を作っています。作品自体にセリフがないだけで、通常のお芝居を作る過程と変わらないんです。それで"Wordless"と呼んでいます」と説明。また今回の「独鬼」について「再演ですが、“Wordless”作品としては9作目。死なない鬼が人間の赤ちゃんを拾い、育て、その子が死ぬまでを描きます。観客によって受け取り方が大きく異なるので、それぞれがフラットに受け取れるように鬼の感情は“無”にしています。歳をとっていく女と、行動を共にする人間の男の役を4世代に分けていて、各年代の役者の持ち味が出るのも魅力です」と語った。

「セリフのあるお芝居以上に物語性を重要視している」と続ける竹村は「セリフがないからといって、身振り手振りを大きく演技させるのは嫌で、いらないところを削いで、ダイレクトに物語を渡したい。美術も象徴的なものだけですし、映像を使えば説明が簡単になりそうな場面も、すべて人間が演じています」と力説した。

記者から演技面のことを尋ねられると、西分は「台本にセリフが一切書かれていないので、慣れるまで大変でしたが、どの道が正しいか、わかってくると楽しいです」と回答し、昨年17年に5カ月連続で上演された5本の“Wordless”作品「五彩の神楽」シリーズについて「1作品だけ出演しなかったんですが、客席から観たらものすごい段取りの量になっていて驚きました(笑)」とエピソードを明かした。続く大熊は出演の醍醐味を「普段とアプローチは変わらないですが、言葉から解き放たれているぶん、そのときの空気をより感じながら演技できる。演劇の“底の方”の楽しさがある気がします」と答えた。

また大熊は、“Wordless”作品の特徴について「メインキャスト以外に“アクションモブ”と呼ばれる、殺陣に特化した部隊がいるのも見どころです。彼らは(戦いのシーンで)やられては出てきてを繰り返し、身体のみで世界観を構築する職人のような存在。5カ月連続でやって、1公演ずつ鍛えられてきたメンバーが参加しています」と話し、竹村も同調して、「アクションモブがどんどん進化して、処理速度も速くなり、できることが増えたので、僕もどんどんハードルを上げたんです」と上演を重ねてきた手応えを語った。

そして「独鬼」の大阪公演を振り返った大熊は「初見にもかかわらず『冒頭5分で泣いた』と言ってくださったお客様もいて。なんでやろう?と思ったんですが、おそらく、5分足らずのミュージックビデオや、絵画、写真に感動してしまう感覚に近いのかなと。それもセリフをなくした効果だと思います」と分析。続けて竹村が「指標としての台本はありますが、全然違う捉え方をされる観客もいます。答え合わせのように台本を買って読んでいる方もいますよね」と明かすと、大熊は「台本を読んで、もう1回観ると感じ方もだいぶ変わると思うので、ぜひ台本を購入していただきたいです(笑)!」と呼びかけた。

最後に竹村が「セリフのない作品を関西でも、東京に負けないレベルで作れるんだぞ!という気持ちです。今回を機に東京を荒らしてやろうと思っています(笑)」と笑いを交えつつ抱負を語る。一方の大熊はツアー公演について「関西でしか観れないものを育んでいる最中なので、関西まで観にきて欲しいという思いでツアーをしています」と感慨を述べ、西分は「セリフのない殺陣芝居を東京と愛知で初めて上演するので、どんな印象を持っていただけるか楽しみです」と語り取材を締めくくった。

公演は7月12日から17日まで東京・シアターグリーンBOX in BOX THEATER、7月28・29日に愛知・名古屋市東文化小劇場にて。上演時間は約70分を予定している。

劇団壱劇屋 東名阪三都市ツアー2018 Wordless×殺陣芝居「独鬼~hitorioni~」

2018年6月15日(金)~17日(日)※公演終了
大阪府 ABCホール

2018年7月12日(木)~17日(火)
東京都 シアターグリーンBOX in BOX THEATER

2018年7月28日(土)・29日(日)
愛知県 名古屋市東文化小劇場

作・演出・殺陣:竹村晋太朗
出演:井立天、大熊隆太郎岡村圭輔、柏木明日香、小林嵩平、高安智美、竹村晋太朗、西分綾香、藤島望、丸山真輝、山本貴大、湯浅春枝 / 淡海優、川本海紀、清水慎太郎、長谷川桂太、石原正一、山本一樹竜崎だいち村木よし子

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