本作は、壱劇屋の
取材会には壱劇屋代表で俳優の
いいむろなおきや小野寺修二の作品に参加し、京都のノンバーバルパフォーマンス「ギア-GEAR-」では、パントマイムパートを担当した大熊は、壱劇屋を「身体表現をメインとした集団」と表現。そんな大熊と高校の演劇部時代からの仲だと話す竹村は、役者一筋から作・演出も手がけるようになったきっかけについて「養成所でアクションの勉強をして、感情は人間の行動原理に沿っていれば必要最低限の表現で伝わると思ったんです。感情がたかぶらないと殴ったり斬りかかったりはしないので、殺陣は感情表現として有効だと思い、セリフのない作品を作りはじめました」と原点を回想した。
竹村はセリフのない作品を"ノンバーバル"でなく"Wordless"と言い換えた理由を「ノンバーバルは非言語コミュニケーションではあるのですが、僕はコミュニケーションを多く必要とする作品を作っています。作品自体にセリフがないだけで、通常のお芝居を作る過程と変わらないんです。それで"Wordless"と呼んでいます」と説明。また今回の「独鬼」について「再演ですが、“Wordless”作品としては9作目。死なない鬼が人間の赤ちゃんを拾い、育て、その子が死ぬまでを描きます。観客によって受け取り方が大きく異なるので、それぞれがフラットに受け取れるように鬼の感情は“無”にしています。歳をとっていく女と、行動を共にする人間の男の役を4世代に分けていて、各年代の役者の持ち味が出るのも魅力です」と語った。
「セリフのあるお芝居以上に物語性を重要視している」と続ける竹村は「セリフがないからといって、身振り手振りを大きく演技させるのは嫌で、いらないところを削いで、ダイレクトに物語を渡したい。美術も象徴的なものだけですし、映像を使えば説明が簡単になりそうな場面も、すべて人間が演じています」と力説した。
記者から演技面のことを尋ねられると、西分は「台本にセリフが一切書かれていないので、慣れるまで大変でしたが、どの道が正しいか、わかってくると楽しいです」と回答し、昨年17年に5カ月連続で上演された5本の“Wordless”作品「五彩の神楽」シリーズについて「1作品だけ出演しなかったんですが、客席から観たらものすごい段取りの量になっていて驚きました(笑)」とエピソードを明かした。続く大熊は出演の醍醐味を「普段とアプローチは変わらないですが、言葉から解き放たれているぶん、そのときの空気をより感じながら演技できる。演劇の“底の方”の楽しさがある気がします」と答えた。
また大熊は、“Wordless”作品の特徴について「メインキャスト以外に“アクションモブ”と呼ばれる、殺陣に特化した部隊がいるのも見どころです。彼らは(戦いのシーンで)やられては出てきてを繰り返し、身体のみで世界観を構築する職人のような存在。5カ月連続でやって、1公演ずつ鍛えられてきたメンバーが参加しています」と話し、竹村も同調して、「アクションモブがどんどん進化して、処理速度も速くなり、できることが増えたので、僕もどんどんハードルを上げたんです」と上演を重ねてきた手応えを語った。
そして「独鬼」の大阪公演を振り返った大熊は「初見にもかかわらず『冒頭5分で泣いた』と言ってくださったお客様もいて。なんでやろう?と思ったんですが、おそらく、5分足らずのミュージックビデオや、絵画、写真に感動してしまう感覚に近いのかなと。それもセリフをなくした効果だと思います」と分析。続けて竹村が「指標としての台本はありますが、全然違う捉え方をされる観客もいます。答え合わせのように台本を買って読んでいる方もいますよね」と明かすと、大熊は「台本を読んで、もう1回観ると感じ方もだいぶ変わると思うので、ぜひ台本を購入していただきたいです(笑)!」と呼びかけた。
最後に竹村が「セリフのない作品を関西でも、東京に負けないレベルで作れるんだぞ!という気持ちです。今回を機に東京を荒らしてやろうと思っています(笑)」と笑いを交えつつ抱負を語る。一方の大熊はツアー公演について「関西でしか観れないものを育んでいる最中なので、関西まで観にきて欲しいという思いでツアーをしています」と感慨を述べ、西分は「セリフのない殺陣芝居を東京と愛知で初めて上演するので、どんな印象を持っていただけるか楽しみです」と語り取材を締めくくった。
公演は7月12日から17日まで東京・シアターグリーンBOX in BOX THEATER、7月28・29日に愛知・名古屋市東文化小劇場にて。上演時間は約70分を予定している。
劇団壱劇屋 東名阪三都市ツアー2018 Wordless×殺陣芝居「独鬼~hitorioni~」
2018年6月15日(金)~17日(日)※公演終了
大阪府 ABCホール
2018年7月12日(木)~17日(火)
東京都 シアターグリーンBOX in BOX THEATER
2018年7月28日(土)・29日(日)
愛知県 名古屋市東文化小劇場
作・演出・殺陣:
出演:井立天、
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