殺人を犯した青年・祐一と、彼と共に逃げる女性・光代の逃避行を描いた
佐賀の紳士服量販店で働く光代は、職場とアパートを往復するだけの日々を過ごしていた。寂しい日常に耐えかねた光代はある日、出会い系サイトで知り合った男・祐一にメールを送り、2人は出会ったその日に関係を持つ。しかし祐一には、巷を騒がせている殺人事件の犯人であるという秘密があった。祐一は光代に自分が犯人だと打ち明け、自首しようとする。しかし光代は「あたしだけ置いていかんで」と祐一を止め、2人で逃避行を始め……。
舞台上にはボックスが3つ置かれ、背後には石柱を組み合わせたオブジェがそびえ立つ。2人は箱を車やベッドに見立てながら、車でラブホテルを転々とする逃亡生活の様子を表現する。また次々と替わる照明によって、場面の移り変わりや祐一と光代の心理的な距離の変化が表された。
舞台は光代のモノローグを中心に静かに進行する。母に捨てられ、土木作業員をしながら祖父母の面倒を見る祐一と、「自分の人生はこの国道を行ったり来たりしているだけ」と語る光代のやりとりからは、強い孤独感と閉塞感がにじみ出す。
中村は感情を表に出さない寡黙な祐一を静かな佇まいで表現し、時折見せる優しい笑顔から光代への愛をにじませる。また美波は膨大な九州弁のセリフを操り、孤独の中でようやく出会えた祐一を手放すまいと献身的に振る舞う光代を熱演した。
舞台には常に緊張感が漂うが、心を通わせた2人が足のマッサージをしながらじゃれ合う場面では、先の見えない日々で束の間の安息を感じさせた。上演時間は休憩なしの約1時間30分。公演は4月8日まで。
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