「1万人のゴールド・シアター」大団円、「蜷川さんありがとう」

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「1万人のゴールド・シアター2016『金色交響曲~わたしのゆめ・きみのゆめ~』」が12月7日に埼玉・さいたまスーパーアリーナにて上演された。

「1万人のゴールド・シアター2016『金色交響曲~わたしのゆめ・きみのゆめ~』」より。(c)宮川舞子

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「1万人のゴールド・シアター2016『金色交響曲~わたしのゆめ・きみのゆめ~』」より。(c)宮川舞子

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「1万人のゴールド・シアター2016『金色交響曲~わたしのゆめ・きみのゆめ~』」は、「夢」をテーマに「ロミオとジュリエット」の世界観を織り交ぜながら描かれた大群集劇。開演前のさいたまスーパーアリーナの広いアクティングエリアには、長いテーブルと椅子、14台の白いベッドが配された。四隅にはバルコニーが据えられ、客席前方には衣装を着た出演者が座っているブロックもあり、これからどんな作品が繰り広げられるのか、全く想像ができない。

「1万人のゴールド・シアター2016『金色交響曲~わたしのゆめ・きみのゆめ~』」より。(c)宮川舞子

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開演5分前に、1人の男性がアクティングエリアに進み出て、長テーブルの真ん中に着く。それを合図に、ビーチボールを持った人や紙芝居を乗せた自転車の人、車椅子の人たち、ベッドに横になる人や大きな折り紙を運ぶ人など、続々とエリア内に人が増えていき、かごめかごめやビーチボールなどさまざまな遊びが始まった。やがてエリア中央に1人の女性が現れて、マイク片手に話を始める。自分の名前と年齢、義父母を看取り、夫が17回忌を迎えること、そして「私のささやかな夢は、“毎日用事があって出て行く(場所がある)こと”です」と発言すると、場内からわーっと拍手が起きた。続けて数名が簡単な自己紹介と夢を語る中、望まぬ結婚を強要したため娘を亡くした男性の苦しみ、同じく息子を亡くした男性の苦しみが語られると、いつの間にか物語は「ロミオとジュリエット」の世界に入り込んでいたのだった。

「1万人のゴールド・シアター2016『金色交響曲~わたしのゆめ・きみのゆめ~』」より。(c)宮川舞子

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ロミオとジュリエットが出会うファーストシーンでは、客席にいた出演者たちも参加して“大舞踏会”が披露される。そこへ、恋に落ちた2人の思いを代弁するかのように、こまどり姉妹が「恋に拍手を」を歌いながら登場。また“本家”さいたまゴールド・シアターの面々も現れて、「『1万人のゴールド・シアター』の始まりですー」と開幕宣言がなされた。

「1万人のゴールド・シアター2016『金色交響曲~わたしのゆめ・きみのゆめ~』」より。(c)宮川舞子

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バルコニーのシーンでは、ロミオとジュリエットのセリフを、複数の俳優たちが一言ずつ発する。情熱的なロミオもいればクールなロミオ、ひょうきんなロミオもおり、また少女のようなジュリエットもいれば“姉さん女房”的なジュリエット、セクシーなジュリエットもいるといった具合で、客席からは笑いが絶えない。しかし恋人たちの、少々むず痒くなるような愛の言葉の応酬を、大の大人たちが時に身悶えし、時に絶叫しながら語るさまは、実に微笑ましく、初々しく響いた。

「1万人のゴールド・シアター2016『金色交響曲~わたしのゆめ・きみのゆめ~』」より。(c)引地信彦

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ロミオとジュリエット以外の役は、プロの俳優たちで演じられる。僧ロレンス役の原康義、モンタギュー役の妹尾正文、乳母役の岡田正、キャピュレット役の清家栄一、ティボルト役の新川將人、ベンヴォーリオ役の堀文明をはじめ、さいたまネクスト・シアターやはえぎわなどの面々が、要所要所で作品のネジをしっかりと締めていく。特に、終幕近くに木場勝己が現れ、ロミオの心情を語るシーンでは、さすがの表現力で一瞬で場をさらった。

また、劇中ではたびたび、出演者たちの合唱シーンが挟み込まれた。そのときは観客も一緒になっての大合唱となり、アリーナの大空間が不思議な一体感に包み込まれた。歌の力を生かすアイデアは、ノゾエが長年かかわっている、高齢者施設のツアー公演「世田谷パブリックシアター@ホーム公演」でも使われていたもので、ノゾエのこれまでの経験がはっきりと形になって表れた瞬間だった。

「1万人のゴールド・シアター2016『金色交響曲~わたしのゆめ・きみのゆめ~』」より。(c)宮川舞子

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ラスト、ロミオとジュリエットが死を遂げるシーンでは、「ボレロ」が流れる中、客席にいた出演者も再び場内に進み出て、大きな人の渦を作り出す。その渦は、場内に倒れこんだ複数のロミオとジュリエットを巻き込んで、さらに大きな渦へ。そして曲の終わりとともに1600人分のストールが高く投げられると、宙に白と黒の帯が広がった。一瞬の間の後、冒頭と同じように1人の女性が語り出す。自分の夢はこの公演をやり遂げることだったこと、でもこの公演で素敵な人に出会ったこと、そして「限りある人生の中でも、恋ほど素敵な物語は、ございません」と言い切るや否や、再び「恋に拍手を」のメロディが流れ出し、出演者たちは「サイコー!」「やり遂げたよー!」「楽しかった!」と叫びながら踊り始めたのだった。

終演後、そのまま解散式が行われた。挨拶を求められたノゾエ征爾は、「終わっちゃいましたね! 7月に稽古を始めたときは、まさかここまでまとまるとは微塵も思っていませんでした」と笑う。さらに「今日の本番、とってもよかったです。もう言葉はないです。最後にこの企画を立ち上げた方にお礼を言いましょう」と言って、さいたまネクスト・シアターのメンバーにマイクを渡すと、彼らが「蜷川さん、ありがとうございました!」と叫んで、割れんばかりの拍手が起こった。

一般参加者の野口泉氏。

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終演後には会見が行われ、ノゾエのほか、一般出演者で91歳の野口泉氏、86歳の米山睦子氏、さいたまゴールド・シアター団員で80歳の遠山陽一、74歳の百元夏繪が登壇した。野口氏は「今回の出演者の中で一番歳をとっているということもありますし、皆さんの足を引っ張ってはならないということでそれが一番頭の中にありました。今回、演劇というものを通じて今までにない経験ができました」と出演の感想を語る。米山氏は「友達がみんな、応募したいと思っても、自分はやれないと思って諦めてしまったみたいなんですね。でも私が応募したと話したら、その気持ちがすごいと言われて」と話す。また今回の出演者たちの間で「ノゾエ先生に次も何かやっていただきましょうって話をしていて。みんなで集まる約束をしているんです」と楽しそうに笑った。

一般参加者の米山睦子氏。

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“本家”ゴールド・シアターの2人は「楽しかった!」と感想を語り、遠山が「ゴールドは今日が一番良かったと言われて安心しました」と安堵を見せる。また百元が「ゴールド・シアターを初めて10年になりますが、初心にかえったような思いがありました」と語ると遠山は「10年も経つと“とう”がたっちゃってねえ」と語り、笑いが起きた。また、蜷川さんがこの舞台を観ていたら?という質問に、「本家しっかりしろー!って地団駄踏んで観ていらっしゃるんじゃないかと思います」と百元が答えると、ノゾエが「たとえ『バカヤロー!』って言ってたとしても、すごくいい笑顔だったのではないかと思いますよ」と続ける一幕も。

さいたまゴールド・シアター団員の遠山陽一。

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記者からフィクションとノンフィクションが入り混じった作品の構成意図を問われると、ノゾエは「僕はフィクションとノンフィクションが入り混じったとは思ってなくて。今回は、ずっとどこかでノンフィクションという感じがしていました。セリフではあってもリアルというか、皆さんが偽らずにセリフを発せられるので、それぞれの肉声になっていて。フィクションという感覚がなかったですね」と語る。さらに「(本作が)演劇表現としてどうだったかという問題もあるとは思いますが、今回皆さんにとっては“参加すること”がまず大きな一歩だったと思います。その力をいいエネルギーにして、皆さんがいい笑顔で終われたらと、そこだけを目指していました」と思いを述べた。

さいたまゴールド・シアター団員の百元夏繪。

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最後に作品のテーマである「夢」に絡めて、それぞれの今後の夢が問われると百元が、「舞台に立つ、ということがそもそも夢なんですが」と前置きしながら、「最後はオリンピックの開会式に、もし高齢者の集団として参加できたらいいなあって夢を持っています」と語ると、ノゾエは「次……オリンピック?(笑)」と応じて、会見は明るい笑いの中、終了した。

※初出時、団体名に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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「1万人のゴールド・シアター2016『金色交響曲~わたしのゆめ・きみのゆめ~』」

2016年12月7日(水)
埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

企画・原案:蜷川幸雄
脚本・演出:ノゾエ征爾
企画・構成:加藤種男
出演:60歳以上の一般公募による出演者、こまどり姉妹木場勝己原康義、妹尾正文、岡田正、清家栄一、新川將人、堀文明さいたまゴールド・シアターさいたまネクスト・シアター

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彩の国さいたま芸術劇場<演劇> @Play_SAF

「1万人のゴールド・シアター2016」
演劇ナタリーさんに記事をアップしていただきました!

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