KYOTO NIPPON FESTIVAL 2026 イマーシブシアター「花宵の大茶会」より、梅の祈り人(菅原道真の気配)。

テンミニ!10分でハマる舞台

DAZZLE飯塚浩一郎が語る、北野天満宮でのイマーシブシアター「花宵の大茶会」

菅原道真の和歌に誘われ、北野大茶会の世界へ!

PRKYOTO NIPPON FESTIVAL 2026 イマーシブシアター「花宵の大茶会」

菅原道真をまつる京都・北野天満宮を舞台に、日本の美と文化を発信してきた「KYOTO NIPPON FESTIVAL」。2016年にスタートし、今年で10周年を迎える同フェスティバルに、ダンスカンパニー・DAZZLEが登場する。DAZZLEは、「KYOTO NIPPON FESTIVAL 2026」に参画するアーティストの蜷川実花、クリエイティブチーム・EiMと共に、イマーシブシアター「花宵の大茶会」を創作。かつて豊臣秀吉が亭主を務め、北野天満宮で開催された北野大茶湯をモチーフに、学者でも政治家でもない、“アーティスト”としての菅原道真の魅力にも迫るという。DAZZLEのメンバーである飯塚浩一郎に「花宵の大茶会」について話を聞いた。

取材・/ 大滝知里

日本で一番古いフェス、北野大茶湯を追体験

飯塚浩一郎

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DAZZLEは2017年以降、日本でいち早く“イマーシブシアター”に取り組んできた。そんなDAZZLEが明治期に建てられた北野天満宮 風月殿で新作を立ち上げる。飯塚は「イマーシブシアターは空間性が非常に重要で、それによってどのような作品がふさわしいかを考えます。北野天満宮には、秀吉公の大茶会をはじめ、出雲阿国のかぶき踊り、新撰組の“誠”の旗の由来になった絵馬、名刀・鬼切丸など、歴史上の人物や物のルーツがある。それらをモチーフにしたら、北野天満宮で上演する価値がある体験を作れるのではないかと考えました」と作品の起こりを語った。

北野大茶湯は1587(天正15)年に催された大茶会で、身分に関係なく、広く参加が呼び掛けられた。10日間の開催を予定していたものの、たった1日で閉幕してしまったという謎が残る。「花宵の大茶会」では、“北野大茶湯にもし、2日目があったとしたら”という仮定のもと、ノンバーバル形式の物語が展開する。飯塚は「北野大茶湯は言ってみれば、日本で最も古いであろう、一番大きなフェス(笑)。文化的事業として、当時、非常に先進的だったと思います」と話す。ちなみに風月殿では現在も高貴な人々の茶会が日常的に行われており、「お茶会の場としても由緒ある空間で、作品をより肌感覚で楽しんでもらえるはず」と期待をあおる。

なお本作では、新たな企画を依頼されたDAZZLEが、蜷川 with EiMに声がけしたことにより、DAZZLEと蜷川、EiMの異色のコラボレーションが実現。アート制作を蜷川 with EiM、企画・出演をDAZZLEが担う。「それぞれの得意分野での分業を想定していましたが、話すうちに、すべてを一緒に考えて創作していく形に落ち着きました。DAZZLEとしてもこういった創作形態は新鮮で、イマーシブシアターを長くやり続ける中で当たり前のように自分たちが“排除してしまっていた部分”を知ることができたり、男所帯のDAZZLEが蜷川さんの感性に刺激を受けたり、今までとは違う文脈で作品を生み出す面白さを感じています」と手応えを語る。

捉えたいのは、菅原道真のアーティスティックな側面

KYOTO NIPPON FESTIVAL 2026 イマーシブシアター「花宵の大茶会」より。

KYOTO NIPPON FESTIVAL 2026 イマーシブシアター「花宵の大茶会」より。 [高画質で見る]

「花宵の大茶会」には豊臣秀吉、紫式部、清少納言といった歴史上の人物の影たちが、それぞれ傲慢、嫉妬、虚無というテーマを背負って登場する。飯塚が演じるのは、羞恥こと藤原時平の影。時平は、菅原道真の政治的なライバルで、道真を謀略によって追い落とした敵役だ。飯塚は「道真公においてはさまざまな悲劇的なストーリーが語られますが、この作品では、彼が太宰府で、のちの未来を思って詠んだ『東風(こち)吹かばにほひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘るな』を軸としています。和歌にはその人の思考や感性が表れる。今回は、学業の神様、政治的存在、怨霊から神格化されたといったパブリックイメージではない、アーティストとしての道真公の姿も捉えていきたいと思っています」と構想を明かし、言葉によってつづられる和歌や俳句というアートフォームが、過去を生きた実在の人間の思考につながる芸術として機能している素晴らしさについて述べた。

自然と身を委ねられる、それがDAZZLEのイマーシブシアター

DAZZLE

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観客が作品世界に没入することを楽しむイマーシブシアターは、近年、日本でもブームになっており、DAZZLEはその先駆者だ。飯塚はイマーシブシアターの盛り上がりについて「一般化することにより、お客さんが抵抗なく楽しめるようになるのはすごく良いこと。一方で、僕たちも“没入とは何か”を考えさせられることが増えました」と言う。飯塚は、アメリカ・ニューヨークで上演されていたノンバーバルのイマーシブシアター「Sleep No More」を例に挙げつつ、日本では脱出ゲームやアトラクションから派生した対話型の作品が多いと分析。「イマーシブシアターの“シアター”は、“シアトリカル”であること。また、対話型のイマーシブシアターは、観客がしゃべることで没入感が薄れてしまうと感じることがあります。劇中でしゃべりたくないからイマーシブシアターを敬遠されるという方も多いです。コミュニケーションは目的ではなく、あくまでも没入していただくための手段の一つ。言葉に頼らない身体性や観客の想像力があれば、物語や感情の流れを補完できるはず。DAZZLEは、頭で理解するだけでなく心と体で感じてもらうことにもこだわり、お客様が自然に作品の中に存在し、物語に身を委ねられるイマーシブシアターを作りたいと思っています」と言葉に力を込めた。

イマーシブシアターへの強い思いのもと、歴史的な場所で立ち上げられる今回のDAZZLEの新作。「誰もが知る歴史上の人物の影が出てきて、気構えしなくても良いように作っているので、イマーシブシアターを初めて体験する方でも入りやすい作品になっていると思います。北野天満宮の風月殿という歴史ある建物物の中には、実際に生きてきた人たちの痕跡がいたるところにある。過去に思いをはせながら作品世界を体験していくと、神社が一体何のために存在し、祈りとは何かというところまで考えられるのではないかなと。歴史と場所に思考を巡らせる中で、新たな発見をしてもらえたらと思います」とアピールした。

KYOTO NIPPON FESTIVAL 2026 イマーシブシアター「花宵の大茶会」

KYOTO NIPPON FESTIVAL 2026 イマーシブシアター「花宵の大茶会」

開催日程・会場

2026年3月20日(金・祝)〜5月24日(日)
京都府 北野天満宮 風月殿

スタッフ

企画:DAZZLE
構成・演出・脚本:DAZZLE×蜷川実花 with EiM
アート制作:蜷川実花 with EiM

出演

DAZZLE

公演・舞台情報

飯塚浩一郎(イイヅカコウイチロウ)

1978年生まれ。應義塾大学卒業後、株式会社博報堂を経て、株式会社DAZZLE設立。ダンサー・振付家であり、コピーライター・クリエーティブディレクターとしても活動する。京都造形芸術大学非常勤教員。2015年、坂東玉三郎演出のダンス作品「バラーレ」で主演した。DAZZLEの主な作品に、ワンピースタワーとのコラボレーション作品「時の箱が開く時」(2018年)、京都・南座での「サクラヒメ」(2020年)など。2021・2022年の常設型イマーシブシアター「Venus of TOKYO」運営を経て、2023・2024年には常設型イマーシブシアター「Lost in the pages」を上演。2024年にスタートしたイマーシブエクスペリエンス「Anemoia Tokyo」を2026年3月15日まで上演。7月には舞台作品「花ト囮 - 露 -」の上演も決定している。

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