毎年5月5日に趣向を凝らした企画を行っているバニラズだが、今年は柳沢進太郎(G)の故郷である鹿角市にて凱旋公演と最新アルバム「FLOWERS」を携えてのツアーファイナルという2つの意味合いを持つライブを実施。会場には秋田県内外のファン約700名が集まり、約2時間半におよぶパフォーマンスを見届けた。
開演時刻を迎えると「FLOWERS」というアルバムのタイトルにちなみ、千紫万紅の花々が彩る舞台にメンバーが姿を見せる。5人はスーツや革ジャン、蝶ネクタイなど、それぞれのキャラクターに合わせた正装に身を包み、この日のライブが特別な意味合いを持つことをファッションからも匂わせる。そして、アイリッシュミュージックの要素を含む「HIGHER」を高らかに奏で、ツアーファイナルの幕開けを告げた。
牧達弥(Vo, G)が「進太郎の故郷にようこそ!」と歓迎の言葉を叫んだことを合図に、メンバーは「FLOWERS」の収録曲「The Marking Song」「I Don't Wanna Be You」をエネルギッシュにプレイ。柳沢は自身がリードボーカルを取る「I Don't Wanna Be You」を歌い終えると「ただいま! 今日は最後までブチ上がれるか? 騒げよ!」と煽り、熱狂的にレスポンスをする観客に向かって満面の笑みを浮かべた。ここでツアーの全公演に同行した井上惇志(Key /
ライブの中盤では鹿角市のグルメトークに花を咲かせたメンバーたち。和やかなムードの中でジェットセイヤ(Dr)が「今日は進太郎の地元だから、進太郎が歌う曲が多い」と予告したのに続き、柳沢がファルセットを交えた端正なボーカルで「イノセンス」を歌い出す。この予想外の選曲に客席から歓声が沸き起こった。さらに、「My Favorite Things」「Dirty Pretty Things」など、しっとりとした“大人のバニラズ”の表情を見せるミディアムチューンがホールに穏やかに響く。観客は心地よさそうに体を揺らし、全身で5人が織りなすアンサンブルを味わい尽くした。
しばしのチルアウトタイムを挟み、牧の「ここからすごい汗かきますからね!」という宣言でライブは後半戦に突入する。長谷川プリティ敬祐(B)とジェットセイヤが作り出すパワフルなグルーヴに乗せて、牧と柳沢がステージ上で躍動。「バイリンガール」「エマ」といったBPMの高い、アップテンポなポップチューンによってホールは華やかな空気で満たされていく。そして、バニラズの4人と井上、オーディエンスの三者がステージと客席の垣根を超えて声を重ねた「きみとぼく」をもって、ライブ本編はフィナーレへ。温かな余韻を残しつつ、ステージの明かりが静かに消えた。
観客が歌う「おはようカルチャー」のワンフレーズに導かれるように、スーツ姿のままステージに戻ってきた柳沢は、自身の祖父が背広を愛着していたこと、今は亡きその祖父が柳沢の将来を心配していたことを語る。「天国のおじいちゃんにも届くようにライブをしたい」という思いから、メンバーに正装でツアーファイナルを迎えたいとリクエストしたことを明かした。続けて柳沢はそれぞれの出会いのエピソードを口にしながら、各メンバーと井上を順番に呼び込んでいく。アンコールの1曲目を飾ったのは、井上の弾く繊細なピアノの旋律に、メンバー4人が美しいハーモニーを重ねる「硝子」。その後、バニラズの明るい前途を示唆するように、今回のツアーの各公演でラストナンバーとして披露されていた「LIFE IS BEAUTIFUL」が奏でられる。この曲をもってライブは大団円かと思われたが、柳沢が「今日は特別にもう1曲やります」と叫び、自身が歌う「T R A P !」へとなだれ込む。ツアーファイナルらしい粋な選曲に会場中が沸き立ち、ステージ上にも客席にも大輪の花のような笑顔が広がる。こうして、バニラズが年初から全国に種を蒔くように巡ってきた「『FLOWERS』TOUR 2023」は幸せな幕引きを迎えた。なお、Apple Music、Spotify、LINE MUSICでは鹿角市文化の杜交流館コモッセ公演のセットリストをもとにしたプレイリストを公開中。
「『FLOWERS』TOUR 2023」ファイナル終演後コメント
柳沢進太郎
たくさんの人が自分の地元に来てくれて。地元の方たちに見てもらうのもうれしいことなんですが、まったく別の地域から来ていただけたのは、秋田に生まれ育った者としてうれしかったです。ライブ自体もツアーファイナルらしく、情熱もありつつ、暴れすぎずいいテンションでできて、一番バランスがいい公演だったんじゃないかと思います。集大成でしたね。
牧達弥
2023年はこのツアーで幕を開けて、気付けば1年も折り返し。フィジカル的にも精神的にも、ツアーの中で成長している瞬間がたくさんありました。表現の仕方も今まで以上にトライしている部分があったんですが、あっちゃん(井上惇志)と一緒にツアーを回る中で、その音をお客さんに届けることができた。コロナ禍を経て、バンドがだいぶ変わって、これからも成長していける兆しがこのツアーで見えました。
長谷川プリティ敬祐
ツアーで23公演をやってきて、回を増すごとに音楽を本当に楽しめるようになって。集中しつつ、余計なことを考えず、フラットな感覚で音に向き合うことができているのかなと思いました。そのツアーファイナルが(進太郎の地元である)鹿角だったのは意味があることだったのかな。より「FLOWERS」というアルバムの曲が鮮明になったので、すごくいいファイナルでした。
ジェットセイヤ
最新最高のツアーでした。一番楽しかったです。
井上惇志
ロックバンドというのはわりとスタイルとか生き様を表現していると思うんです。その中で今回は、メンバーにすごく近い距離でサポートに入ることになったので、覚悟と緊張もあって。でも、メンバーが僕を信じて、ステージを組んでくれた。途中で楽器も壊れた瞬間もあったんですが(笑)、全力でぶつかってくれて、本当に夢を見ていたような感じでした。すごく美しいライブだったと思います。
go!go!vanillas「『FLOWERS』TOUR 2023」2023年5月5日 鹿角市文化の杜交流館コモッセ 文化ホール セットリスト
01. HIGHER
02. The Marking Song
03. I Don't Wanna Be You
04. おはようカルチャー
05. Penetration
06. ペンペン
07. クライベイビー
08. 青いの。
09. イノセンス
10. アダムとイヴ
11. My Favorite Things
12. Dirty Pretty Things
13. バイリンガール
14. エマ
15. カウンターアクション
16. one shot kill
17. アメイジングレース
18. きみとぼく
<アンコール>
19. 硝子
20. LIFE IS BEAUTIFUL
21. T R A P !
井上惇志 (showmore) @jiding0301
ライブレポ、ちゃっかり終演後のコメントも残してます✌️
ミテネ!! https://t.co/EjjNKrseO9