最新アルバム「私立恵比寿中学」の発売に合わせ、3月から全13公演にわたり開催されたこのツアー。昨年5月の新メンバー3人の加入後、そして12月の柏木ひなた転校(脱退)を前にした現行の9人体制としては最初で最後の春ツアーとなった。
ライブのオープニングを飾ったのは「全力☆ランナー」。シフォンを用いた衣装に身を包んだ9人は流麗なピアノの音色に乗せてキレのあるダンスを繰り広げ、エビ中ファミリー(私立恵比寿中学ファンの呼称)のテンションを高める。さらに「シンガロン・シンガソン」「仮契約のシンデレラ」で盛り上げたあとは、ニューアルバムから「さよなら秘密基地」へ。メジャーデビュー曲から最新曲へと一気に時代を駆け上り、グループのキャリアを改めて印象付けた。
最初のMCでは新メンバーの桜木心菜が「ひなちゃんとツアーをやるのが最初で最後ってことで……」と声を詰まらせるが、その顔を覗き込んだ柏木は「泣いてないな?(笑)」とクールに突っ込んでファミリーの笑いを誘う。場内を和ませたひとときに続いては「シュガーグレーズ」「きゅるん」「トキメキ的週末論」と最新アルバムの楽曲を連投。迫力あるサウンドに乗せ、9人はそれぞれ大人びた表情でパフォーマンスを展開した。
今回のツアーのセットリストではアルバム「私立恵比寿中学」の楽曲が日替わりで披露されてきたが、小久保柚乃が「今日はスペシャルバージョンで、全部やります!」と話してしまい、メンバーたちを「言っちゃったよ!(笑)」と慌てさせるひと幕も。柏木が笑いながら「じゃあ次の曲も、今日は特別にやっちゃいます」と紹介して始まったのは「I'll be here」。柏木の深みのある歌声を中心にしたパフォーマンスがファミリーを魅了した。
その後は小林歌穂と中山莉子がステージに置かれたキャンバスに絵を描くという場面へ。安本彩花と桜木の似顔絵に続き、小林がマイクスタンドを描くとステージ上には9本のスタンドが現れる。センターに立った真山りかのアカペラから始まったのは「愛のレンタル」。その後は「未確認中学生X」、さらに「春の嵐」とタイプの異なる楽曲が次々に披露され、エビ中の表現力の豊かさがアピールされた。
星名美怜と安本、小林、桜木、小久保がこのツアーを振り返るトークを繰り広げたあとはユニットコーナーへと突入。最初に真山、柏木、中山、風見和香の4人が「でかどんでん」をアグレッシブに披露すると、続いては小林と小久保が「約束」をデュエットし、澄んだ歌声を会場に響かせる。そのあとステージ上に現れた白い車には安本、星名、桜木の姿が。3人はかわいらしい振り付けとともに「結ばれた想い」をパフォーマンスした。そして残るメンバーも加わって披露されたのは「夏だぜジョニー」。9人はビーチボールや虫取り網など夏らしいアイテムを手に、自由気ままにステージを行き来した。
ライブ後半、純白の衣装に着替えた9人はニューアルバム収録曲「ハッピーエンドとそれから」の切なくも軽やかなメロディラインを歌い上げる。続く「宇宙は砂時計」では幻想的なムードが場内を満たす中、真山と小林、桜木、小久保が客席に現れて歌うというサプライズでファミリーを驚かせた。「ナガレボシ」「イエローライト」をまっすぐに届けたあと、真山は今回のツアータイトル「drawer」に込めたメッセージを「今回のアルバムは真っ白なジャケットで、そしてそれぞれのメンバーカラーやサイリウムの色、個性の色があります。エビ中はどんな色にも染まっていける、染められるという思いです」と語る。小林の「何度でも新しい色に踏み出していけますように」という言葉に続き披露されたのは「靴紐とファンファーレ」。ここでは各メンバーのリハーサル時の表情を捉えた映像が流れ、ファミリーを感動に導いた。
終盤で9人は「ポップコーントーン」「イヤフォン・ライオット」を華やかにパフォーマンス。ラストナンバー「COLOR」の大サビでは白い紙吹雪が客席を舞い、ステージ上のLEDビジョンも真っ白に輝いて9人の表情を照らした。メンバーがステージを去ったあとにはツアー中のオフショットがLEDビジョンに映し出され、それぞれの充実した日々をうかがわせるひとときとなった。
大きな手拍子に応えて9人は再びステージに登場し、このツアー初のアンコールへと突入した。最初にパフォーマンスされたのは5月に配信リリースされた最新曲「青春ゾンビィィズ」。ライブ初披露となったこの曲で9人は“ゾンビ”を表現したキャッチーな振り付けを繰り広げ、ファミリーを大喜びさせる。「Anytime, Anywhere」を全開の笑顔とともに披露したあとは、柏木のアカペライントロから「手をつなごう」へ。タイトルどおりに手をつないだ9人の歌声が感動的なフィナーレを彩った。
エンディングのMCでは柏木が「美怜が途中、隣で大号泣してて……早くない?(笑)」と、自身の卒業に先駆けて感極まってしまった星名の様子を明かし、星名は「隣にいるのが悪い!」と照れ隠しのように言い返す。そんな柏木が「皆さんの楽しそうな顔がたくさん見られてうれしかったです。オンライン特典会でも『今回が最後かもしれない』という声をいただいて……」と話しながら涙を浮かべると、メンバー8人は彼女を取り囲んでポーズを決めてその表情を隠した。抜群のチームワークに柏木は笑みをこぼし「9人でツアーを回れて、本当にうれしかったです!」と完走の喜びを明かした。
最後には恒例の野外ライブ「ちゅうおん」とメジャーデビュー10周年記念の展示会「もっとエビ展 ~9 colors nude~」の開催決定をアナウンス。ファミリーとの再会を誓ったあと、9人は3カ月のツアーをともにしたステージセットに向かって頭を下げて感謝を述べた。彼女たちが頭を上げると、LEDビジョンにはファミリーとスタッフからのツアー完走を祝うサプライズメッセージが。メンバーとファミリー、スタッフの絆を感じさせる粋な演出で、全国ツアーの幕が閉じられた。
「私立恵比寿中学 10th Anniversary Tour 2022~drawer~」2022年7月10日 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)セットリスト
01. 全力☆ランナー
02. シンガロン・シンガソン
03. 仮契約のシンデレラ
04. さよなら秘密基地
05. シュガーグレーズ
06. きゅるん
07. トキメキ的週末論
08. I'll be here
09. 愛のレンタル
10. 未確認中学生X
11. 春の嵐
12. でかどんでん
13. 約束
14. 結ばれた想い
15. 夏だぜジョニー
16. ハッピーエンドとそれから
17. 宇宙は砂時計
18. ナガレボシ
19. イエローライト
20. 靴紐とファンファーレ
21. ポップコーントーン
22. イヤフォン・ライオット
23. COLOR
<アンコール>
24. 青春ゾンビィィズ
25. Anytime, Anywhere
26. 手をつなごう
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私立恵比寿中学、9人体制初ツアーファイナルで26曲完全燃焼「どんな色にも染まっていける」 https://t.co/ygr19FgpMa