超特急とDISH//は、EBiDAN発のグループとして同じ2011年の12月25日に結成された。活動初期は一緒に全国各地を回ってリリースイベントを合同で行い、2013年からは2組の冠バラエティ番組「超×D」に出演するなど、一番近い仲間として、ライバルとして切磋琢磨してきた歴史がある。2013年に東京・お台場ヴィーナスフォートで行ったイベントを最後の合同イベントとして、それぞれの道を邁進してきた超特急とDISH//。「いつかまた一緒にツーマンしようぜ」と“別れ際”に交わした約束は、結成10周年の記念日当日に、大阪城ホールという大きな会場で実現することとなった。メモリアルなタイミングで2つの道が交わる特別なライブを目撃しようと、会場にはたくさんの8号車(超特急ファンの呼称)とスラッシャー(DISH//ファンの呼称)が集結。満員の客席は、開演前から来場者の期待感で満ちあふれていた。
開演時刻の17:30を迎えると、会場には発車ベルの音が高らかに響いた。先攻を取ったのは、過去の合同イベントでも先にライブを行っていた超特急。円盤型の舞台装置が回転して5人がファンの前に姿を見せると、彼らはキラーチューン「SAY NO」でライブをスタートさせた。タクヤが開口一番「よっしゃあ、10周年だぜ! 張り切っていこうか」と言葉に気合いをにじませると、5人は冒頭から全力で頭を振り、フルスロットルのパフォーマンスで観客を圧倒する。タカシのパワフルなシャウトが炸裂したあとの煽りパートでは、タクヤが「お皿をポーイ!」とDISH//のライブではおなじみの“紙皿投げ”をオマージュ。ユーキも「超特急! DISH//! 10周年!」とメンバーとのコール&レスポンスをリードして、8号車のみならずスラッシャーも楽しめるようなステージングを展開した。
同じくライブの定番曲である「超えてアバンチュール」が2曲目に続くと、ここで輝きを放ったのは超特急のリーダー・リョウガ。一筋縄ではいかないトリッキーな動きや抜群の変顔スキルで超特急の代名詞とも言える“ダサカッコいい”の中核を担っている彼は、この日もキレキレの白目や変顔で観客を釘付けにする。また、ステージから身を乗り出すようにファンと対峙するカイは笑顔でオーディエンスに呼びかけ、楽しい一体感を作り上げていった。
11月にリリースされた最新アルバム「Dance Dance Dance」から、ダンサー4人が歌唱するロシアンハードベースのナンバー「Добрый день」(ドーブリジェン)、軽快なディスコサウンドで踊る「Dance Dance Dancing!」を届け、この日最初のMCタイムを取った5人。「僕らのことを知らない人がいるかもしれないから」と1人ずつ自己紹介を行ったのち、リョウガは8号車に声をかけ「8号車もメンバー(の一員)ということで、超特急をやらせてもらっています」とグループのスタンスを改めて説明した。
「今日は僕たち超特急とDISH//が10歳になった日。記念すべき日ということで、僕らの初めての曲を披露したいと思います」。そんなカイの曲振りでスタートしたのは、超特急の初めてのオリジナル曲である「No More Cry」。10年前の12月25日のデビューイベントでも披露され、当時は「1曲やるだけでヘトヘトだった」というこの曲を、メンバーはサウンドもパフォーマンスも格段にパワーアップしたアレンジで歌い踊る。1つひとつの動きのなめらかさやダンスの中で見せる余裕のある表情には、10年の経験の中で5人が培ってきた豊かな表現力がにじみ、グループのダンスリーダーであるユーキは美しいダブルピルエットでもオーディエンスを魅了した。この曲に続けて「refrain」(2014年)のイントロが流れると、ひさびさの楽曲披露に場内がにわかに色めき立つ。するとタクヤは「DISH//からのリクエストソングです。『refrain』」とひと言。この言葉にファンの熱気がいっそう高まる中、5人は別れ際の切なさや心残りを歌うこの曲の世界観を繊細な歌とダンスで描き出し、DISH//の期待に応えてみせた。
張り裂けそうな思いを歌とダンスで伝える悲恋の歌「You Don't Care」でシリアスなムードがぐっと深まる中、観客の目に飛び込んできたのは、あるテキストのタイピング映像。紫色のフォントが伝えるのは、2013年3月に橘柊生(DISH// / DJ, Key)がタカシの衝撃の変顔を自身のブログにアップしたという過去の事実だった。この変顔の写真はタカシの許可やスタッフのチェックなしで公開されたものだったが、原型を留めないほど振り切った変顔だったため、タカシは当時のスタッフに激怒されたという。柊生が公開したタカシの変顔写真がリズミカルに投影される中、「ああ、タカシはなんてかわいそうなのだ。我々は怒っている。“激おこ”だ! 裏切り行為だ!」というフレーズが画面上に踊ると、会場には「激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームわ~るど」のアッパーなサウンドが鳴り響く。この曲のセンターを務めるリョウガを筆頭に、ダンサーメンバーは「諸君、我々は怒っている。激おこだ!」とシュプレヒコールを上げ、グループの末っ子・タカシが受けた“辱め”を怒りのパフォーマンスに昇華。するとタカシは曲終わりのタイミングで当時の変顔を完全再現し、オーディエンスに大きなインパクトを残した。
DISH//との懐かしい思い出と楽曲のコンセプトを見事に融合させたこの日ならではのパフォーマンスで会場に笑顔をもたらしたあとには、「fanfare」でさわやかな風を吹かせた超特急。タカシの伸びやかな歌声を背に受けて躍動するダンサーメンバーは、ステージいっぱいに広がって右手を上下に振り、観客とのさらなる一体感を求める。「一緒に踊って!」と呼びかけたユーキは「超特急とDISH//が10周年を迎えられたのは、ここにいる皆さんがいるからです。そして今という時を最高に楽しみましょう!」と思い切り叫んだ。
彩り豊かな5曲を全力で届け、“喜怒哀楽”あらゆる感情が揺さぶられる超特急のライブの楽しさをめいっぱいファンに提示した5人。ここで改めて客席に向き合ったリョウガは、「この曲は超特急の節目だったり、大切なポイントで披露する曲です」と言って、「Signal」をタイトルコールした。リョウガの言葉通り、これまでにも大事なタイミングでのみセットリストに組み込まれてきた「Signal」が披露されるのは2018年1月以来、約4年ぶりのこと。8号車、そしてスラッシャーの熱い注目が集まる中、超特急の5人は精悍な顔つきでまっすぐに前を見つめながら1つひとつの振りに思いを込め、曲に刻まれた「夢は見るよりつかみとれ」という強い志を体現。まっすぐに伸ばした手を大きく広げ、これからの未来を明るく照らすための“シグナル”を力強く点灯させた。
後攻のDISH//は、4人全員がボーカルに参加する「星をつかむ者達へ」をオープニングナンバーとして投下。北村匠海(Vo, G)と柊生による高速ラップの応酬、矢部昌暉(Cho, G)と泉大智(Dr)のユニゾンがカオティックでエッジィな世界観を形成し、4人はお互いの音に触発されるように演奏の熱をぐんぐんと高めてゆく。真深にかぶったパーカのフードを脱ぎ去った匠海は「みなさんどうも、DISH//です。最後まで楽しんでください!」と自己紹介し、2曲目の「Shout it out」へ。映画「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」日本語吹替版の主題歌として使用されているこのアッパーチューンで匠海はアナーキーなシャウトを轟かせ、そんな彼にハイトーンのコーラスで寄り添う昌暉は鋭利なサウンドで空気を切り裂くギターソロでもスラッシャーを魅了した。
昌暉のかき鳴らす象徴的なギターリフからなだれこむ「勝手にMY SOUL」では柊生もDJブースから飛び出してステップに登り、マイクを握る。匠海と柊生の煽りを受けたスラッシャーは、ピッタリと息の合った手振りでバンドの演奏に“参加”し、場内は熱狂のムードに包まれた。3曲を終え、改めて満員の客席を見つめた匠海は「一緒にショッピングモールを回りに回り……最後、ヴィーナスフォートで『これからは別の道を歩むけど、でっかくなったらいつかまたツーマンしようぜ』って言った、その日が今日です、皆さん!」と、興奮気味にこのツーマンの意味を観客に伝えた。そんな彼らが超特急からのリクエストソングとして披露したのは、インディーズ2ndシングルの収録曲である「恵比寿物語」(2012年)。DISH//初期の名曲としてスラッシャー人気も高いこの曲は、「refrain」と同じく別れを歌う柔らかなミドルバラード。匠海と昌暉、柊生が歌いつなぐ切なくも温かいストーリーに、会場中がじっくりと耳を傾けた。そして、匠海が熊木幸丸(Lucky Kilimanjaro)と作り上げた“サウナ賛歌”「SAUNA SONG」ではステージがオレンジ一色に染め上げられる。大きなサウナ室が出現したかのような演出に、昌暉と柊生はタオルを手にして“サウナごっこ”を開始。お立ち台に座る昌暉に向かって“熱波師”と化した柊生がロウリュをサービスするという徹底ぶりで、歌いながら2人の様子を観ていた匠海は曲が終わるなり「ふざけすぎ(笑)」とツッコミを入れていた。
曲を終え、改めて客席を見つめた匠海は「僕らが始まった当時って、2組合わせてもお客さんが30、40人くらいで。今これだけの方に観てもらえている……感慨深いです。すげえです。続けているといいことあるんだなって、今日思いました」としみじみ語り「10年前の僕らの姿を知らない方にも、子供だった僕らの姿が重なるように、今日はライブができたら。僕ら、あのときとは人数も違うけど、それでも続けてきた。自分たちの未来に向かって毎日を生きてきた、そんな姿が今に重なるといいなと思います」と思いを伝えた。
「まだまだやり足りてないんで、大放出してもいいですか皆さん! 自由に音に乗って、音楽してください!」という匠海の気合いの咆哮とともに、DISH//のライブは「Seagull」でラストスパートに突入。今年リリースされた最新アルバム「X」の収録曲ながら、すでにライブの鉄板曲として定着しつつある軽やかなロックナンバーを合唱してオーディエンスの心を熱くさせたのち、「JUMPer」では匠海が「さあ、ジャンプの時間です!」と叫んだ。ステージの最前線に飛び出した匠海と柊生の煽りを受け止めたスラッシャーは、メンバーの「Hey! Hey!」の声にリズミカルな手振りで応えてみせる。会場に渦巻く大きな一体感に、柊生もキーボード用のスツールの上に立ち上がってマイクを握るという熱いパフォーマンスを見せていた。
「No.1」では疾走感いっぱいのバンドサウンドが広い会場に響き渡り、演奏を背に受けた匠海は胸が高鳴るようなポジティブなメッセージを力強く歌い届けた。DISH//はラストソングを前にMCの時間を設け、「今回のライブは、僕たちが10年前にやっていたものと同じ形でやりたかったんです。超特急のライブのあとにDISH//のライブがある、シンプルにそれだけ。それだけで当時戦っていた僕らの姿でライブをしたかった」と明かした。「旅路はこれからも続いていくし、もしかしたらまた道は交わるかもしれない。今日はすごくいい未来が見えました。次にやる曲は、今この瞬間と、誰にでも訪れる明日を感じられる曲です」。匠海のそんな言葉を受けて始まったのは「DAWN」。大智が奏でる軽やかなスネアドラムに語りかけるような歌声を乗せた匠海のボーカルは曲が進むにつれて熱を帯び、次第に心からの叫びへと変わっていく。4つの声と音は力強いバンドアンサンブルとなってオーディエンスの心を揺さぶり、曲の最後、頭上で手を大きく広げた匠海はその手を力強く握って演奏を締めくくった。
2組がそれぞれまったく異なる表現方法で、これまでに築き上げてきたオリジナリティを輝かせた本編を終え、アンコールでは超特急とDISH//の9人がステージ上に勢ぞろいした。全員が集まるなり、ユーキは「柊生マジでやってくれたな!? 『恵比寿物語』涙流しながら聴いてたのに、歌詞間違いで一気に引っ込んだわ(笑)」と柊生にクレームを入れ、これに柊生は照れ笑いで応じる。「EBiDANのイベントでほかのグループもみんな一緒に、ってことはあるけど、超特急とDISH//の2組だけってなかなかないよね」とカイが言うほどレアな光景に客席も沸き立つ中、2組はここからコラボパフォーマンスを披露した。まず届けられたのはDISH//「Loop.」で、タカシは匠海と一緒にボーカルとして、カイ、リョウガ、タクヤ、ユーキの4人はダンスパフォーマンスで楽曲に参加。柊生が作詞作曲を手がけた洒脱なナンバーを、超特急は艶っぽい仕草と軽やかなステップで彩ってみせた。
続く超特急「Burn!」では、DISH//が演奏を担当し、パワフルなアンサンブルで楽曲を盛り上げる。スペシャルなコラボパフォーマンスに客席も大盛り上がりで、サビでは会場中が両手をクロスさせるおなじみのダンスを踊り、ステージ上の9人と一緒に特別なひとときを楽しんだ。リョウガとタクヤがドラムを叩く大智にタオルで“熱波”を送ったりとコラボパフォーマンスならではのやりとりも展開され、超特急の5人は曲を終えるなり「最高だね!」と笑顔を弾けさせる。タクヤが「俺たちのツアー一緒に回ってもらおう!(笑)」と手応えのままに提案すると、匠海も「全然バックバンドやるよ(笑)」と即答していた。
アンコールのMCでは、思い出話に花を咲かせた9人。活動初期に行っていた特典会では「ネギを持ってツーショット撮影したね、群馬で」(カイ)や「たたいてかぶってジャンケンポンもやったよね」(柊生)など、奇抜な企画でファンと交流していたこと、カイがレッスンで最初に仲よくなったのが大智で、その大智はカイのことを超特急メンバーで唯一「カイくん」と“くん付け”で呼ぶこと、9人の中の最年少組は匠海と昌暉ながら、みんなが集まるとタカシが末っ子ポジションになること……と、尽きない話題に何度も笑い声が響く中、匠海は「話は尽きないですが……」と切り出した。彼は、超特急とDISH//がこの日のために新曲を用意したことを明かし「タカシとDISH//4人で曲を作り、そこに超特急が振りを付けてくれました。今話したような思い出も詰まっていたり、タカシが歌うフレーズはタカシがメロディと歌詞を付けて、僕が歌うところは僕が作って……お互いの視点から見たあの頃やこれからの話を歌っています」と観客に伝えた。
「DISH//のみんなと曲を作れたことが、心の底からうれしかった。今日限りかもしれんから、みんな聴いてほしい!」。タカシの言葉とともに8号車とスラッシャーに贈られたのは、「STORYs」と名付けられた楽曲。エバーグリーンな輝きを放つさわやかなメロディに乗せて歌われるのは「信じてきたこの道は間違いじゃない」という9人の確信と「まだ知らないセカイを見よう」という未来へ向けた希望で、9人は今この瞬間を噛みしめるように、お互いに笑顔を交わしながらコラボパフォーマンスを披露した。
すべての楽曲披露を終え、「ある意味僕たちの歴史に色濃く残る、伝説の1日になりました。夢が叶ってよかったよ」とリョウガが言うと、匠海は「約束が果たせてよかった」と応じる。するとタクヤは「10年後、もっと大事(おおごと)なことしちゃう?」とひと言。この言葉に皆が盛り上がる中、匠海は「今それぞれが掲げている目標を叶えて、また会いましょうね」と約束した。そして、最後にリョウガからコメントを求められたユーキは「俺たち切磋琢磨してきてさ、お互いを思い合いながら日々を過ごしてきて……今のDISH//、輝いて見えるんですよ。だから『待ってろよ、DISH//!』っていう燃えたぎる気持ちを持ちながら、俺たちも面白いことをしていきたいと思う。同じステージに帰ってくるときは、もっとでっかい背中になって。2組でもっともっと大きなエンタメを作れたらと思います」と、常に近くでお互いの存在を意識してきたからこその偽らざる思いを口にした。
そんなユーキの熱い言葉に、匠海は「超特急は僕らなんかより全然早くアリーナのステージを経験しているし、いろんな場所で輝いてる」と切り出し「音楽的にお互い何か1つ確立した中で……いつまでも超特急にとって悔しい存在でいたいなと思う。我々は同じ日にできたグループですから。常に刺激しあえる仲でいたいなって」と、戦友として同じ熱量の言葉を返した。「10年後はどうなっているかわからないけど、すごいことになってやるという思いでこれからもやっていくんで、皆さんどうか付いて来てください!」。そう言ってDISH//のリーダー・匠海が挨拶を締めくくると、超特急のリーダー・リョウガも「最高の10歳の誕生日になりました!」と充実感いっぱいに感謝を伝えた。2つの道が交わった2時間半を終え、ファンの前に整列した9人はオフマイクで「ありがとうございましたー!」と挨拶し、ライブを締めくくる。柊生がライブ終わりに必ず叫ぶ「また遊ぼうな!」のひと言には、観客、そして超特急へ向けた“10年後の約束”の思いがにじんでいた。
「10th Anniversary Special Live 『超特急×DISH//』」2021年12月25日 大阪城ホール セットリスト
超特急
01. SAY NO
02. 超えてアバンチュール
03. Добрый день
04. Dance Dance Dancing!
05. No More Cry
06. refrain
07. You Don't Care
08. 激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームわ~るど
09. fanfare
10. Signal
DISH//
01. 星をつかむ者達へ
02. Shout it out
03. 勝手にMY SOUL
04. 恵比寿物語
05. SAUNA SONG
06. Seagull
07. JUMPer
08. No.1
09. DAWN
超特急&DISH//
01. Loop.
02. Burn!
03. STORYs
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超特急とDISH//が記念日に叶えた“あの日の約束”大阪城ホールで鳴らしたそれぞれの10年と変わらない絆 https://t.co/OTxocq2bB9