およそ3年半ぶりのワンマンライブツアーとして、名古屋と東京の2都市で実施された今回のワンマンライブ。演奏は加藤をデビュー時から支えるプロデューサー高橋研(G)をはじめ、狩野良昭(G)、佐藤史朗(Piano、Accordion)と、彼女の作品でおなじみのプレイヤーがバックを務めた。
ライブはまず、佐藤がピアノ1台をバックに歌う「プラネタリウム」からスタート。観客は息を飲んで加藤の歌声とピアノの旋律に耳を傾ける。続く「私の中のたくさんの私」ではギタリスト2人も合流し、加藤が振るマラカスのリズムに合わせて軽やかにストロークを重ねた。3曲目の「雨が降る靴」を歌い終えたところで、この日初めてのMCへ。ひさびさのワンマンで、前日から「デビュー当時を思い出すような緊張とドキドキ」を抱えていたという加藤は、デビュー時から歌い続けている「雨が降る靴」の歌詞をつい間違えてしまったことを明かしつつ、「こんなドキドキも含めて楽しみたいと思います!」と意気込んだ。
今回のツアーでは、現在レコーディングを進めているというニューアルバムからの新曲も披露された。「あこがれ」はシンガーソングライターつだみさこによる提供曲で、もう1つの新曲「唇にメロディ」は、11月2日の名古屋公演で披露したあとさらに歌詞が変更されるなど、まさに現在進行形で制作中の楽曲だ。「唇にメロディ」では加藤がカズーで陽気なメロディを奏でる場面も。レコーディングされた際にはどのような仕上がりになるのか、ファンはアルバムリリースを楽しみにしておこう。
中盤には大ヒット曲「好きになって、よかった」、1992年発表の3rdシングル「髪を切ってしまおう」と、心に沁みるバラードが2連発で披露された。続くMCでは加藤がももいろクローバーZ、坂崎幸之助(THE ALFEE)とともにレギュラー出演しているフジテレビNEXTの音楽番組「坂崎幸之助のももいろフォーク村NEXT」の話題に。番組ではももクロのメンバー高城れにに対するリクエストで加藤の楽曲が多く寄せられることから、高城と加藤は1回目の放送で「好きになって、よかった」、2回目の放送で「シャンプー」をデュエットした。加藤は「れにに負けないようにかわいく歌います」と「シャンプー」を披露。さらに「ジェニーの片思い」をキュートに歌い上げた。
一転クールな「ロメオ」、ファンキーな「オットーの動物園」に続いて歌われたのは、加藤のデビュー曲「Zero」。加藤は「『Zero』はいつも盛り上がる場所に選曲する曲なんですけど、今日は全然違う気持ちで歌っている自分に気が付きました。みんなの顔を見て歌っていて、それぞれどんな人生があるんだろうと思ったらワッと体に力が湧いてきて。こうやって集まってくれて、本当に感謝です。ありがとうございます」と感極まった様子で感謝の思いを述べ、最後は2ndアルバム「星になった涙」収録曲「ドライブ」で幕を下ろした。
アンコールの拍手を受け再度ステージに上がった加藤は、ツアーのタイトルにもなった新曲「月の心」を熱唱した。次の「もう少しお金持ちなら」では観客をブロックごとに分けての3声コーラスに挑戦すると、ゴスペル隊のようなコーラスが場内を包み込みハッピーなムードに。加藤は「新しいアルバムと一緒に、来年の春また会いましょう」と告げると、デビューアルバム「テグジュペリ」の1曲目に収められた「ウサギの住む街」を歌い、およそ2時間におよんだライブを締めくくった。
なおポニーキャニオンのオンラインストア「ポニーキャニオン ショッピングクラブ」では、加藤が自ら選曲した2枚組ベストアルバム「My little stories -加藤いづみベスト-」が発売中。初回プレス分には本人による全曲解説コメントカードが同梱されている。
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