椎名林檎、10周年記念祭で5万5000人をノックアウト

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11月30日、椎名林檎のデビュー10周年記念ライブ「椎名林檎 (生)林檎博'08~10周年記念祭~」の最終公演がさいたまスーパーアリーナで行われた。

この日林檎と共にステージに登場したバンドメンバーは亀田誠治(B)、河村"カースケ"智康(Dr)、名越由貴夫(G)。オーケストラの指揮は長年にわたるパートナー、斎藤ネコが務めた(Photo by 外山繁)。

この日林檎と共にステージに登場したバンドメンバーは亀田誠治(B)、河村"カースケ"智康(Dr)、名越由貴夫(G)。オーケストラの指揮は長年にわたるパートナー、斎藤ネコが務めた(Photo by 外山繁)。

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3日間にわたって開催されたこのライブでは、延べ5万5000人を動員。会場周辺では開場時間のはるか前からグッズ販売所に並ぶ長蛇の列ができ、歴代の“林檎コスプレ”で集うファンの姿も多数見受けられた。

このライブはバンドメンバーとオーケストラ、総勢68名による「林檎博記念管弦楽団」が演奏を担当。30日の公演では、開演時間を10分ほど過ぎたころからオーケストラのチューニングがスタート。その音を合図に満員の観客が一斉に立ち上がり、ライブのスタートを固唾を呑んで待った。

1曲目の「ハツコイ娼女」で、ステージに立ち込めたスモークが晴れると林檎が姿を現す。白角のヘッドドレスを被り、ロングドレスを身にまとった彼女の神秘的な姿に、場内からは大歓声が沸いた。「いらっしゃいませ」と一言挨拶した林檎は、その後「シドと白昼夢」「ここでキスして。」「本能」と代表曲を次々と披露。「ここでキスして。」ではリリース当時そのままのスタイルでギターをかき鳴らし、「本能」ではおなじみの拡声器を握り締めて声を張り上げた。続く「ギャンブル」はオーケストラが加わった圧巻のアレンジ。原曲の持つ迫力を極限まで引き上げた演奏だった。

ここでオーケストラが「宗教」を奏でる中、彼女のデビューからの歴史を振り返るスライド「林檎の筋」が上映される。デビュー当時のアーティスト写真やジャケット写真が映し出されると、観客からは「懐かしい!」といった声が上がった。

「ギブス」で再び登場した林檎は衣装を改め、アシンメトリーな黒髪とミニのワンピース姿に。雨だれのように細い照明が降り注ぐ「闇に降る雨」、林檎自身がキーボードを弾きながら軽やかに歌う「すべりだい」など、各曲で盛りだくさんの演出が続く。「浴室」ではステージにキッチンの流しが設置され、林檎は穴あき包丁でリンゴを切ったり皮を剥いたりしながら歌う。包丁を自らの身体に沿わせるように滑らせ、凄まじいスピードでリンゴを刻む様は、見守るオーディエンスに壮絶な緊張感を強いていた。

2度目のスライドタイム「林檎の芯」では、オーケストラが「やっつけ仕事」を奏でる。「本日は母の博覧会へお越しいただき、誠にありがとうございます」という、たどたどしくも可愛らしいアナウンスに場内は騒然。林檎の7歳になる長男がナレーションを担当し、“母”の生い立ちを貴重な写真とともに紹介した。

ライブ後半、「茎(stem)」からは4人のダンサーが登場。美しいストリングスサウンドと林檎の歌声に合わせ、幻想的なコンテンポラリーダンスを披露する。続く「この世の限り」で登場したのは実兄・椎名純平。林檎の着ているドレスと同じ柄のジャケットを着た彼は、妹とともに「この世の限り」「玉葱のハッピーソング」をデュエット。ソウルフルな兄妹のハーモニーで観客を圧倒した。

終盤の「積木遊び」では、往年のファンにはおなじみの振り付けを林檎と4人のダンサーが踊り、一緒に踊るファンも多数現れる。続く「御祭騒ぎ」では高円寺阿波おどり振興協会から80人の踊り手が参加。ゴージャスな演出でステージに花を添える。

「また近々、どこかでお目にかかりましょう」と挨拶し、林檎が本編ラストに歌った曲は「カリソメ乙女」。華麗なステップを踏みながら力強い歌声を響かせ、最後の「冗談よ 左様なら」を歌い終えると、ステージ後方に勢いよく倒れ込んで姿を消す。このライブに賭けた彼女の気合が伝わってくるような、鮮やかな退場となった。

熱狂的なアンコールの声に応えて、ゴールドのビーズドレスで登場した林檎。「ありがとうございます、暑くないですか?私はすごく暑いです(笑)」と観客をなごませ、「せっかくですので、あとちょっとお付き合いください」と挨拶してから「正しい街」を歌い上げる。まさに椎名林檎ならではの哀切なミディアムチューンでオーディエンスを魅了した後は、デビュー曲「幸福論」を“悦楽編”バージョンで披露。拡声器を片手にステージ上を練り歩き、最後は「ありがとう!」と叫んでステージを後にした。

2曲のアンコールでも観客の熱気は収まらない。さらなる拍手が沸き起こり、林檎はふたたびステージに現れた。「長い時間お付き合いくださってありがとうございます。こんなに大勢の方と一度にお目にかかるのは初めてです、演奏家の方々もこんなにたくさん参加していただきまして……いろいろバブリーなことをやらせていただきまして(笑)」と、恐縮気味に参加したファンやミュージシャンへの謝辞を述べる。

「ではちょっと恥ずかしいんですけど、処女作をやらせていただきます」と挨拶してから始まった曲は、童謡のような素朴な歌詞とメロディの未発表曲。茶目っ気たっぷりにこの短い曲を歌った後、この日最後の、こちらも未発表の新曲を披露した。

ブルージーなメロディラインをアレンジで華やかに色付けした、お祭りの最後を飾るにふさわしいナンバー。ライブ中、ずっとステージの模様をモノクロの引き画面で映していた会場のスクリーンに、はじめてカラーの映像が映し出される。熱情を込めて歌い上げる彼女の表情を会場中の全員に印象付けて、3日間の博覧会は幕を閉じた。

ステージ上はクラシックホールを思わせるシンプルなセットのみで、MCもほとんどなかったこのライブ。それゆえに椎名林檎が生み出してきた数々の名曲と美しい歌声、バンドとオーケストラのハイクオリティな演奏、そして彼女の音楽に賭ける気迫が強烈に伝わる一夜となった。デビュー10周年、生誕30周年を迎えた彼女が、ますます華々しい活躍を繰り広げてくれることを誰もが予感したに違いない。

「椎名林檎(生)林檎博'08~10周年記念祭~」セットリスト
(2008年11月28日~30日共通)

01.ハツコイ娼女
02.シドと白昼夢
03.ここでキスして。
04.本能
05.ギャンブル
06.宗教
07.ギブス
08.闇に降る雨
09.すべりだい
10.浴室
11.錯乱
12.罪と罰
13.歌舞伎町の女王
14.ブラックアウト
15.やっつけ仕事
16.茎(stem)
17.この世の限り
18.玉葱のハッピーソング
19.夢のあと
20.積木遊び
21.御祭騒ぎ
22.カリソメ乙女

EN1-01.正しい街
EN1-02.幸福論

EN2-01.未発表曲
EN2-02.未発表曲

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読者の反応

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コバ・ジュン(小林淳一) @kobajun1219

@AyaccordionCPR お、これは覚えています。さて、さきほどのライブ、調べてみたら、やはり阿波踊りだったようです。80人の踊り手!
https://t.co/bzUt7MWnRa

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