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原田ねくら シアター
非凡なメロディメイカーが生み出すドリームポップ
文 / ナカニシキュウ
シンガーソングライター・原田ねくらの5thシングル曲「シアター」は、ピアノを中心とするドリーミーなバンドサウンドとアンニュイなウィスパーボーカルで紡がれるメロウで軽快なポップナンバー。アーティストプロフィールがほとんど明かされていないため実態は不明ながら、音やアーティスト名などから判断するに、いわゆるベッドルームアーティストの1人と見ていいだろう。
とはいえオケは打ち込みベースではなく生演奏主体のようで、しかもほとんどの楽器が中低音を強調した丸みのある音作りになっており、それゆえのローファイさが楽曲全体にほんのりとした温かみを付与している。アレンジ的にも、近年流行りの緻密に音符を詰め込む方向性とは対照的な、ぶっきらぼうなまでに大きなリズムで刻まれるピアノを軸とするゆったりしたトランジションが耳を引くポイントだ。そしてサウンド面で最も特徴的なのは、やはりウィスパー成分の強い原田のボーカルだろう。その控えめながらも奥のほうに確たる熱量を感じさせる青い炎のような歌声が、楽曲に独特のリリシズムをもたらしている。
楽曲構成もやや独特だ。本楽曲はいわゆる「A→B→サビ」という縦割り構造ではなく、もう少しナチュラルかつフレキシブルな作りになっている。「AからBへ移行する」というよりは「Aがどんどん展開していく」中で、いつのまにか2回目のAへとシームレスに回帰しており、そのままもう1回Aが繰り返されるのかと思いきや、知らないうちにサビに突入している始末。それは各メロディが分断されておらず、有機的に結び付いていることを意味する。つまり「A、B、サビを別々に作ってくっつける」という一般的な方法論ではこの楽曲は生み出せない(少なくとも生み出しづらい)ということであり、より本質的な意味でのメロディメイカーとしての能力を原田が有していることの証明にほかならない。
原田ねくら「シアター」
- 原田ねくら「シアター」
- 2024年11月27日(水)配信開始 / 原田ねくら
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原田ねくら(ハラダネクラ)
透き通るようなウィスパーボイスと聴き手の心を惹き付ける叙情的なリリック、穏やかな音像が特徴のシンガーソングライター。どこかはかなげながらもポップな楽曲でリスナー層を拡大させている。