Redhair Rosy「turn red I」インタビュー|the McFaddin活動終了後、再びバンドになるまでの日々

Redhair Rosyが1st EP「turn red I」を配信リリースした。

Redhair RosyはRyosei Yamada(Vo)、Taito Katahira(G)、Yu Ando(Dr)、Keisho Maeda(G)、Ryoma Matsumoto(VJ)、Masayuki Matsunaga(B)からなるロックバンド。2024年4月に活動を終了したバンド・the McFaddinのメンバーで構成されており、“矛盾”をテーマに掲げて活動している。

音楽ナタリーでは作詞作曲を手がけるRyosei、エンジニアを務めるTaito、映像制作を担当するRyomaにインタビュー。the McFaddinからRedhair Rosyへ、脈々と続く6人のストーリーを語ってもらった。

取材・文 / 安部孝晴

白と黒の間を肯定する

──まずはthe McFaddinの活動終了に至った経緯をお聞かせください。

Ryosei Yamada(Vo) the McFaddinはもともと、Nirvanaのコピーバンドとして結成されたんです。コピバンのために付けた名前だったから、ずっと改名のタイミングを見計ってました。2021年にRyoma、2024年にまつし(Masayuki Matsunaga)がバンドに入って、6人そろったときに、名前を変えようという話になって。仕切り直さなきゃあかんくなったわけじゃないけど、先を見据えて改名しました。

Ryoma Matsumoto(VJ) このバンドとは長いタームで関わったほうが解像度の高い映像を作れるんじゃないかと思って、僕のほうから「メンバーとしてやらせてくれ」と言ったんです。

──映像制作もレコーディングも自前でこなせるようになったことが、改名のきっかけに。Taitoさんは、もともとミックスやマスタリングの経験があったんですか?

Taito Katahira(G) いや、まったく。コロナ禍に独学で始めて、己の耳だけ信じてやってます(笑)。

Ryosei バウンス祭りしてるもんな(笑)。

Taito 自分でやると、いろんなことを試せて楽しいです。細かいところまで作り込めるようになりました。

Ryoma ずっと机に向かってるんですよ。かけてる時間がすごい。僕らは彼の家に行っても、ゲームをするだけなんですけど(笑)。

Taito マジで時間が溶けます。夜通し音を聴いてますね。

Redhair Rosy

──Redhair Rosyのテーマとして、“矛盾”を掲げたのはなぜでしょうか?

Ryosei 僕はいつも矛盾について歌ってるからです。悲しいことがあっても、外は平気で晴れてたりするじゃないですか。世界にはそういう矛盾がたくさんあるのに、白黒はっきりさせないといけないことが多い。だから、みんなの心が蝕まれていくんだと思います。白と黒の間を肯定することが、僕のテーマです。

──バンド名も、そのテーマと関係がある?

Ryosei はい。“Redhair”は怒り、“Rosy”は理想の象徴で、「俺はキレている、でも理想をあきらめていない」という矛盾を表現してます。“Rosy”は、the McFaddinの1stアルバム「Rosy」から取っていて。あの頃は大人になったら人生がよくなると思ってたけど、実際は人生がよくなるどころか、世界が悪くなってきた。僕は髪を赤く染めることで、そういう腹立たしさを表現してきたんです。

Taito バンド名、めっちゃ考えたよね。ずっと前から名前を変えることが決まってたので、5年くらい考え続けたんですよ。

結局みんな死ぬ

──そして2024年10月、Redhair Rosyの1stシングル「Rush」がリリースされました。

Ryosei これは「結局みんな死ぬし、それならやれるだけやっちゃおうよ」っていう曲で。僕は映画みたいな人生を送りたいと思ってるけど、映画と違って、現実には無駄なシーンが多い。例えば「Rush」の歌詞にある「渋滞」と「絡まるイアホン」のケーブルを解く時間。これだけはほんまに無駄やなって思う。でも、もうしょうがないよね、みたいな。人生のそういうところも許したくて書いた曲です。

Redhair Rosy「Rush」配信ジャケット

Redhair Rosy「Rush」配信ジャケット

──「渋滞」や「イアホン」のような身近なトピックと、「地球がまわる音」という壮大なフレーズの対比が素晴らしいですね。

Ryosei 実は、あんまり考えてないんです(笑)。デモができたら、日本語なのか英語なのかわからん言葉で1回歌ってみて、そのとき口にした言葉を、自分で拾ってリリックにすることが多くて。「地球がまわる音」もそんな感じでしたね。どちらかと言うと、メロディや音の質感のほうを大事にしてます。

──the McFaddinの頃と比較して、サウンド面にはどのような変化がありましたか?

Ryosei 改名後の1作目なので、やっぱりちょっと違う雰囲気にしたいなと思って、Kiongにプロデュースをお願いしました。Kiongとは昔から一緒に曲を作って遊んだり、僕らのパーティでDJをしてもらったり、ほんまに関わりが深くて。

Taito 今まで一緒にやってこうへんかった人と曲を作るの、めっちゃ面白かったです。作り方が全然違うよな。

Ryosei ビートのセンスとか、僕らとはまったく違うね。

髪を赤く染めてほしい

──the McFaddinの活動終了後、Ryoseiさんはカナダにいたんですよね?

Ryosei はい。半年間、カナダで暮らしてました。

──その経験はやはり「Rush」にも反映されている?

Ryosei そうですね。カナダでの生活に影響されて、この曲のテーマが「急がば回れ」みたいなものになりました。

──カナダではどんな生活を送っていたんですか?

Ryosei ひたすら曲を作ってましたね。図書館の中に無料で使えるレコーディングスタジオがあったので、そこに毎週行って、歌って、家でミックスして、Taitoに送って。「Rush」のボーカルは、カナダで録りました。

──カナダから送られてきたデータを聴いて、Taitoさんはどのように感じましたか?

Taito 意外といつも通りやなと思いましたね。日本で直に会ってやってたことを、リモートでやっただけ。ただ、14時間の時差があるから、俺が作業したデータを送って、寝て起きると、Ryoseiからデータが返ってくる。意外とテンポがよくて、オモロかったです(笑)。

──「Rush」のミュージックビデオには、カナダの映像が使用されていますね。

Ryoma 友人のカメラマン(Rimi Watanabe)が撮影してくれました。Ryoseiが単身カナダに行って何をしているのか。僕らはそれを知りたいから、必然的にドキュメント映像を撮ってもらおうという流れになって。素材は国際郵便で送られてきました。

Taito 編集前の映像も、すでによかったよな。

Ryoma Taitoと2人で、テレビに映して観ました。Ryoseiのカナダ生活を僕らが追体験するという状況が、すごく面白かったです。

──撮影するにあたって、Ryoseiさんに依頼したことなどはありますか?

Ryoma 「髪を赤く染めてほしい」とだけお願いしました。「Rush」のMVは、髪が赤くなってRedhair Rosyが誕生する、というストーリーになっています。

夜が朝になる瞬間

──「Parkengo」は、ローファイなビートが印象的でした。

Ryosei これは最初、ワンループの曲やったんですよ。それをKiongとTaitoが再構築してくれて。

Taito イチからビートを打ち直しました。「Parkengo」は冬に出せる曲にしようと思って、季節感をすごく意識しましたね。

Redhair Rosy「Parkengo」配信ジャケット

Redhair Rosy「Parkengo」配信ジャケット

Ryosei 最初はこの曲、ボツにしようとしてたんです。でもTaitoがプロデュースしてくれたから、もう1回よさを見出せた。

Taito いい曲になると思ったので、もう俺がどうにかしようと。

Ryosei 僕は飽き性なんですぐ次、次ってなっちゃうんですよ。

Taito Ryoseiは判断がめっちゃ早いんです。俺は逆で、いつもせめぎ合いになる。

Ryoma あるある(笑)。

──MVでは、“park and go”を意味する曲名の通り、車がモチーフになっていますね。

Ryoma 最初に映るのは、京都の四条大宮にあるパーキングです。the McFaddinの頃から、よくそこにハイエースを停めて、機材を積んで、大阪に行ったり、東京に行ったり。僕にとって、四条大宮は旅の始まりなんです。このMVでは、Redhair Rosyがバンドとしてスタートすることを表現しています。

──朝焼けを背に立つRyoseiさんの姿が、とても印象的でした。

Ryoma 大阪の駐車場にいい感じの街灯が1本あって、カメラを定点で置いてみたら、急に電気がパチンと切れて、その瞬間をたまたま撮れて。

Ryosei 夜が朝に変わる時間やったんですよ。

Ryoma もともとは夜が朝になっていく“グラデーション”を撮ろうとしてたんですけど、夜が朝になる“瞬間”が撮れたので、そのカットをラストのサビの起点にしました。