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時差 カゲロウ
心地よい平熱感が紡ぐエバーグリーンなポップソング
文 / 森朋之
大学卒業後に集まった社会人4人によって結成され、愛知を中心に活動しているJ-POPバンド・時差。メンバーは、ズミ(Key, Vo)、レイヤ(G)、ヒデ(Dr)、あぽ(B)。個性的なバンド名には、聴く人や観る人に「時間の流れを錯覚したかのような体験をしてほしい」という思いが込められているという。
2022年に活動をスタートさせ、これまでに4曲のシングルを発表している彼ら。「カゲロウ」は2023年8月にリリースされた2ndシングルだ。イントロは、夏の美しい日差しを想起させる鍵盤のフレーズ。そこにブルージーなギターフレーズが絡み、洗練されたドラム&ベースとともに楽曲がグルーヴし始める。4リズムによるシンプルなサウンドおよびアレンジなのだが、端々に4人の確かなセンスが感じられ、まったく飽きることがない。ライブではセッション的なコーナーも取り入れているそうだが、プレイヤーとしての個性を反映させたい意向もあるのだろう。
決して大仰にならず、不自然に高い音を使うこともなく、あくまでも平熱を保ちながら進んでいくクリーンな旋律も気持ちいい。透明感と切なさを感じさせるズミのボーカルも相まって、何度もリピートしたくなる。中毒性というよりも、ずっとそばに置いておきたい感覚もまた、この曲の特長なのだと思う。「不確かな一歩 脈打つビート 届くのさきっと」と韻を踏みながら、未来に対する前向きな姿勢を映し出す歌詞も魅力的だ。
個人的な印象だが、時差にはMAMALAID RAGやシンリズムといった、優れたポップスキルを持ったアーティストの文脈を感じる。派手なギミックに頼らずとも、シュアな耳を持つリスナーを魅了し、長く愛され続ける──そんな可能性を持ったバンドだと思う。
時差「カゲロウ」
- 時差「カゲロウ」
- 2023年8月30日(水)配信開始 / JISA
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時差(ジサ)
2022年5月に結成された、愛知を中心に活動するJ-POPバンド。2023年5月に1stシングル「空路」、同年8月に2ndシングル「カゲロウ」をリリースした。メンバーは同じ大学出身のズミ(Key, Vo)、レイヤ(G)、ヒデ(Dr)、あぽ(B)の4人。バンド名には自分たちの音楽を聴き終えたときに「あれ、もうこんなに時間経った?」と時間のズレを感じてほしいという思いが込められている。