りぶの新曲「Twilight」が配信リリースされた。
「Twilight」は現在放送中のテレビアニメ「誰ソ彼ホテル」のエンディング主題歌。盟友のEveが作詞作曲を担当している。
音楽ナタリーでは「Twilight」のリリースを記念して、りぶとEveにインタビュー。「Twilight」の制作舞台裏はもちろん、2人の出会いや当時の歌い手シーンを取り巻く状況までたっぷりと語り合ってもらった。
さらに最終ページには、りぶがレコーディング真っ最中だという5thアルバム「Ratimeria」(5月14日リリース)について語るソロインタビューを掲載。「Twilight」も収録される5年半ぶりのアルバムについて、りぶ本人がその魅力を明かす。
取材・文 / 柴那典
Eveくんのメールでやる気になりました
──お二人の交流はかなり長いそうですが、知り合ったきっかけは?
Eve 僕の記憶が正しければ、りぶくんの初投稿動画を上がってからすぐに観たんです。あれって、いつでしたっけ?
りぶ “歌ってみた”の初投稿がbuzzGさんの「Marygold」で、2010年の5月23日でした。で、翌日の24日に投稿したのがハチさんの「沙上の夢喰い少女」でしたね。
Eve 自分の誕生日が5月23日で、その次の日に動画を観た記憶があります。当時はボカロや歌い手の曲をディグる習慣があって、毎日のようにランキングや新着で気になった曲を聴いていたんです。で、「沙上の夢喰い少女」の“歌ってみた”を最初に観て「すごい人見つけちゃった!」と思って。「Marygold」も聴いて「やっぱりすごい!」となって、その熱量のままりぶくんに初めてメールを送りました。そこから交流が始まった気がします。
りぶ 初投稿の翌日に来た1通目のメールがEveくんだったんです。熱い思いがこもった反応をもらえて、それでやる気になりました。Eveくんの言葉には勇気付けられましたね。ニコニコ動画のランキングにも入っていなかった頃だったので。
Eve りぶくんの動画に出会えたのは奇跡でしたね。Twitterも僕からフォローしました。りぶくんが、Twitterをフォローしている中で1番古い人かもしれないです。
りぶ そうなんだ! それはちょっと誇らしいですね。
──Eveさんはりぶさんの“歌ってみた”のどういうところがいいと思ったんでしょう?
Eve 全部ですね。クオリティがすごかった。当時はみんなアマチュアの世界で、名前も聞いたことがないし、顔も知らないけど、歌声を聴いて「プロじゃん!」と驚きました。
「歌ってみた」の歴史を振り返る
──りぶさんとしては、その頃の“歌ってみた”を巡るムードや自分が見ていたシーンの状況についてどう感じていましたか?
りぶ 当時は動画を上げたらお互いに宣伝し合うことが活発に行われていたんです。Eveくんは僕より前に活動を始めていて、wowakaさんの「ローリンガール」をバンドサウンドのアレンジで上げていたりして。僕も高校時代にバンドを組んでいたので親近感もありました。その頃はhalyosyさんの「メルト」とかゴムさんの「思い出はおっくせんまん!」とか、定期的に話題になる曲が出てくるムーブメントをお祭り的に楽しんでいた雰囲気もあって。そういう流れの中で、僕が投稿を始めた2010年頃はアマチュアならではの荒削り感がだんだん磨かれていく過渡期だったと思います。
Eve 合唱文化とかあったよね。みんなが同じ曲を歌って、1曲の中でみんながコラボしてるみたいな。
りぶ 合唱動画、よかったよね。
──それぞれが“歌ってみた”を投稿していただけじゃなく、コミュニティっぽい感じもあった。
Eve めちゃくちゃありました。
りぶ 当時はシングリンクというサイトもあって、そらるさんとか、そこで関係性を築いた仲間たちとは今も一緒に遊んでたりもします。
Eve 当時mixiにりぶくんの応援コミュニティがあって、僕はそこに入ってました。
──りぶさんがメジャーシーンで活動するようになっていく流れを、Eveさんはどういうふうに見ていましたか?
Eve 2010年頃は、ピコさんとか、メジャーでCDを出したりライブ活動をしたりする方がちらほら見受けられるようになってきたので、りぶくんがCDを出すのも自然な流れだったというか。発表があったときは「みんな待ってたよ」という気持ちでしたね。
りぶ 自分としても、大きな渦の中に身を任せるというか、あれよあれよという間にCDをリリースすることが決まったという感覚が近いですね。そもそも「プロになってやるぜ」というモチベーションで音楽を始めてなかったので。ピコさんや赤飯さん、clearさんといった歌い手が活躍する土台のようなものを作ってくれたところに、自分が乗っかっているみたいな感覚はありました。
7年越しの初対面
──りぶさんとEveさんが対面でお会いしたのは、いつ頃のことでした?
Eve それはりぶくんを知ってから、かなりあとのことなんです。
りぶ 2015年に3枚目のアルバム「singing Rib」を出したあとにお休み期間に入ったんですけど(参照:「singing Rib」発売記念特集 りぶ×みきとP×大石昌良 鼎談)、2017年にEveくんがボカロ曲を上げるようになって、コンポーザーとしての活動が活発化した。「ドラマツルギー」(2017年発売のアルバム「文化」収録曲)を聴いたときに「これはヤバい」と衝撃を受けたんです。僕は積極的に活動をしていない時期だったんですけど、「これは自分も歌わないといけない」と思って。どうしても歌いたかったので、勢いで“歌ってみた”を2年7カ月ぶりに投稿しました。
Eve あのときはりぶくんから音沙汰がなかったんです。歌の投稿も止まっちゃったし。それで、ひさびさに歌声を聴いて「よかった、復活させることができた」と思ってました。
りぶ まさにEveくんの曲の力で復活させられた感じでした。で、動画を投稿したらEveくんがダイレクトメッセージで「めちゃめちゃよかった」と言ってくれた。そこで「1回ごはんでも行きませんか?」とお誘いして、初めてオフラインで会いました。お互いずっと知っていたけど、顔はその日初めて見たという。
Eve 7年越しでしたね。
──Eveさんは、りぶさんが2019年に発表した4thアルバム「Ribing fossil」に「リア」を提供していましたが、どんな思いで作りましたか?
Eve 「なんでも作っていいんだ」と思いながら書きましたね。りぶくんは歌唱力がすごいから、どんな曲でも歌いこなせてしまうので「自由に作れるな、うれしいな」という気持ちでした。
──りぶさんとしては「リア」という曲を受け取って、どう感じましたか?
りぶ 自分はEveくんの楽曲のファンなので、そう言ってもらえるとボーカリスト冥利に尽きるというか。Eveくんとは初投稿の翌日からの長年の関係性がある中で、「こういうふうにEveくんは自分のことを思ってくれてるんだ。考えてくれてるんだ」と歌詞から感じられて、うれしかったですね。
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仮歌を聴かれるのはちょっと恥ずかしい