りりあ。のメジャー1stフルアルバム「軌跡」がリリースされた。
「軌跡」にはテレビアニメ「わたしの幸せな結婚」第1期のオープニング主題歌「貴方の側に。」、第2期のオープニング主題歌「幸せな約束。」、テレビアニメ「らんま1/2」のエンディングテーマ「あんたなんて。」、カンテレ・フジテレビ系ドラマ「あの子の子ども」のオープニング曲「ねえ、ちゃんと聞いてる?」といった多数のタイアップ曲や新曲「消去。」など17曲を収録。タイトル通り、りりあ。のこれまでの歩みを示すような集大成的な作品となっている。
数々の失恋ソングを生み出し、初のワンマンライブ、初のライブツアーも経験するなど、2024年を駆け抜けたりりあ。が充実した2024年を振り返り、アルバムの制作秘話、今後実現したいことについてたっぷりと語る。
取材・文 / 西廣智一撮影 / 山川哲矢
初ライブはお客さんも緊張していた
──りりあ。さんにとっての2024年はだいぶ濃い1年になりましたね。
そうですね。いろいろと変化の多い1年だったなと思います。
──特に昨年は春に初ワンマン、秋には初ツアーとライブが印象に残りました。
そうか、1stワンマンも去年だったんですね。もっと前だった印象でした。ツアーもあっという間な感覚でしたし。
──1stワンマンは振り返ってみていかがですか?(参照:りりあ。初ワンマンで恋愛ソングをたっぷり披露、ゲストのAru.(ミテイノハナシ)とデュエット)
今まで顔出しもしてないですし、「どう思われるんだろう?」と歌う前から緊張しました。でも、私だけじゃなくてお客さんも最初どうリアクションしていいんだろう?って緊張している感じが伝わってきたのは面白かったです(笑)。そこからライブが進むにつれて、すごく熱狂的な雰囲気もしっかり伝わってきて、楽しかったですね。
──それまではネットを通じて音楽を届けてきて、リアクションも文字を通じてでしたが、生で歌ったものに対してダイレクトで反応が返ってきたわけですものね。
目の前で泣き崩れたり、真顔でずっとこっちを見ていたり、後ろから双眼鏡で見ていたり、いろんな人がいて感動しました。
──曲の合間にはすすり泣く声がフロアから聞こえてきました。
私の曲は失恋ソングばかりなので、みんなもズーンって感じで感情移入しやすいシチュエーションでしたよね。
──初ワンマンライブを経験したことでの手応えじゃないですけど、そのあとの活動に役立てたこととか反映させられたことはありましたか?
秋のツアーに向けてどう歌うべきかと、どう見せるべきかがわかってきたので、そこはうまく反映できた気がします。
バンドと一緒だから安心して歌えた
──その初ツアーですが、東名阪の3カ所をバンド編成で回りました(参照:りりあ。“何回歌っても感情移入する曲”や“ありえないくらい楽しい曲”でファン惹きつけた初ツアー閉幕)。りりあ。さんはそれまで、バンドを携えて歌う経験はありました?
いや、ないです。でも私、弾き語りするのが苦手で。ギターを弾きながら歌うと、ギターと歌どちらか一方が疎かになってしまうので、バンドは歌に集中できてすごくありがたかったです(笑)。
──なるほど(笑)。僕は東京公演を拝見しましたが、ツアーファイナルということもあってか、序盤からリラックスしている印象を受けました。そのへんも1stワンマンとの大きな違いかなと思いましたが。
最初からバンドと一緒だから安心して歌えたのが大きかったのかな。ただ、中盤で弾き語りに移ると急に気が抜けなくなって、緊張しました(笑)。
──ツアーで各地を回った際、印象に残った出来事やハプニングはありましたか?
大阪公演の日が大雨で、新幹線が途中で止まってしまったんですよ。で、会場に到着したのが本番直前で、リハーサルも10分くらいで終えてヘアメイクも超ギリギリ。でも、それくらいのほうが私の中ではなぜかやりやすくて。準備期間が短ければ短いほど、緊張もしなくて済むんですよ。本番も気付いたら終わってるぐらいの感覚でしたしね。だから、大きなハプニングもありつつ、一番楽しかったのが大阪公演でした(笑)。
──そういうやりやすさがあったんですね。東京公演は会場がSHIBUYA PLEASURE PLEASUREでしたが、いかがでした?
ステージから見た景色が、ほかの会場とは全然違いました。もともと映画館だったからか、お客さんの顔が1人ひとりはっきりと見えたし、お客さん側からもよく見えたんじゃないかな。2階席もあったので、いろいろと新鮮でした。あと、あれだけ広いのにお客さんに囲まれているような作りだからなのか、マイクなしでも声が届くんですよね。普段のSNSと同じような感覚でみんなと関われたので、そこもよかったなと思います。
恋愛がテーマじゃないと不安になっちゃう
──昨年リリースした楽曲についても聞かせてください。2024年は「騙されないからね。」や「ねえ、ちゃんと聞いてる?」「あんたなんて。」とテレビドラマやアニメのテーマソングが続きました。2023年夏にテレビアニメ「わたしの幸せな結婚」のオープニング主題歌に「貴方の側に。」が使用されて以降、それまで以上に外に向けて届けようという意識が強まっているのではないでしょうか?
ドラマやアニメの物語というお題がいただける分、焦点を定めやすいのがありがたい一方で、自由に曲を作ってきたときとは違う縛りも生じるので、やっぱり一長一短あるのかなと。タイアップ作品に寄り添いながら自分の世界観を残しつつ曲を作るっていうのは、何回やっても難しいですね。
──その作品の断片をちりばめながら、登場人物やストーリーをイメージさせないといけないわけですよね。
そうなんです。例えば、物語についてどこまで歌詞で触れていいのかのさじ加減も必要ですし。特に原作がある作品だと、まだエンディングまでたどり着いていないものもあるから、より難しいんです。
──「騙されないからね。」や「ねえ、ちゃんと聞いてる?」はりりあ。さんにとって初となるドラマのテーマソングでしたが、アニメのタイアップのときと向き合い方に違いはありましたか?
主人公の気持ちを考えていつも作っているので、その点では作り方はあまり変わらないですね。あと、「あの子の子ども」というドラマは高校生の妊娠という重いテーマでしたけど、恋愛の要素も重なってきて。私、恋愛がテーマじゃなくなった途端に「ヤバい! 何について歌おう?」と不安になっちゃうので、そこにおいてはとても助かりました。
──それぞれの作品の主人公や登場人物に寄り添いつつ、そこにご自身の経験を重ねていくと。
そうですね。実体験も重ねつつ、主人公の気持ちになりながら。ただ、主人公に寄り添っているけど、最終的には「私だったらこうするな、こう思うな」という気持ちを反映した曲になることが多いかもしれないです。
──どの曲もそれぞれの作品のテイストをにじませつつ、しっかり従来のりりあ。さんらしい作風なので、毎回聴いていて安心するんですよ。そういった最近の楽曲が、今まで以上に外側に向けて届き始めているという実感は得られていますか?
前もお話ししたかもしれませんが、アニメのタイアップをさせていただくようになってから、SNSで海外のファンの方からの反応が増えていて。コメントにいろんな国の言葉が並んでいると、広く届き始めているのかなと実感します。あと、ドラマだと同世代以外の方々にも届いているのかなと感じることもあります。
──アニメきっかけでりりあ。さんの楽曲に触れた海外のリスナーは、ほかの失恋ソングを聴いてどう感じるんでしょうね。
確かに! どう思うんですかね。ズーンって落ち込むような曲ばかりですし。そこまで聴いてくれているのかな?
──熱心なファンだと、日本語を自身の母国語に訳すこともあるようですよ。
いろんな歌詞の意味を理解してもらっているんだとすると……どこか申し訳ない気持ちにもなります(笑)。
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ほぼ重たい曲ばかりなんですけど(笑)