
メロン記念日、15年ぶりの挑戦状
「This is 運命」でクラウドサーフ発生!ハロー!プロジェクトが生んだ異端のグループが“アイドル戦国時代”前夜に残した革命の足跡
2025年8月4日 18:30 22
アイドルライブにクラウドサーファー発生!ライブで化けた「This is 運命」
「This is 運命」はオリコン週間ランキングで初のトップ30入り(最高28位)を記録。決して大きなヒットとは言えなかったが、ハロー!プロジェクト合同コンサートやほかのハロー!プロジェクトメンバーのライブにゲスト出演した際にこの曲への反響が徐々に大きくなっていくなど、その話題性もあり
メロン記念日「さぁ! 恋人になろう」Music Video
「『This is運命』で流れが変わったものの、ロック調の曲が続くわけではないんですよね(笑)。そこで一筋縄でいかないのがメロン記念日らしいといいますか。でも、ずっと同じじゃないというのも、周りを飽きさせない意味ではよかったんでしょうね」(村田)
以降も「夏の夜はデインジャー!」(2002年6月発売。最高14位)、「香水」(同年10月発売。最高12位)と、作品を重ねるにつれてセールス / チャートで好成績を打ち出し続ける。そして、2003年1月発売の8thシングル「赤いフリージア」では、念願のチャートトップ10入り(最高10位)を果たす。これら3曲も決してロック調というわけではなく、さわやかさの中にもどこか切なさを覚えるサマーチューン(「夏の夜はデインジャー!」)、メインボーカル(柴田)とコーラス&ラップ(斉藤、村田、大谷)という大胆な歌い分けを導入したミディアムバラード(「香水」)、化粧品のCMソングにも合いそうな王道アイドルポップソング(「赤いフリージア」)と、シングルごとに曲調を変え続けている。しかし、そこには初期のような迷走感は一切感じられず、むしろ「次はどんな曲が来るのか?」とポジティブに受け取られるようになっていた。
「あの頃は、ファンの方たちもそうだったと思うんですけど、『メロン記念日はロックだね!』と言われるようになったことで、私たち的にももっとロックな曲を増やしたいと思っていたんです。でも、『香水』も『赤いフリージア』も私たちにとってはすごく大事な曲。その後も『チャンス of LOVE』(2003年5月発売の9thシングル)みたいにセクシーな楽曲をいただきますけど、『This is 運命』でグループや個々のキャラを確立させるチャンスをいただいた結果、その後どんなタイプの曲を歌わせても大丈夫というところまで持っていけたのかなと、今ではそう思います」(斉藤)
メロン記念日「赤いフリージア」Music Video
「赤いフリージア」リリース直前の2002年12月9日には、グループにとって念願だった初のワンマンライブも実現。筆者は今でもよく覚えているが、当日は東京で初雪が降るというドラマチックな天候も味方し、メロン記念日は今はなき赤坂BLITZに集結したヲタモダチとともに熱狂的な空間を作り上げた。終盤に披露された「This is 運命」では、当時のアイドルコンサートでは滅多に見られないクラウドサーファーも続出。ここでの体験が、その後のメロン記念日のライブ活動に多大な影響を与えることになる。
「『This is 運命』という曲が、本当の意味で化けた瞬間でしたよね。あの曲のおかげで、私たち自身もライブを通して鍛えてもらったような感じもするので、本当に感謝しています」(村田)
「『This is 運命』のレコーディングのとき、『愛してますか?』を(松田)聖子ちゃん風に歌ってほしいと敦士さんからディレクションされたんですけど、ライブではもはや聖子ちゃんの面影もなくなって……(笑)。そんな変化も楽しんでいました」(柴田)
「この曲のときのお客さんのリアクションに引っ張られるように、私たちのライブでの動きや煽りがどんどんオラオラ系になってしまって。ある意味、その後のメロンのライブスタイルは1stワンマンから始まったのかもしれません」(斉藤)
再び低迷……「メロン記念日ロック化計画」で取り戻したアイデンティティ
2003年3月には、「赤いフリージア」までの全シングルを網羅した1stアルバム「1st Anniversary」をリリースし、同作を携えた全国ツアーも実現。以降もリリースや単独公演を続けていくものの、徐々にその勢いに翳りが見え始める。これは2004年以降、Berryz工房や℃-uteといった新世代のハロー!プロジェクトグループが次々デビューしたことも影響しているのだろう。
「この時期にも解散危機がありました。なかなかシングルを出せなかったんだよね」(柴田)
「リリースの感覚がどんどん長くなり、ライブの数も減って、2005年はシングル1枚(2月発売の14thシングル『肉体は正直なEROS』)だけでライブも年末に1本のみになり。そういう危機感を覚えたりと痛手を負いながらも、それを跳ね返す負けん気だけはあったよね」(斉藤)
デビューから6年が経とうとしていた2006年。メロン記念日は再び新たなフェーズへと突入する。同年6月の中野サンプラザ公演に合わせて、再びロックサウンドを強めた両A面シングル「お願い魅惑のターゲット / Crazy Happy!」をインディーズから発表。同年夏にはライブハウスツアーも開催するなどして、「This is 運命」で手にした自分たちのアイデンティティを取り戻し始める。また、同年夏より主催クラブイベント「Melon Lounge」も定期開催され、メンバー自身がDJを務めるほか、著名なJ-POP DJやロックアーティストとの共演機会が急増。2009年に入ると「メロン記念日ロック化計画」と銘打ち、BEAT CRUSADERSやニューロティカ、ミドリ、THE COLLECTORS、GOING UNDER GROUNDとのコラボシングルを連発し、ロック側へと一気に振り切っていく。さらに、今となっては当たり前となった「アイドルのロックフェス出演」に関しても、メロン記念日は2009年の時点で大阪や広島でいち早く実現させている。
メロン記念日「お願い魅惑のターゲット」Music Video
2010年代にはロック色を強めたサウンドを信条とするアイドルグループ、小さなライブハウスを主戦場とするライブアイドルが多発するが、今思えばメロン記念日のこうした活動は、後陣たちへ大きなヒントを与えていたのではないだろうか。
「確かに『お願い魅惑のターゲット』という曲との出会いは、『This is 運命』以来のターニングポイントだったかもしれません。あの曲があったからこそ、のちの『ロック化計画』やバンドさんたちとのコラボへとつながっていったわけですし。楽器を持たない私たちにとってはバンドサウンドというものは身近な存在ではなかったので、コラボ曲のレコーディングに立ち合わせていただくことでどんどん自分たちの体になじんでいきました。デビューして8年、9年経ったこのタイミングでまた新しいことに挑戦できたのはすごく貴重な経験でしたし、そのおかげでグループとしても新しいステージにたどり着くことができたんじゃないかな」(斉藤)
「10年近く経って、ようやくアイドルとしての自我が芽生えたのかもしれないよね」(柴田)
デビュー10周年の節目に解散「あの頃の私たちにとっては最善の道」
一見すると順調そうに見えたメロン記念日だったが、デビュー10周年当日の2010年2月19日に行った「メロン記念日10th ANNIVERSARY LIVE『生誕3654日感謝祭』」のステージ上で、同年春からのツアーを最後に解散することを発表する。
「自我が芽生えたタイミングだったのに(笑)。でも、あの頃の私たちにとっては10年という区切りが本当に最善の道だったんです。今もあのとき解散を選んだことに後悔はありません。でも、もしあのまま続いていたらどうなったんだろうなってことは、たまに思ったりもします」(柴田)
「有終の美じゃないですけど、10年を4人で走り切ったことでひとつの時代を作れた気がしていて、それを自分たちとしても誇りに思っていました。解散してからも『時代の先を行ってたよね』とか『もうちょっと続けていたら、メロンが生きるタイミングがあったんじゃないか』とよく言われましたけど、ああいう形で終えたのもまたメロンらしいのかなと思います」(斉藤)
「当時は『早すぎるよ!』って声もたくさんいただきましたけど、惜しまれて解散できたことはすごく幸せなことだなと思っていて。潔いと思われるかもしれませんが、私たち的にはそこに潔さも感じてないくらい、意思が固かったんですよ」(村田)
こうして2010年5月3日の中野サンプラザ公演「メロン記念日 FINAL STAGE "MELON'S NOT DEAD"」をもって、メロン記念日は10年におよぶ活動に終止符を打った(参照:「メロン記念日でした!」幸せな10年を経て第2の人生へ)。
大人になった“熟メロン”15年ぶりの挑戦状
ここからは話題を2025年に戻す。1月の期間限定再結成発表後、サブスクでの音源解禁や解散ライブの爆音上映イベント開催などがうれしい知らせが相次いだが、中でも新旧ハロー!プロジェクトファンを驚かせたのは3月末開催の「Hello! Project ひなフェス 2025」1日目公演(29日)にゲスト出演したことだろう。筆者も当日の昼公演を会場で観覧したが、おなじみの出囃子SE「メロン記念日のテーマ」が流れ始めた瞬間、体中の血液が沸騰するかのような興奮に襲われた。そして、荘厳なオルガンの音色に導かれるように斉藤、村田、柴田がステージに姿を現し、代表曲の1つ「香水」でメロン記念日復活のステージは幕を開けた。グループ解散後も後輩メンバーが歌い継いできたこの曲を、メロン記念日が歌うオリジナルバージョンで目に耳にしたハロー!プロジェクトファンは、会場にどれだけいたのだろうか……ステージ上の3人はひさしぶりのライブであることを一切感じさせないぐらいに堂々とした佇まいで、懐かしの名曲を届けてくれた。
短いMCを挟んだあとは、彼女たちの運命を変えた2曲……「お願い魅惑のターゲット」と「This is 運命」を連発。特に後者では会場中にコールも響き渡り、荒々しい歌やパフォーマンスとともに客席はメロン記念日色に染め上げられた。たった3曲ではあったが、「メロン記念日、ここにあり!」と証明してみせるに十分なパフォーマンスだったと断言したい。
「会場入りすると、昔から顔なじみのスタッフさんたちから『お、レジェンドが来たぞ!』みたいに茶化されて(笑)。本格的に再始動するのは15年ぶりなので、実はステージに上がる前は3人ともめちゃくちゃ緊張していたんですよ」(斉藤)
「でも、現役のハロー!プロジェクトメンバーたちがメロンの楽曲を歌い継いでくれていたからか、『なんでそんなに知ってるの?』ってぐらいに皆さん好意的に受け入れてくださって。こちらも感動を与えてもらいましたし、今思い出しただけでもこみ上げるものがあります」(柴田)
「『This is 運命』が始まるときなんて、(イントロの)クリックでみんなわかってたよね(笑)。そういうホーム感を含め、ここが再始動の1発目で本当によかったです」(村田)
「心が揺れました。私たちメロン記念日単体ではきっとあれだけの人数を集められないけど、ハロー!プロジェクトという大きな力をお借りして、デビュー25周年という記念すべきタイミングにこの景色を見せていただけるなんて、このうえなく幸せです」(斉藤)
「改めて『ハロー!プロジェクトってすごいんだな、私たちはすごい場所にいさせてもらえたんだな』と実感しました」(村田)
復活のステージを観た感想として「やっと時代がメロン記念日に追いついた、記念すべき瞬間でした」と伝えると、3人は「いやいやいや~」と即座に謙遜する。また、「ポジティブな意味で“変な人たち”だったなと再認識しました」と付け加えると、村田は「“変な人たち”って最高の褒め言葉ですよね。うれしいです」と笑みを浮かべた。
全国7カ所・計14公演におよぶ15年ぶりの全国ツアーが8月9日にいよいよスタートする。ツアータイトルのように、大人になった“熟メロン”がどんなステージを見せてくれるのかにも期待したい。
「私たちも歳を重ねていれば、もちろんヲタモダチの皆さんも年を重ねているわけですよね。どの公演にもゲストとしてハロー!プロジェクトの後輩たちが出演してくれるので、おそらく新しいファンも来てくれるのかな。今から会場が一体になれるその瞬間が楽しみです。あとは私たちの体力次第かな(笑)」(斉藤)
「しかも、今度はライブハウスで距離も近いしね。私たちもヲタモダチに期待してますので!」(村田)
「おお、15年ぶりの挑戦状?(笑)」(斉藤)
「お互い年相応……って言ったらアレですけど(笑)、私たちもコンスタントに歌ってたわけではないし、それでも会場に来てくれる皆さんはきっと期待を持って集まってくださると思うので、そんな思いにちゃんと応えられるような、カッコいいメロン記念日でいたいなと思います」(柴田)
公演情報
メロン記念日'25 LIVE TOURー~熟メロン~
2025年8月9日(土)東京都 新宿ReNY
[第1部]OPEN 15:30 / START 16:00
[第2部]OPEN 18:30 / START 19:00
<出演者>
メロン記念日
ゲスト:竹内朱莉 / 譜久村聖
2025年8月17日(日)新潟県 NIIGATA LOTS
[第1部]OPEN 14:30 / START 15:00
[第2部]OPEN 17:30 / START 18:00
<出演者>
メロン記念日
ゲスト:竹内朱莉 / 譜久村聖
2025年8月24日(日)大阪府 梅田 BANGBOO
[第1部]OPEN 14:30 / START 15:00
[第2部]OPEN 17:30 / START 18:00
<出演者>
メロン記念日
ゲスト:竹内朱莉 / 譜久村聖
2025年9月6日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
[第1部]OPEN 14:30 / START 15:00
[第2部]OPEN 17:30 / START 18:00
<出演者>
メロン記念日
ゲスト:豫風瑠乃(つばきファクトリー) / 米村姫良々(OCHA NORMA)
2025年9月15日(月・祝)宮城県 darwin
[第1部]OPEN 15:30 / START 16:00
[第2部]OPEN 18:30 / START 19:00
<出演者>
メロン記念日
ゲスト:豫風瑠乃(つばきファクトリー) / 米村姫良々(OCHA NORMA)
2025年9月23日(火・祝)神奈川県 Yokohama Bay Hall
[第1部]OPEN 14:00 / START 14:30
[第2部]OPEN 17:00 / START 17:30
<出演者>
メロン記念日
ゲスト:西田汐里(BEYOOOOONDS) / 北原もも(OCHA NORMA)
2025年10月4日(土)福岡県 DRUM LOGOS
[第1部]OPEN 14:00 / START 14:30
[第2部]OPEN 17:00 / START 17:30
<出演者>
メロン記念日
ゲスト:西田汐里(BEYOOOOONDS) / 北原もも(OCHA NORMA)
記事初出時、「夏の夜はデインジャー!」のタイトル表記に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
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みんな2005年ハロコン夏の歌謡ショーを見て。 https://t.co/juljeUK3wH