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ナカジマノブ(人間椅子)と銅鑼。

愛する楽器 第16回 バックナンバー

人間椅子・ナカジマノブの銅鑼

和嶋慎治&鈴木研一をも魅了した大迫力のサウンド

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アーティストがお気に入りの楽器を紹介する本企画。第16回では人間椅子のナカジマノブ(Dr)に登場してもらい、愛用の銅鑼について語ってもらった。

取材・文 / 松永良平 撮影 / 阪本勇

銅鑼の印象=「Bohemian Rhapsody」

銅鑼についての愛を語るインタビューって世界的にも初かもしれない(笑)。銅鑼を使うプレイヤーは先輩方や世界中にいますけど、銅鑼だけのことをしゃべってるインタビューはなかなかないですよね。アンプを通さないアコースティックな楽器としては銅鑼の音が一番でかいんじゃないですかね? そもそも高校時代に僕がドラムを始めたきっかけも、電気を使わないでギターやベースよりドラムは大きな音が出るということに憧れがあったからなんですよ。それだけで非日常でしかないし、すごくロックじゃないですか。

僕の好きな1960、70年代のハードロックのドラマーはだいたいみんな銅鑼を使ってましたね。銅鑼を演奏してるドラマーを初めて見たのは、Kissのピーター・クリスです。西新宿にあった海賊盤の多いレコード屋さんのちっちゃいテレビで、Kissがどこかの国でやったライブ映像が流れていて、たまたまそのときにピーターを横から撮ってるシーンが映ったんです。そしたら、彼のドラムセットの後ろに銅鑼が置いてあって、ドラムソロのときにバシャーン!って叩いていて。

銅鑼の音自体を意識したのは、Queenの「Bohemian Rhapsody」です。あの曲の最後に「もう曲終わった?」と思ったくらいのタイミングで、バシャーンって音が鳴りますよね。もちろんKissのアルバム「Love Gun」に入ってる「Almost Human」で鳴っている銅鑼も、カーマイン・アピスやジョン・ボーナム(Led Zeppelin)が叩いてるのも意識してましたけど、銅鑼単体としての印象が強かったのは、やっぱり「Bohemian Rhapsody」の最後の音です。

本物の銅鑼に興奮

銅鑼を手に入れたのは人間椅子に加入してからです。僕の前のドラマーは銅鑼を持っていて、バンドでも使っていたんです。僕は加入した時点では持ってなくて、いつかは持ちたいなあと思ってました。和嶋くん(和嶋慎治 /G, Vo)も研ちゃん(鈴木研一 / B, Vo)も「いつかは銅鑼を」と僕にずっと言い続けてたんです。ようやく自分の銅鑼を買ったのは2013年です。その年の5月に開催された「OZZFEST JAPAN 2013」で、初めて自分のドラムセットをツーバスにするにあたって、銅鑼も欲しいなと思いまして。

銅鑼を買ったのは、千葉県の柏市にあったドラム専門の「AMERICAN GROOVE」(2015年に閉店)という楽器店さんでした。実は偶然にも、そのお店を1人で切り盛りしていた店長さんが僕の親戚だったんですよ。店長の奥さんが、僕の親父の従妹にあたる人で、年齢も僕と近くて、子供の頃によく遊んでた人だったんです。本当に偶然なんですけど、お正月に親戚の集まりがあった帰り道に、僕の車の前を「AMERICAN GROOVE」ってロゴがボディに描かれた車が走ってたんです。「おっ」と思って信号待ちで横に並んで助手席を見てみたら親父の従妹が乗っていて、お互いにびっくりしたわけです。それで、その場で旦那さん(店長さん)を紹介してもらって、すごく仲良くなりました。「実は、ツーバスにするために、今所有してるセットと同じシェルのバスドラと銅鑼を探してるんだよね」と言ったらその店長さんが「任せてください!」と探してくれたんです。

結局、銅鑼は「OZZFEST」には間に合わなかったんですけど、人間椅子のレコーディングで使いたいなと思って、「サイズはできれば32inchから36inchの間のものが欲しい」とAMERICAN GROOVEにお願いしたんです。そしたら希望通りのいいやつを探してくれて、そのときにSABIANの36inch(約90cm)のチャイニーズゴングを買いました。実を言うと、銅鑼購入前のアルバムでも銅鑼の音がするんですけど、それはサンプリングした音だったんです。銅鑼が届いたときはちょうどレコーディング作業中だったんで、スタジオにセットしたときに、研ちゃんも和嶋くんも代わる代わる、まるでトリップしたかのように叩いてましたね(笑)。やっぱり実際に本物の銅鑼を叩いたほうがサンプリングした音源よりいい音がしました。僕らは「でかい音がちょっと快感」みたいなところがあるので、2人がガンガン銅鑼を叩いているあの光景はちょっと面白かったですね。

銅鑼は今もいくつものメーカーで生産され続けています。サイズも競輪とかでジャーンって鳴らすタイプの小さなものから、40inch(直径約1m)を超えるの大きなものまでいろいろです。むしろ僕が銅鑼を探すときに特にこだわったのは、銅鑼を吊るすスタンドの枠の形です。当時のハードロックのドラマーって、だいたい銅鑼の枠が丸いんです。でも今、銅鑼を買おうと思って調べると、買えるのはだいたい四角い枠。僕はジョン・ボーナムとかPink Floydのニック・メイスンが叩いていた丸い枠の銅鑼に憧れてたので、丸い枠を見つけてもらったときはうれしかったですね。

経年変化する鳴りを楽しむ

最初に買った銅鑼を今も使ってます。新品だったんで、最初に叩いたときは音がガシャーンって暴れるような感じがありました。レコーディングエンジニアと相談して、ちょっとミュートすることにするなどいろいろ試した結果、今の音になってます。銅鑼って使っていくうちにちょっと錆びるというか、緑青が付着するんですよ。僕はあえてそのサビを取らないようにしてます。モータウンやアトランティックの昔のレコードを聴くと、シンバルの音が金ピカな音じゃなくて、ちょっと古めかしくて渋い音がするんですけど、それがいいんですよね。僕の銅鑼もそういう感じになってほしい。使っていく内にちょっとサビたり歪んだりして、この銅鑼も銅鑼としての経験を積んでいくんだと思うんです。今は、ローも出るし、ハイも欲しい感じで聴こえる、ちょうどいい鳴りをしてますね。

銅鑼を叩く上での苦労はあまり感じたことないんですけど、しいていうなら注意していることはあります。すごく大きな音が出るから、本気で力一杯叩いちゃうとほかの音が聴こえなくなって演奏できなくなるケースがあるんです。あまり強く叩くと、僕自身も銅鑼の音しか聴こえなくなっちゃう(笑)。でも弱く叩いてもいい音はしないし、「せめてこれくらいの音量では叩きたい」という気持ちもある。最新アルバム「新青年」(2019年6月発売)に入ってる「無情のスキャット」のイントロは銅鑼とギターのアルペジオだけという構成なので、ライブではギターの音がかき消されないようにPAさんに調整してもらってます。

頭突きしてみた「痛い! 流血する!」

練習はそんなにしたことはないです(笑)。でもレコーディングのときや、ワンマンライブの本番前に、どの辺を叩いたらいい鳴りになるのかとか、どのくらいの力で叩けば一番銅鑼らしい音がするのかとか、やりながら研究してますね。フェスのときとかは、お客さんが観てる前でサウンドチェックをやりますよね。そういうときに銅鑼をドーンって叩くと、お客さんが「うおー!」って盛り上がる。あれはうれしいですね。やっぱり普通に生活してたら、銅鑼の音をまじまじと聴く機会なんてないですからね(笑)。

ライブでよくやる銅鑼の連打は、最初はうまくできませんでした。やっていくうちにコツをつかんできた感じです。銅鑼用のマレットは普通のスティックと違って重いから、最初は連打することをあまり想像できなかったんです。あるとき、「『なまはげ』(人間椅子の楽曲)の真ん中で、ノブが~~」なんて研ちゃんと和嶋くんが言い出して(笑)。僕は心の中で「マレットは重たいからうまくできるかな……」と思いました。でも「やってみたら面白いかも」とも思ったので、実際に連打してみたんです。なので、銅鑼の連打は僕のアイデアではなく人間椅子みんなで出たアイデアですね。ジョン・ボーナムやトミー・アルドリッチは肘や拳で叩いてましたし、確か……ボブ・ロンディネリは頭突きで音を出してたことがあると聞きましたけど(笑)。僕もリハで一瞬だけ頭突きしてみたんですが、とてもじゃないけど無理でした! 痛い! 流血する! 下手したら死んじゃうかも……と思って、さすがにそれは嫌だなと(笑)。

銅鑼の連打と言えば、まず思い出すのはPink Floydの「Pink Floyd Live at Pompei」というイタリアの遺跡でのライブドキュメンタリー作品の中で、メンバーが銅鑼を叩いてるシーンですね。僕が一番好きな銅鑼の連打がそのシーンなんです。その映像では、ドラムのニック・メイスンじゃなくて、なんとロジャー・ウォーターズ(B)が銅鑼を叩いてるんですよ。しかも、太陽をバックに銅鑼が湾曲するくらいにガンガン連打してて、すげえカッコいいです。特に太陽と重なってシルエットになったシーンはグッときますね。このシーンの銅鑼も丸い枠なんです。銅鑼に興味を持ってもらえたら、あの映像はぜひ観てほしいですね(笑)。

ナカジマノブ(人間椅子)

東京都出身。1988年に源学らとGENを結成し、1989年に「三宅裕司のいかすバンド天国」で2代目イカ天キングに選ばれる。1996年にドミンゴスに加入し、2003年まで同バンドで活動した。2004年6月、人間椅子にドラマーとして加入。現在は人間椅子のほか、ドミンゴス、Theゆうたろうバンド、最鋭輝隊などでもライブ活動を行っている。

※記事初出時、本文中に誤字がありました。訂正してお詫びいたします。

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