「ナミビアの砂漠」河合優実と山中瑶子がカンヌでの評価を述懐、山村浩二も新作語る

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東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の特集上映「カンヌ監督週間 in Tokio 2024」にて、山中瑶子監督作「ナミビアの砂漠」と山村浩二監督作「とても短い」のトークイベントが12月14日にそれぞれ行われた。

「カンヌ監督週間 in Tokio 2024」の「ナミビアの砂漠」トークイベントにて、左からジュリアン・レジ、山中瑶子、河合優実

「カンヌ監督週間 in Tokio 2024」の「ナミビアの砂漠」トークイベントにて、左からジュリアン・レジ、山中瑶子、河合優実

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「ナミビアの砂漠」は河合優実の存在が一番大きかった

「ナミビアの砂漠(Desert of Namibia)」場面写真 (c)2024「ナミビアの砂漠」製作委員会

「ナミビアの砂漠(Desert of Namibia)」場面写真 (c)2024「ナミビアの砂漠」製作委員会[拡大]

本イベントはカンヌ国際映画祭のセレクションである「監督週間」の最新ラインナップをいち早く鑑賞できる特集上映会。「ナミビアの砂漠」のトークには主演・河合優実、監督の山中、カンヌ監督週間のアーティステックディレクターであるジュリアン・レジが出席した。第77回カンヌ国際映画祭の監督週間部門でFIPRESCI賞(国際映画批評家連盟賞)を受賞した「ナミビアの砂漠」。当時27歳だった山中が女性監督として史上最年少で同賞を受賞した同作は、タイプの違う交際相手を次々と変えながらも、乾いた心が潤うことはなくもがき苦しむ21歳の主人公・カナの心情を生々しく捉えた青春ドラマだ。

河合優実

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同映画祭でここまで評価されるとは予想もしていなかったという山中は「相性もあるのかなと思います。映画祭に出品したあとジュリアンとリモートで話したのですが、『喧嘩のシーンはもっと長くてもよかった』と言われたのには驚きました(笑)。もっと思い切ってもよかったのかと学びがありました」と振り返る。一方、受賞の知らせを聞いて思わずガッツポーズしたという河合は「跳び上がるくらいの喜びだった」と笑顔を見せ、「映画祭めがけて作るという作戦もあると思いますが、私たちはそこが出発点ではなかったので、正直『映画祭には出したいね』くらいの気持ちでした。ただ、撮影が終わった日、この映画に羽根が生えて、どこか遠いところへ羽ばたいていくようないい予感があったので、それが正夢になりました」と心情を明かした。

山中瑶子

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左から山中瑶子、河合優実

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レジから「短期間でよく脚本ができましたね。アイデアはどのようにして生まれたのですか?」と質問されると、山中は「オリジナル作品は3年ぶりだったので、その間に溜まった問題提起や意識などを“マインドマップ”にしてなんとなく方向性を決めていったのですが、結局、河合さんを起用してどんなキャラクターが見てみたいか、というところが一番大きかったと思います」と河合の存在がポイントだったことを強調。もともと河合が俳優になる以前、山中の監督作「あみこ」に衝撃を受け、「あなたの作品に出演したい!」と直訴したのが縁となった。河合は「オファーを受ける前に、山中監督と身の回りのこと、現代に生きている私たちと共通する女の子のこと、人と人とのパワーバランスなど、いろんなことを雑談の中で共有し合い、そのあとに本作の脚本を読ませていただいたので、カナ役にはわりと自然に入っていけました」と述懐した。

山村浩二「若い才能の中に混ぜてもらえてうれしかった」

「とても短い」場面写真 2024(c)Yanai Initiative

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山村が手がけた新作アニメーション「とても短い」は、東京を舞台に、ある男の一生と「だ」という音から始まる言葉の数々が縦横無尽に画面を駆け巡るアニメーションが日本文学と合体した異色作。米国人の翻訳家が企画者となり、古川日出男の原作が古川本人の朗読とともに映像化された。

「カンヌ監督週間 in Tokio 2024」の「とても短い」トークイベントにて、左からジュリアン・レジ、山村浩二

「カンヌ監督週間 in Tokio 2024」の「とても短い」トークイベントにて、左からジュリアン・レジ、山村浩二[拡大]

第77回カンヌ国際映画祭の監督週間・短編部門に「とても短い」が選出されたことについて、山村は「若い才能の中に混ぜていただいてうれしかったです」と喜びを口にする。独特のグラフックにより言葉と体が融合した本作。山村は「身体性みたいなことは考えていて、言葉も体があると思いますし、人間も言葉によってアイデンティティが形成されていくもの。心を概念化して理解していくわけですから、結局、言語の影響を知らず知らずのうちに受けていると思うので、われわれの体も言語からできている、というイメージですね。特に漢字は文字自体が形になっているので」と解説する。

山村浩二

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客席からトークに参加する古川日出男

客席からトークに参加する古川日出男[拡大]

また日本語で勝負したことに関し、山村は「さほど(日本語)が問題になるとは思っていませんでした。一番古いアニメ『頭山』の音声を聞いたときに、『これを翻訳するのは無理だ』と。逆にあの声を聞けば興味を持ってもらえるんじゃないかということで字幕対応にした経緯があったので、今回も全く心配していませんでした」と自信をのぞかせた。なおこの日は「とても短い」の原作者である古川も観客として来場。途中、ジュリアンからマイクを向けられると「東京に住んでいたり、東京を旅したりしている人は、それぞれ別々の東京のイメージを持っている。現実の東京とはズレていて、そのズレの中にいろんな物語があるし、またそれらの中に絶望と救済があるんじゃないか……そういうことを綴った短編集でした」と小説に込めた思いを語った。

「カンヌ監督週間 in Tokio 2024」は12月19日まで開催。

カンヌ監督週間 in Tokio 2024

2024年12月8日(日)~19日(木)東京都 ヒューマントラストシネマ渋谷
料金:一般 2000円 / 大学 1500円 / 小中高 1000円 / シニア 1300円 ほか

ラインナップ一覧(各2回上映)

  • これが私の人生(This Life of Mine)監督:ソフィー・フィリエール
  • ナミビアの砂漠(Desert of Namibia)監督:山中瑶子
  • イースト・オブ・ヌーン(East of Noon)監督:ハラ・エルクシ
  • イート・ザ・ナイト(Eat the Night)監督:キャロリーヌ・ポギ、ジョナサン・ヴィネル
  • ゲイザー(Gazer)監督:ライアン・J・スローン
  • 化け猫あんずちゃん(Ghost Cat Anzu)監督:久野遥子、山下敦弘
  • グッド・ワン(Good One)監督:インディア・ドナルドソン
  • モングレル(白衣蒼狗 / Mongrel)監督:チャン・ウェイリャン 共同監督:イン・ヨウチャオ
  • ジ・アザー・ウェイ・アラウンド(The Other Way Around)監督:ホナス・トルエバ
  • ユニバーサル・ランゲージ(Universal Language)監督:マシュー・ランキン
  • 山村浩二 監督短編集「とても短い」

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