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第71回カンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルムドールを受賞した本作は、犯罪でしかつながれなかったある一家の“許されない絆”を描く人間ドラマ。父・柴田治をリリー・フランキー、治の妻・信代を安藤サクラ、信代の妹・亜紀を松岡茉優、祖母・初枝を樹木希林、治の息子・祥太を城桧吏、柴田家で暮らすことになる少女ゆりを佐々木みゆが演じた。
英語通訳付きで行われた同イベント。外国人の観客からの「家族をどのように解釈するか?」という質問に是枝は「家族とは何か?という答えを出すためにこの映画を撮ったわけではありません。自分も考えながら撮っているし、登場人物たちも手探りしていると思う。曖昧になってしまうのですが、今回はたぶん、ともに過ごす時間が終わったあと、彼らの中に記憶として残っているものが“家族”なのかなと思った。一緒に暮らすことができなくなってもなおつながっているという意識の中に、見えない形で“家族”が立ち上がってくる。そんな話にしたいと思いました」と答える。
劇中で起こる出来事はすべて脚本上決まっていたのか、それとも撮影する中で生まれたのかを聞かれた是枝は「(キャストとともに)作っている中で立ち上がってくるストーリーが一番面白いですね」と即答。続けて、撮影中に安藤から「治さんは祥太に自分のことを『父ちゃん』と呼べと言うけど、信代はそういうことを一度も言わない。それを信代はどう思っているのか?」と質問されたことをきっかけに、信代と祥太がラムネを飲みながら商店街を歩くシーンを作ったと明かす。そして「サクラさんの問いかけがなかったらああいったシーンは生まれなかった。スタッフもキャストも大変だと思うけど、キャッチボールする中で映画が動いていくのが面白い」と手応えを語った。
キャストを選ぶ基準を問われた是枝は「松岡さんは、いろいろなドラマや映画を観て素晴らしいと思って声をかけた。でもほかのお芝居を見てキャストを決めることは多くない」と回答。さらにこの舞台挨拶の直前に登壇していたフランス映画祭2018のオープニングセレモニーでのことを振り返り、フェスティバル・ミューズの常盤貴子の名前を挙げて「団長のナタリー・バイがフランス語で開会宣言をしてから、常盤さんが同じことを日本語で言うはずだったんですが、通訳さんが先に全部日本語に訳してしまった。常盤さんの言うことがなくなっちゃったわけ(笑)。そこで彼女、和服でカッコよく決めていながら、すごく大きな口を開けて大笑いしたんですよね。……そういうのだね。そういうのを見ると『こういう笑い方をする役を書きたいな』という欲が出てくる」と解説した。
終盤、舞台挨拶の終了を残念がる観客に対して是枝は「たぶんこれからカップ麺にコロッケを入れて食べようと思っている方も少なからずいると思うので……あんまり遅くに食べると翌日に残りますから、このへんにさせていただきます」と呼びかけて笑いを誘う。6月22日から上海国際映画祭に出席し、その後フランス・パリへ向かうそうで「このあとしばらく日本を離れます。いろいろと新しいチャレンジをしようと思っています。そんな発表も、もうしばらくしたらできると思いますので、期待してお待ちください」と次作への動きを匂わせる。
また6月21日は佐々木の誕生日であることから、是枝は「『万引き家族』のグループLINEがあるのですが、そこでみんなで『誕生日おめでとう』と言い合っています。みんなバラけていくのが寂しいみたいで、チャンスがあるとそこ(LINE)に集まるのが、離れて暮らす家族みたい。こんな関係がずっと続くといいなと思っています」とキャストたちとの交流を明かし、舞台挨拶を締めくくった。
6月20日までに動員170万人、興行収入20億円を突破した本作。現在も全国325館で上映中だ。
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