“世界のクロサワ”を検証、ポスター展「旅する黒澤明」を研究員・岡田秀則が解説

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現在、展示企画「国立映画アーカイブ開館記念 没後20年 旅する黒澤明 槙田寿文ポスター・コレクションより」が東京・国立映画アーカイブにて開催中。本日4月24日にプレス向けの説明会が行われた。

「国立映画アーカイブ開館記念 没後20年 旅する黒澤明 槙田寿文ポスター・コレクションより」の様子。

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「国立映画アーカイブ開館記念 没後20年 旅する黒澤明 槙田寿文ポスター・コレクションより」の様子。

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黒澤明研究家・槙田寿文の200点を超えるコレクションから、30カ国にわたる映画ポスター84点を中心に、黒澤明の国際性に光を当てる同展覧会。説明会では国立映画アーカイブの主任研究員である岡田秀則が本展の見どころを語った。

岡田秀則

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黒澤明が「羅生門」で獲得した金獅子像のレプリカ。

黒澤明が「羅生門」で獲得した金獅子像のレプリカ。[拡大]

岡田が「昔から“世界のクロサワ”とよく言われるが、それを具体的に検証したものはあまりなかった」と語るように、本展ではポスターの側面から“クロサワ”の世界的な広がりを紹介する。そのため展示はデビュー作「姿三四郎」ではなく、1950年に公開され、第12回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲得した「羅生門」のポスターからスタート。受賞直後の1952年に西ドイツで制作されたポスターには黒澤や主演の三船敏郎の名前は記されていない。当時は人物や衣装、建物のビジュアルなどで日本のイメージを強調することが重視されていたという。また同年のアメリカのポスターでは本作の受賞歴を押し出す形で紹介がなされていた。ここでは製作会社の大映が関係者向けに制作した金獅子像のレプリカも見ることができる。

「国立映画アーカイブ開館記念 没後20年 旅する黒澤明 槙田寿文ポスター・コレクションより」の様子。

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続いては「酔いどれ天使」「静かなる決闘」といった「羅生門」以前の作品のポスターが。そして1952年に公開された「生きる」のフランス版ポスターなどを経て、「七人の侍」のポスター14点が待ち構える。西ドイツのハンス・ヒルマンが映画のラストの野武士や侍、百姓が乱闘を繰り広げる場面を表現したという2385mm×3324mmの特大ポスターやスペインで制作された西部劇風のポスター、イギリスの映画館のお抱えポスター画家が描いたというものも。そのほかイランやタイ、スイス、アルゼンチンなど各国のポスターを見ることができる。

「国立映画アーカイブ開館記念 没後20年 旅する黒澤明 槙田寿文ポスター・コレクションより」の様子。

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基本的に当時のデザイナーは、映画のスチール写真をもとにポスターを制作していた。岡田曰く白黒映画の場合は制作者が独自に色付けを行うため、そこに個性が表れるという。中でも岡田が「絵画性を重んじる」と語るのはイタリアのポスターだ。カルラントニオ・ロンジが制作した「蜘蛛巣城」のポスターでは、映画のラストで三船演じる主人公が無数の矢を浴びるシーンが再現された。岡田は「ポスターは映画のエッセンスを正確に捉えたものや、デザイナーが自身の表現を押し通したものなど多種多様。ポスターにはそのときの各国の映画の見方も影響しており、その国の文化や慣習が垣間見れる」と解説。そして「日本映画で世界に知られた監督は多くいるが、ここまで世界的に広がりを持つ監督は黒澤だけではないか。それはポスターの分布が教えてくれる」と続けた。

「国立映画アーカイブ開館記念 没後20年 旅する黒澤明 槙田寿文ポスター・コレクションより」の様子。

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もともと画家志望だった黒澤が、スタッフに演出意図を伝えるため描いていたイメージボードがポスターに活用されることもあった。「影武者」をモチーフにした第36回カンヌ国際映画祭の公式ポスターや、「夢」に登場する老人が描かれた「黒澤明デッサン展」のポスターなども展示されている。

黒澤明が降板するまで「トラ トラ トラ!」の撮影時に使われていたスタッフジャンパー。

黒澤明が降板するまで「トラ トラ トラ!」の撮影時に使われていたスタッフジャンパー。[拡大]

会場には海外のプレス資料や上映プログラム、黒澤に関する図書、映画館に置かれていたロビーカードなども。ポスター以外の展示で岡田が「目玉」と語るのは、黒澤が日米合作として取り組むも撮影の途中で降板してしまった「トラ トラ トラ!」のスタッフジャンパーだ。赤色のジャンパーには黒澤プロダクションと製作会社である20世紀フォックスのロゴが記されていた。

「国立映画アーカイブ開館記念 没後20年 旅する黒澤明 槙田寿文ポスター・コレクションより」は、9月23日まで開催。会場では岡田による論考「『言いきる』──ポスターに見る黒澤明の至芸」を収めたNFAJニューズレター第1号も1部310円で販売されている。なお国立映画アーカイブでは8月より開催する特集「シネマ・エッセンシャル(仮題)」で黒澤の監督作を上映する予定だ。

国立映画アーカイブ開館記念 没後20年 旅する黒澤明
槙田寿文ポスター・コレクションより

開催中~2018年9月23日(日)東京都 国立映画アーカイブ
入館料:一般 250円 / 大学生 130円
※高校生以下および18歳未満、シニア、障害者(付添者は1人まで)、MOMATパスポート所持者、東京国立近代美術館および国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズは無料

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