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矢崎仁司のスキャンダラスな新作がゆうばりで上映「やりたいことを思い切りやった」

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矢崎仁司

矢崎仁司

「三月のライオン」「無伴奏」の矢崎仁司が監督を務めた「スティルライフオブメモリーズ」が、3月17日深夜にゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018にて上映。矢崎と企画・製作の伊藤彰彦が舞台挨拶に登壇した。

フランスの画家で写真家のアンリ・マッケローニによる、女性器をモチーフにした作品群と彼の愛人関係から着想された本作。安藤政信演じる新進気鋭の写真家・春馬と彼に自身の性器を撮らせ続けるキュレーター・怜、妊娠中である春馬の恋人・夏生の姿が描かれる。

本作を「皆殺しの天使」「昼顔」などで知られるシュルレアリスムの鬼才ルイス・ブニュエルの処女作「アンダルシアの犬」になぞらえる矢崎。「観客に向かって石を投げなきゃいけないと思って、ポケットに石を詰め込もうかとも考えました」と、かつてブニュエルが自身の前衛的な作風に観客が激怒したときの用心として小石を懐に忍ばせていたというエピソードを絡めながら挨拶し、「最後まで観ていただき本当にありがとうございます。皆さんを抱きしめたい」と続けた。

矢崎が「やりたいことを思い切りやらせていただいた映画」、伊藤が「おそらく日本で上映できない」と語るほどスキャンダラスな内容となっている本作。「世界各国の映画祭でないと上映できない」と半ば日本での上映をあきらめていたという伊藤は、「大阪アジアン映画祭、そしてこのゆうばり映画祭のディレクターの方に『ノーカットでうちでやりましょう』と言っていただいて」と出品の経緯を明かす。そして「オリジナル版の上映できる数少ない機会をいただき、ゆうばり映画祭には心から感謝申し上げたい」と伝えた。

マッケローニが愛人の女性器を2年間にわたって撮り続けた写真集「とある女性の肉体写真集成百枚 ただし、二千枚より厳選したる」に衝撃を受けたという伊藤は、「こんな光景は見たことがない。2年間も撮ったり、撮られたり。それがどういった時間だったのか。これを映画にしたかった」と企画のきっかけを明かす。そして10年ほどを経た後、矢崎の監督作「ストロベリーショートケイクス」を鑑賞して「この監督にお願いすれば、2年間の謎が解けるんじゃないか。監督の作品に漂う気品と、死の匂いのする生がマッケローニの作品に似通っていた」と考えたと言う。

「ストロベリーショートケイクス」にも出演した安藤を、矢崎は「ひさびさにお会いしたときは思わず抱き合ってしまいました。この作品は安藤さんの忍耐力や許容力、品がなかったら成立しなかった」と称賛。またオーディションで選ばれた怜役の永夏子と夏生役の松田リマについては「自分の奥さんには何を言ってるかわからないとよく言われるんですが(笑)、お二人とは言葉が通じる瞬間がたくさんあった。本当に素敵な女性たちに出会えました」と語った。

本作で映し出される女性器の写真は、伊藤が「マッケローニの作品を超えてしまった」と話す写真家・中村早によるもの。伊藤に促され、中村の個展を訪れた矢崎は「そのときは男性のヌードの個展。その後、中村さんは花の写真、そして性器を撮られるようになった。女性の性器を撮られる方が花を写すようになることは多いかもしれませんが、花から女性器に移行されたのが興味深かった」と述べる。

今後の劇場公開について伊藤は、「この作品は監督の叡智と2人の女優の勇気で生まれた作品。修正は入れたくない。ですが日本の法律上修正が入るかもしれません。できるだけオリジナルを残すために闘う」とコメント。さらに修正版を上映せざるを得なかったとしても「この作品の魂は残ります」と語り、矢崎は「いろんな映画があっていいと思うんです。それこそこの映画は“ファンタスティック”。冬季オリンピックのたびにゆうばりに参加してるんですが、来年もぜひ参加したい」と期待を込めた。

「スティルライフオブメモリーズ」は、7月21日より東京・新宿K's cinemaにて公開。その後、関西で順次公開される。

※「スティルライフオブメモリーズ」はR18+指定作品

(c)2018Plaisir/Film Bandit

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