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小さなどら焼き屋が舞台の「あん」、カンヌのある視点部門に選出

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左から河瀬直美監督、樹木希林。(c)2015映画『あん』製作委員会/COMMEDESCINEMAS/TWENTYTWENTYVISION/ZDF-ARTE

左から河瀬直美監督、樹木希林。(c)2015映画『あん』製作委員会/COMMEDESCINEMAS/TWENTYTWENTYVISION/ZDF-ARTE

現地時間5月13日から24日にかけて行われる第68回カンヌ国際映画祭の選出作品が追加発表され、日本の「あん」がある視点部門にオープニングフィルムとして正式出品されることがわかった。

ドリアン助川の同名小説を原作とする「あん」は、小さなどら焼き屋で働く老女と彼女を取り巻く人々が織りなす人間ドラマ。2007年に「殯の森」でカンヌ映画祭のグランプリを受賞した河瀬直美監督がメガホンを取った。主人公を演じる樹木希林と彼女の孫娘である内田伽羅が、初の本格共演を果たしたことでも話題を呼んでいる。

今回は4部門9作品が発表され、コンペティション部門にマイケル・フランコの「Chronic(原題)」、ある視点部門にアピチャッポン・ウィーラセタクンの「Cemetery of Splendour(英題)」、ミッドナイトスクリーニングにはギャスパー・ノエの「Love(原題)」と、注目作品が目白押しとなっている。

なお今回の出品決定に際して、河瀬監督や出演者、カンヌ国際映画祭名誉会長ジル・ジャコブからコメントが届いている。

「あん」カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品に際してのコメント

河瀬直美(監督)

継続的に良質な作品を創り続けること。それはどんどん山が高くなることです。しかし、それでも、映画を創り続けることをまっとうし、その先に、今回の2年連続カンヌの公式招待を、しかも、オープニングという特別枠でいただけたことに、誇りを感じます。「あん」はこの時代に生まれるべくして生まれ、人に伝わり、歴史に名を遺すのだと、原作を読んだ時に感じました。そんな想いを映画にのせて、世界の人々に見ていただけることに、今、喜びを隠せません。素晴らしいスタッフとともに、こういった作品の監督であれた幸せを噛み締めています。ありがとうございました。

樹木希林

こうして「あん」がカンヌ国際映画祭のオープニングを飾り、映画本来の「鑑賞」をして頂ける特別枠に選ばれたことが喜ばしいです。また日本人でこういう監督が出てくることがたくましくて頼もしい。「あん」は 一人歩きしていく。多くの人に観てもらいたい作品です。

永瀬正敏

驚きました、心から光栄に思います。河瀬監督や樹木さん、すでに天国にいらっしゃる元ハンセン病患者さん方や沢山の皆さんの想いが海を渡る、、、本当に嬉しいです。

ドリアン助川(原作者)

河瀬直美監督により映像作品として創造された「あん」は、それぞれの生の意味を問い直す人類共通のテーマを内包している。世界中が注目するカンヌ国際映画祭で本作が上映されることは、この秘められたテーマと独自の視点があるからこそ、たいへんな僥倖であり、またふさわしいスタートなのだと思う。私はこの物語を書く際、起点となる話をして下さった元ハンセン病患者の御夫婦とともに、映画「あん」の船出を客席から見守りたい。

秦基博(主題歌)

「あん」、カンヌ正式出品決定、おめでとうございます。生きることの意味を問いかけるこの美しい映画が、国境も越え、たくさんの人の元へ届くことが今から楽しみでなりません。主題歌というかたちで、少しでも携わらせて頂いたものとしても本当に幸せです。

ジル・ジャコブ(カンヌ国際映画祭名誉会長)

大変素晴らしい作品でした。河瀬作品は全て好きですが、本作は、非常に心に触れる謙虚さがあり、また物語の語りとしてはパーフェクトの高みへと洗練されていました。日常の営みの細部に触れ、3世代を扱い描いていることに好感を持ちました。指に障害を抱えた年配の女性・徳江(樹木希林)をスクリーン上にこのように存在させられたことを誇りに思うべきです。彼女のラストのシーンは特に感動的でした。千太郎(永瀬正敏)、ワカナ(内田伽羅)の2人も非常に良かったです。この歳になってまで、甘露煮のお豆の作り方に興味が湧くなど思いもしませんでした。それは、多くの人が知らないある田舎町の特有の風習や習慣が、映画を通して魅了する。そういうもののひとつでした。この作品に集った才能、河瀬監督のそれは特に素晴らしく、世界に伝わるユニバーサルな作品であり、ほぼ完璧な作品を創られていると思います。

※記事初出時、内容に一部誤りがありました。お詫びして訂正します。

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