![月刊おもしろ映画宣伝2025年1月号](https://ogre.natalie.mu/media/news/eiga/2025/0203/vinyltacky202501.jpg?impolicy=hq&imwidth=730&imdensity=1)
ビニールタッキーの「月刊おもしろ映画宣伝」 2025年1月号 [バックナンバー]
楽しい映画は楽しく、真摯な映画は真摯に…シンプルな宣伝が一番心に届きやすい
ときには飛び道具もいいけれど
2025年2月7日 19:30 4
映画会社は、日々工夫をこらし、作品の魅力をPRしようと努力している。時には評論家や俳優が真面目に作品の魅力を語り、時には他ジャンルとコラボし客層の拡大を図り、時にはダジャレやこじつけでSNSでのバズりを狙い……。そんな施策を日々ウォッチしている“映画宣伝ウォッチャー”ビニールタッキーが、前月気になった映画の記事についてコメントする連載が、「月刊おもしろ映画宣伝」だ。
今月取り上げたのは「
文
「月刊おもしろ映画宣伝」1月号をお届けします。「おもしろ映画宣伝」とは、海外の映画を日本で宣伝する際に発生する面白いPRイベントや不思議なコラボなどの案件をまとめて総称するために私が勝手に名付けた名前です。このコラムはその月にあったおもしろ映画宣伝をピックアップする連載コラムです。今月もご紹介していきましょう!
「ディックス!! ザ・ミュージカル」
A24初のミュージカル映画「ディックス!! ザ・ミュージカル」の公開を記念し、マンガ家・漫☆画太郎とのコラボレーションポスターが解禁された。
2025年一発目のおもしろ映画宣伝はこのおめでたいポスターからスタートです! キモカワなクリーチャーとお父さんが抱き合う姿に「愛こそすべて」のキャッチコピーが素敵です。鮮やかなレインボーの背景がこの映画のクィアな要素を表しているようでグッときます。A24と漫☆画太郎先生の名前が並ぶということのインパクトも含めてとても好きなポスターです。
「Lahn Mah(原題)」
英題は「How to Make Millions Before Grandma Dies」。邦題は未定で、近年の洋画興行の不振を背景に“邦題決定”試写会の実施が決まった。1月22日に東京・アキバシアターで行われる最速試写会にて鑑賞後にアンケートを行い、集計結果をもとに邦題を決定するという新たな試みとなる。
これは本当に新たな試み! 洋画の不振についてはよく語られますが、具体的な対策として「邦題をみんなで決める」というアイデアが出たこと、そしてそれが実現したことに驚きました。確かに邦画に比べるとハードルが高い洋画に対して、こういう試みで観客との距離感を縮めるというのはナイスアイデアだと思いました。ただ状況を悲観するのではなく思いついたことをとにかくやってみることの大切さをこの宣伝から感じました。
「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」
パレスチナ人とイスラエル人の若手監督によるドキュメンタリー映画「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」の日本版予告編が、YouTubeで解禁された。ナレーションは俳優の池松壮亮が担当した。
ドキュメンタリー映画「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」のナレーションを池松壮亮さんが担当。このコラムでは常に“タレントナレーション予告編”を追ってきていますが、今回は池松さんの真摯なコメントも紹介されていて印象に残ります。このような形で注目を集めるのも大切な宣伝ですね。
映画「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」予告編(ナレーション:池松壮亮)
「ドマーニ! 愛のことづて」
戦後の荒廃したローマで生きる市民と権利を渇望する女性たちの姿を描いたイタリア映画「ドマーニ! 愛のことづて」の予告編とポスタービジュアルが解禁。ナレーションを連続テレビ小説「虎に翼」の伊藤沙莉が担当している。
こちらの予告編のナレーションは伊藤沙莉さん。戦後のローマの男尊女卑的な社会で権利を求める女性たちの物語ということで「虎に翼」の伊藤沙莉さんが担当するのは的確な人選だと思います。伊藤さんのナレーションも悩める主人公デリアに寄り添うような語り口でとても印象に残ります。
映画「ドマーニ! 愛のことづて」予告編
「ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件」
昨日1月16日に都内で行われた、香港映画「ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件」のトークショー付き特別試写会に、みなみかわとの専業投資家のテスタが登壇。みなみかわは昨年、妻が立ち上げた合同会社ナンセ所属となり、またテスタも年末放送の「芸人報道」(日本テレビ系)でナンセへの所属が発表されている。
どのようなトークが展開されるんだろうと思っていたら、みなみかわさんが「インファナル・アフェア」が大好きということでトニー・レオンの魅力を語っているのが印象的でした。また、金融詐欺の物語ということで実際の投資被害の話が出たり、投資をする際に大切な心構えの話などが展開されてためになるイベントとなっていました。やはりその映画に出演している俳優のファンの方が語るトークイベントは楽しいものですね。
「ウィキッド ふたりの魔女」
高畑と清水の参加は本国によるオーディションを経て決定した。本編映像は、高畑が歌う「ザ・ウィザード・アンド・アイ」、清水が歌う「ポピュラー」、初対面のシーンを収めた「ふたりの出会い」が公開。日本語吹替版の制作では、台詞演出を三間雅文、音楽プロデューサーを蔦谷好位置、歌唱指導を高城奈月子と吉田華奈が担った。
ここ最近海外のミュージカル映画大作が定期的に日本公開されていますが、そのたびに丁寧に作り込まれた日本語吹替版が作られることに喜びを感じます。今回も舞台で活躍する
「野生の島のロズ」×劇場版「僕とロボコ」
“ロボコラボ”ビジュアルには、「野生の島のロズ」のポスタービジュアルにシンクロするように、劇場版「僕とロボコ」に登場する自称・高性能メイド型ロボットOMのロボコが野生の島を駆け回るさまが収められた。ニョンタや熊八といった動物キャラクターがロボコを囲んでいる。「全膝No.1!」というコピーも添えられた。
これまたインパクト大なコラボポスターが来ました。「野生の島のロズ」と劇場版「僕とロボコ」がロボつながりということでコラボ。しかも「僕とロボコ」側が完全に寄せている……というかロズをそのままロボコに置き換えたパロディポスターのようなデザインになっていますがちゃんと公式仕事であることに驚きます。これもロボコという作品の役得という感じです。
「野生の島のロズ」
「スイカゲーム」は同じフルーツをぶつけて“シンカ”させることでスイカを作り、ハイスコアを目指すもの。同ゲームとしてはゲーム内に映画のキャラクターが登場する初の取り組みで、ロズ、チャッカリ、キラリがオリジナルのスイカ、もも、かきにそれぞれ置き換わる。ゲーム背景は「動物たちの森」「旅立ちの草原」の2種。このほかゲームでフルーツを運ぶ雲の妖精であるポッピィーが特別デザインとなり、BGMとして映画の楽曲も使用されている。
今月もっとも衝撃的だった宣伝です。「野生の島のロズ」と人気ゲーム「スイカゲーム」がまさかのコラボ。以前映画「胸騒ぎ」とゲーム「新幹線0号」がコラボしたことがありましたが、今回は映画コラボのオリジナルスキンが配信されるということに驚きました。アップデートや追加コンテンツをあとから配信できる昨今のゲームだからこそできる最新型のコラボに唸りました。
さらに衝撃的だったのが日本語吹替で参加している
映画「野生の島のロズ」特別映像(スイカゲームコラボ|鈴木福&クリス・サンダースのプレイ動画)
そして最後は私が勝手に決める今月のMVP(モスト・ヴァリュアブル・プロモーション)。今月はこちらです!
「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」
香港映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」の公開記念舞台挨拶が、本日1月24日に東京・新宿バルト9で行われ、アクション監督を務めた谷垣健治が登壇した。
今月はこちらの「トワイライト・ウォリアーズ」の公開記念舞台挨拶が“面白い”&“興味深い”ということでおもしろ映画宣伝MVPとさせていただきました。香港映画の舞台挨拶ですがアクション監督が谷垣健治さんということで撮影の裏話が次から次へと出てくることに興奮します。聞き手の
まずは冷酷非道な悪の幹部・王九(ウォンガウ)のもとに陳洛軍(チャン・ロッグワン)らが乗り込むシーン。谷垣は「このシーンはわりと最後のほうに撮ったので、リアルに落ち着くか誇張させるか(のあんばい)や、それぞれのキャラクターがみんなわかってきていました」と振り返る。信一(ソンヤッ)がバイクで空中から飛び込んでくる演出は、谷垣いわく「撮影前のロケハンで『飛ぶ?』って聞いたら、スタッフみんな『飛ばないよ!』って(笑)」と最初は却下され、奥から走行してくることになったという。しかし撮影が進み、実際にセットを組むと奥からバイクで駆け抜けるのが動線的に難しくなったため、再度「飛ぶ?」と提案したところ、キャラクターの理解がすっかり深まったスタッフたちは「信一なら飛ぶよ!」と口をそろえて賛同したそう。さらに谷垣は「単に信一が飛んでかっこよく登場するんじゃなくて、そのきっかけもちゃんと欲しかった。だから敵めがけて飛び込んでくる」と説明。これにもスタッフたちは「信一なら、そりゃ潰すでしょ!」とノリノリだったという。
「昔の香港アクション映画は脚本よりも現場で話が決まるものだった」という話を聞いたことがありますが現代でもそうだったということに驚きます。スタッフも撮影が進むにつれてキャラクターをつかんでいくので当初は却下されたアイデアものちに採用されるという話には笑ってしまいました。エネルギッシュな熱に包まれていた「トワイライト・ウォリアーズ」の骨組みを垣間見たような気がしました。
このあともCGとスタントの組み合わせ方、印象的なバトルシーンができるまでの工程、谷垣さん憧れのサモ・ハンとの仕事などとにかく次から次へと面白い話が出てきますので、ぜひ記事をご覧ください。大好きな映画の撮影秘話や苦労話などを知りたい自分のような人間にはたまらない舞台挨拶でした。
2025年も始まり、楽しみにしていた映画が続々と公開されることに喜びを感じます。今回取り上げた映画は、子供も楽しめるエンタメ作品からホロリと泣ける感動作、歌が魅力的なミュージカル映画から社会問題を描く作品、その国の真実を捉えるドキュメンタリーからカンフーアクション映画までさまざまです。そういった映画たちの存在を広く知らしめるのが宣伝の仕事です。今月の宣伝群を見ているとこの世の中には多種多様な映画があり、多種多様な宣伝があります。それぞれの映画がそれぞれ映画に合ったやり方・見せ方でPRできていると感じました 。意表を突く飛び道具的な宣伝も時には面白いですが、楽しい映画は楽しく、真摯な映画は真摯に、そんな宣伝が実は一番シンプルで心に届きやすいのかな、と思ったりしました。
以上、月刊おもしろ映画宣伝2025年1月号でした。次回もお楽しみに!
ビニールタッキー
映画宣伝ウォッチャー。ブログ「第9惑星ビニル」の管理人。海外の映画が日本で公開される際に発生する“おもしろ宣伝”を観察・収集する。トークイベント「この映画宣伝がすごい!」を毎年開催。
ビニールタッキー (@vinyl_tackey) | X
第9惑星ビニル
バックナンバー
関連する特集・インタビュー
ビニールタッキー @vinyl_tackey
映画ナタリーさんでの連載コラム「月刊おもしろ映画宣伝」1月号が公開されました!今回は新春ということでおめでたい宣伝ばかりでしたね。月間MVPはみんな大好き、僕も大好きなあの映画のPRイベントです!集え!
https://t.co/3KY2852Avt