2023年のカナザワ映画祭で「期待の新人監督賞」を受賞した、神山大世の「それでもお前らは平和だった。ボケ」が10月11日から17日まで神奈川のシネマ・ジャック&ベティで上映される。
同作の主人公は、高校時代に殺人を犯して少年刑務所に入った九条ヒロトだ。出所した彼は、大麻を売った罪で服役していた男・グーチョキの家へ。2人は大麻を売るためクラブイベントを訪れ、在日中国人であるDJ・呉林と出会う。そして奇妙な絆でつながる3人の物語は、やがて危険な方向に向かうことに。九条の胸の奥には、かつて好きだった少女・小都子への思いがくすぶったままだった。
九条を「逆火」の
神山は「この映画は恋の物語です。あるいは自分の存在意義を探る者の話です。愛するものの為に必死に闘う者の映画でもあります。過去を乗り越えようとする者の映画でもあります。157分、見応えあると思います」とアピール。企画段階から彼と意見を交わしたと言う小松は「この作品に向き合った日々は、これまでにないほど苦しく、同時にかけがえのないものでした。自分自身の輪郭がなくなり、ただひたすらに九条ヒロトであり続けた日々でもあります」と回想した。撮影を担った小畑智寛のコメントは後述の通り。
映画「それでもお前らは平和だった。ボケ」予告編
神山大世 コメント
「それでもお前らは平和だった。ボケ」が完成して、公開までに約三年かかりました。まずはシネマ・ジャック&ベティ支配人の梶原様と、小林敏和さんに感謝をお伝えしたいです。本当にありがとうございます。
この映画の制作時は自分自身のコロナ禍の中の苦しさから生まれた作品です。いろんな悲しい事件や出来事があって、そんな中で出来上がりました。ただ、この映画から生まれた彼らの生き様なんかは、3年経ちコロナが落ち着いた今でも、むしろ今だからこそ、きっと伝わってくると思います。
この映画は恋の物語です。あるいは自分の存在意義を探る者の話です。愛するものの為に必死に闘う者の映画でもあります。過去を乗り越えようとする者の映画でもあります。157分、見応えあると思います。人の人生の映画です。スタッフとキャストで強く高い志を持って作った作品です。是非、映画館でご覧いただけたらと思います。
小畑智寛 コメント
撮影から3年、カナザワから2年。
ようやく映画ファンの皆様に本作を披露できる場をいただきました。
神山作品の魅力はなんと言ってもその「純粋さ」です。こんな純粋な映画を作る男もそうそういません。
純度120%の作品を作る監督の現場は、それはそれは純粋な兵(つわもの)共の集いの様なものでした。喧嘩して徹夜して脚本の上をひたすら突き進んで、まさに青春そのものでした。
それでいて紡がれた作品は、三者三様の青春の終わりをパケ袋に詰め込んだ様な、鋭利に刺さる映画に仕上がったと思います。
作品に文字通り命を賭けたあの2週間がいよいよ報われると思うと胸の奥から欣喜が湧き上がります。
映画的にも技術的にも、技を詰め込んだ作品にできたと自負しておりますので、是非映画館の大画面と音響でお楽しみください。
小松遼太 コメント
九条ヒロト役の小松遼太です。
九条ヒロトとしてこの作品に向き合った日々は、これまでにないほど苦しく、同時にかけがえのないものでした。自分自身の輪郭がなくなり、ただひたすらに九条ヒロトであり続けた日々でもあります。
この苦しさは、主演としての重圧なのか、それとも九条ヒロトの生きる痛みそのものだったのか、それは今でもハッキリとはわかりません。この苦しさは監督も同じように抱えていたと思います。
九条ヒロトは罪を犯し、その罪を償ったのか反省したのかも曖昧なまま、次々と人間に巻き込まれていきます。彼らが平和ボケした人間なのか、あるいは彼ら以外が平和ボケしているのか、もしくは九条自身がそうだったのか。
ただひとつ言えるのは、九条たちが懸命に真っ直ぐに生きてもがく姿は、決して平和ボケではないと僕は信じます。
その構図の中で「誰が九条ヒロトを救ってやれるのか?」と彼の中の僕自身がその誰かを探し求めていました。その孤独はとても苦しかったです。その祈りのような感情は、今も心の中に残っています。
そんな中でも、撮影現場は本当に楽しく豊かな時間でした。素敵な共演者と信頼できるスタッフたちと支え合いながら、極限まで芝居に向き合えた日々は、僕の宝物です。
神山監督、撮影の小畑とは、これまでも何度も映画を作ってきました。
僕たちは、監督、撮影部、俳優部、の枠を超えた関係だと思っています。
信頼し合えているからこそ、役割を超えて意見を交換しつつ、それでいてそれぞれの責任はそれぞれ果たす関係です。
今回も企画段階から何度も意見を交わし映画の骨格を築き上げてきました。
だからこそ、もちろん今回も僕は出演すると思っていましたが、全キャストオーディションで選ぶことになり、九条ヒロト役にも多くの応募がありました。僕自身も当然オーディションを受けて、選んでもらいました。そのことで、より一層この作品と九条ヒロトに対する覚悟が強まりました。
九条ヒロトの愚かさ、苦しみ、孤独、小さな幸せ、その全てを込めました。
それらは。彼らの姿は。観てくださる皆さまの中に何かを残してくれると信じています。
ぜひ、劇場でご覧ください。
おおとも ひさし @tekuriha
カナザワ映画祭で新人監督賞、神山大世の「それでもお前らは平和だった。ボケ」公開 - 映画ナタリー
#マイナタリー https://t.co/JiO4SqnBAH