香港映画「
1980年代の香港を舞台とした本作。密入国した陳洛軍(チャン・ロッグワン)は黒社会のルールを拒み組織に目を付けられる。そして逃げ込んだ先・九龍城砦で信一(ソンヤッ)、十二少(サップイー)、四仔(セイジャイ)と出会い、ともに過ごす中で友情を築いていくのだった。九龍城砦を取り締まる龍捲風(ロン・ギュンフォン)を
公開から1週間が経った本作は、SNSを中心に大きな盛り上がりを見せている。リピーターも多く、聞き手のギンティ小林は、さっそくクライマックスのシーンの数々について谷垣から聞き出していく。まずは冷酷非道な悪の幹部・王九(ウォンガウ)のもとに陳洛軍らが乗り込むシーン。谷垣は「このシーンはわりと最後のほうに撮ったので、リアルに落ち着くか誇張させるか(のあんばい)や、それぞれのキャラクターがみんなわかってきていました」と振り返る。信一がバイクで空中から飛び込んでくる演出は、谷垣いわく「撮影前のロケハンで『飛ぶ?』って聞いたら、スタッフみんな『飛ばないよ!』って(笑)」と最初は却下され、奥から走行してくることになったという。しかし撮影が進み、実際にセットを組むと奥からバイクで駆け抜けるのが動線的に難しくなったため、再度「飛ぶ?」と提案したところ、キャラクターの理解がすっかり深まったスタッフたちは「信一なら飛ぶよ!」と口をそろえて賛同したそう。さらに谷垣は「単に信一が飛んでかっこよく登場するんじゃなくて、そのきっかけもちゃんと欲しかった。だから敵めがけて飛び込んでくる」と説明。これにもスタッフたちは「信一なら、そりゃ潰すでしょ!」とノリノリだったという。
劇中では、九龍城砦の入り組んだ内部を生かしたアクションも満載。谷垣は「シーンをバラバラに撮るから、場所関係がわからなくなって。もう迷子ですよ。アングルがわからなくなってカメラマンに聞いたら『どっちでもいい!』って言われたり(笑)」と苦労を明かす。また谷垣は「韓国映画だったと思うんですけど、外で銃撃戦をして雑居ビルに走り込むアクションシーンがあって、外にあった花瓶が落ちてくる演出が面白いと思って。だから今回、上階で戦っているときに室外機が落ちて、それが下階で戦っている人のところに降ってくるシーンがある。高低差でつながりに説得力を持たせたいと思いました」とアイデアに言及。小林が「室外機のシーンは立体的なステージを生かしたアクションが堪能できました」と伝えると、谷垣は「立体的っていうのはまさに」とうなずき、セットの空間を生かしたアクションを意識的に考えたと語った。そして信一と十二少が戦闘中に武器を交換するシーンも、今回やりたかったことの1つだったと明かす。
“城砦4人組”の象徴的なシーンの1つに、敵の両手両足を4人でつかんで上下に振り下ろし、地面に打ち付けるシーンがある。この技については、成立させるにあたって相当苦労したそうで、谷垣は「監督が『ティッシュみたいにしたい』と言ったんです。マンガでよく、人を蹴り上げたらフワッとなる描写がありますよね。だから最初、ワイヤーを付けてサッカーのリフティングみたいにしたんですけど、ボールじゃないからうまくいかない。カット割りもしたくなかったし、このシーンについてはいったん寝かせることにしました」と回想。そのうちに「手足4本を持つ」というアイデアを思い付き、“ボディアート”で知られるビックスモールンを参考にしたところ「モヤモヤが晴れた」という。
また同シーンから派生して、アクションにおけるCGの使用についても話が及んだ。谷垣は「今の技術のいいところは、役者をマットにバンバンたたきつけて、あとからマットを消すというチョイスがあるのがいい。実際にアスファルトの地面で撮影するなら吹替の人を使ったり映らない画角にしたりするけど、マットなら(安全に)役者を思い切りたたきつけられる(笑)」と解説。「例えば実際に高層階で撮るというチョイスもあれば、周りの風景をCGにするというチョイスもある。僕らのチョイスは実際に人でやる。背景はあとで工夫する。安全なチョイスが増えたのは今のいいところだと思います」と持論を語った。
終盤には、SNSで募った観客からの質問コーナーも。ベテラン俳優であり、アクション監督も務めるサモ・ハンへの演出に関して聞かれると、谷垣は「サモ・ハンに指示なんてしないですよ(笑)」と回答。1つだけ「ひざより高い蹴りはやめて」とサモ・ハンからリクエストはあったものの、谷垣は「僕もファンですから。やってほしいことをやってもらいました」と満足げな笑みを浮かべる。「刀も見たいし、棒術も見たいじゃないですか。『狭いところだと長い棒が生かせると思うんで……』とか理屈をつけてやってもらったけど、単純に棒術を見たかっただけ」と笑った。最後に谷垣は「香港の人たちはこの映画を観て『これは俺たちの映画だ』と思ったようで、記録を作ろうと盛り上げてくれたのを感じました。成績によっては作れるものも作れなくなる。たくさん観ていただいたことで次に行けるんです。映画ってお金が掛かるんですよ」と述べ、「日本でも盛り上げてほしい。1人ひとり使命感を持って伝えてほしい!」と観客に呼びかけた。
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tAk @mifu75
【イベントレポート】谷垣健治から「トワイライト・ウォリアーズ」裏話続々、空中バイクは「信一なら飛ぶ!」 https://t.co/dt2PwrpasH