左から村山章、西森路代、ビニールタッキー。

2023年の映画界を振り返る、村山章×西森路代×ビニールタッキー鼎談

“希望の星”マ・ドンソク、低調なMCU、「バービー」「マリオ」の大ヒット、騒ぎになったバーベンハイマー

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「バーベンハイマー」とはなんだったのか

ビニールタッキー 今年記憶に残っている出来事だと「バーベンハイマー」(※編集部注:「バービー」と「オッペンハイマー」を掛け合わせたインターネットミームをきっかけとする社会現象)があります。

村山 ああいう悪趣味なミームを作る人は必ずいますし、インターネットの時代に抑止するのも限度があるとは思うんです。今回は何がダメだったかと言うと、「バービー」のアメリカのX公式アカウントが乗っかったということですよね。日本で配給を担当するワーナー ブラザース ジャパンがすぐに遺憾の意を表し、本社に然るべき対応を求めて、アメリカのワーナー・ブラザースは正式に謝罪を行いました。日本の対応は早かったと思うんですが、米ワーナーが謝罪文を発表したあとも、「バービー」のアメリカのXアカウントにはミームに乗っかった引用ポストが数日消されずに残っていたんです。なので「バーベンハイマー」に関して自分は「本国ワーナーの対応がよくなかった件」として認識しているのですが、SNSではいろんな人が謎の喧嘩を始めたりして。「だからハリウッドの映画はダメなんだよ」みたいな筋違いの批判をしたり作品を貶めるような人も出てきて、そういう周辺の騒ぎのほうが大きく見えてきてしまった。本質とは関係ないところで起きる論争の虚しさを感じました。ネット上の論争のすべてが不毛なわけではもちろんなくて、可視化された問題に対してみんなで話し合いましょうというのはいいことだと思うんですが、さすがに無意味なののしり合いを見るとげんなりはします。

ビニールタッキー 僕も過激な言葉を使った投稿を見たりしていて、それはすごく嫌だなと感じていました。日本でも公式アカウントが悪ノリしたあとに謝罪し、ポストを削除するということはよくありますし、よくない投稿をしてしまう可能性はどの企業にもあり得る。そのときにどういう対応をするかで、信頼を取り戻すこともあれば完全に失ってしまう可能性もあると思います。

村山 本当にそうですね。

ビニールタッキー 「バービー」は騒動のあとすぐに日本でも封切られましたが、「オッペンハイマー」が2024年の日本公開になったのはよかったと感じます。あの頃に公開されていたら、それこそ村山さんがおっしゃったみたいに不毛な論争が巻き起こって、作品を敬遠してしまう人も出てきた気がして。

村山 確かに。みんな頭が冷えた状態で観ることができる。

クリストファー・ノーラン監督作「オッペンハイマー」の場面写真。(c) Universal Pictures. All Rights Reserved.

クリストファー・ノーラン監督作「オッペンハイマー」の場面写真。(c) Universal Pictures. All Rights Reserved.

「マッドマックス:フュリオサ」はきっと“どこだここ?”まで連れて行ってくれる

──全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)によるストライキや、イスラエル軍とハマスの戦闘に関して映画人がどんな発言をしているかなど、お話を聞きたいテーマはたくさんあるのですが、時間が迫ってきてしまいました。最後に2024年の公開作について伺えたらと思います。

村山 僕は「ワイルド・スピード」シリーズの大ファンですが、ヴィン・ディーゼルへの告発が出てきて今は推移に注目しているところなんです。ただすでにドウェイン・ジョンソン演じるルーク・ホブス捜査官のスピンオフが発表されていて、具体的な情報はまだないんですが、今年の5月に日本公開された「ワイルド・スピード/ファイヤーブースト」と2025年4月にアメリカで封切られる予定の「Fast X: Part 2(原題)」を橋渡しする作品だと言われている。本当にそうなら2024年中に公開しないといけないんじゃないかと思うんです。シリーズの行く末もどうなるか気がかりですし、ロック様ファンということもあってやきもきしてます。

西森 ロック様と言えば、2025年アメリカ公開ではありますけど「モアナと伝説の海」の実写映画が楽しみです。ディズニー映画の中だったら「モアナ」が一番好きで、ロック様が声を当てていたマウイも大好き。実写版でも自ら演じるそうなのでうれしいです。

村山 ビニールタッキーさんもロック様で何かありますか?(笑)

ビニールタッキー ロック様縛り(笑)。A24の作品に出るときが来るとは思わなかったという意味でも、著名な格闘家であるマーク・ケアーを演じるA24の映画「The Smashing Machine(原題)」が気になります。僕も韓国映画が好きなので西森さんに聞きたいのですが、韓国作品で注目しているものはありますか?

西森 一番はやっぱり冒頭でも話した「ソウルの春」ですね。あとは「ガール・コップス」という映画に出ていたラ・ミランさんの主演作で、「Citizen of a Kind(英題)」という作品があって。韓国では来月に公開されて、日本での上映はまだ発表されていないんですが、クロックワークスのXアカウントで紹介されていたので配給してくれるのかなと期待しています。

ビニールタッキー なるほど、楽しみです。続編が作られるとは思っていなかった「Mortal Kombat 2(原題)」も早く観たいですし、一番期待しているのは「マッドマックス:フュリオサ」です!

「マッドマックス:フュリオサ」ティザービジュアル(2024年全国公開)(c)2023 Warner Bros.Ent. All Rights Reserved

「マッドマックス:フュリオサ」ティザービジュアル(2024年全国公開)(c)2023 Warner Bros.Ent. All Rights Reserved

村山 ジョージ・ミラーはいつも新しいことに挑戦する監督なので、間違いなく想像を超えてくると思うんですが、予告編を観てちょっとだけ不安になったんですよね。「マッドマックス 怒りのデス・ロード」みたいに土煙漂う空気感ではなく、もっと原色が強いグラフィックノベルっぽい画作りと言いますか。。

ビニールタッキー 「怒りのデス・ロード」の予告を観たとき、今までの「マッドマックス」シリーズとはかなりテイストが違って、「これは絶対に面白い」というよりは「どんな映画になるんだろう?」という気持ちでした。実際に観たらとんでもない映画でしたし、今回も大丈夫だと思います(笑)。

村山 そうですね! きっと斜め上のことをやっていて、「どこだここ?」というところまで連れて行ってくれる映画だと信じているのでドキドキしています。

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ビニールタッキー @vinyl_tackey

映画ナタリーさんの2023年の映画界を振り返る鼎談に参加しました!村山さん、西森さんという尊敬するお二人とお話しできて光栄でした。明るい話暗い話笑える話色々しましたのでぜひご覧ください。

2023年の映画界を振り返る、村山章×西森路代×ビニールタッキー鼎談 https://t.co/LTWJ9VXEME

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