ナタリードラマ倶楽部 Vol. 2 [バックナンバー]
「コタツがない家」で涙…「マイ・セカンド・アオハル」は令和のロンバケ?まだまだ語りたい2023年秋ドラマ
「コタツがない家」「ゆりあ先生の赤い糸」「セクシー田中さん」「マイ・セカンド・アオハル」……明日菜子×綿貫大介コンビがドラマ談議
2023年11月24日 18:30 10
「マイ・セカンド・アオハル」は令和の「ロングバケーション」(綿貫)
──“女性の年齢呪縛問題”で言うと、「マイ・セカンド・アオハル」はいかがでしょう?
綿貫 まずこの作品は、
明日菜子 気になる!
綿貫 「マイ・セカンド・アオハル」は、令和の「ロングバケーション」なんです。そこに気が付いてから、一気に見方が変わりました。ヒロインと相手役の年齢差、ヒロインの“姉さん女房”的なキャラクター、2人が同じ屋根の下に住み、出て行く・出て行かない問題が発生するところ、最初はお互いに別の好きな人がいるのも同じです! 拓が好きな人に振られて、傷心で佐弥子とキスするのも同じ展開。キスしてからお互いが気になり出すのもロンバケの流れですから。もうこれは、令和のロンバケと認定しました。
明日菜子 えっ……私はアイドルオタクでもあるんですが、常日頃から道枝くんには“木村拓哉”を感じていたので、その説はしっくりきました!! あと瞳の水分量が多いからでしょうか、道枝くんの画面への吸引力がすごくないですか? シェアハウスの喧騒的なシーンから一転、拓と佐弥子の2人きりのシーンになるとこっちも真剣に観ちゃう。
綿貫 あとは佐弥子、勉強してほしい……お願いだから……。ここは「テラスハウス」じゃないんよ……。
明日菜子 あと気になったのが、
綿貫 ロンバケ方式で言うと、1回歳上に行くと思う。拓との恋愛が本格的になると、佐弥子は年齢をネックに感じるはずなので、歳上の安心感に走るのでは。
明日菜子 (「セクシー田中さん」で)朱里の年齢の呪縛を解くのが田中さんならば、佐弥子にとってのキーマンは拓になるのだと思います。拓は「さや姉」呼びせず対等に扱ってくれるし、勉強のことも気にしてくれる。拓と向き合って、自分は何がしたいのか今後の人生プランを設計することが物語の鍵なのかな。ただ佐弥子は、おばさんを通り越して“おじさん”しぐさが多くないですか?「(金だらいは)上から降ってくるもんだと思ってた」と言ってたけど、今の30歳って平成5年生まれだからドリフ知らないと思う(笑)。
綿貫 わかります。ただ佐弥子が、歳下の子の略語や若者言葉を当たり前に受け入れて、わざわざツッコんだりしないのはよかったです。今どきの言葉もふんだんに使っているから会話のテンポがいい。
“私の見たい小芝風花”はこれだ!(明日菜子)
──ほかの作品はいかがでしょう? 「たとえあなたを忘れても」(テレビ朝日系 毎週日曜22時放送)は、“病気×恋愛”でこれまでも取り扱われてきたテーマですよね。個人的にはハマっているのですが。
明日菜子 脚本が浅野妙子さんなんですよね。
綿貫 そうそう。だから期待して観ていますが、まだ“古典的”な印象から抜けていなくて。
明日菜子 でもやっぱり展開力がありますよね。ベテラン脚本家のすごいところで、大きな出来事がなくてもストーリーが進んでいくんですよ。
綿貫 最初に2人が恋に落ちた瞬間がよくわからなかったんです。だから、(
編集部注:空が店主を務めるキッチンカーに、美璃は足繁く通うようになる。
──美璃の空への思いが伝わるシーンではありますが、たしかにやりくりが心配ですね(笑)。
綿貫 ほかには「うちの弁護士は手がかかる」(フジテレビ系 毎週金曜21時放送)の話がしたいです。第5話がうまかった。蔵前役の
明日菜子 私は「うちの弁護士は手がかかる」に、“既存月9感”を感じてしまうんです。放送枠としては新しくて、「Mステ(ミュージックステーション)」や「金曜ロードショー」と被るからもっとインパクトがほしかった。でもフォロワーさんの中には「『いちばんすきな花』や『ゆりあ先生の赤い糸』の次の日だから、いい意味で何も考えずに観られる」という意見もあったので、楽しく観られるドラマではあるのかも。
──同じく金曜日には「フェルマーの料理」(TBS系 毎週金曜22時放送)が放送中です。
明日菜子 7月期の「トリリオンゲーム」と同じ枠ですね。内容も男性バディが天下を目指す点でちょっと被っているので、最初はハマれませんでした。ただ第4話で楽しみ方がわかりまして。これは(
綿貫 現代と過去を両方見せながら展開するのも「トリリオンゲーム」と同じですよね。この店自体の設定がぶっ飛んでいて、マンガ感が強い。でもマンガの実写化にピッタリなキャスト陣だから、マンガ好きにはお薦めだと思います。
櫻井海音と原菜乃華のラブコメが観たかった……(明日菜子)
──小芝さんといえば、2024年1月期のフジテレビ系ドラマ「大奥」で主演を務めることが発表されましたね。
明日菜子 私は「ポケットモンスター 赤・緑」世代で、ドラマのターゲット層としてはドンピシャ。企画・プロデュースが畑中翔太さんなのですが、今どきの感性を持ってる方だなあと思っていて。私の中で“エモいドラマ”を作らせるなら、5本の指に入る方です。ただ、もともと絶対に面白いだろうなと思っていたので、もうちょっと物語が展開していくといいですね。ポケモンを通ってきていない人はどう観るのかな?
──私はポケモンのゲームをまったくやっていないのですが、ポケモンのキャラクター自体は知っているので理解できました。ほかの作品で気になるものは?
明日菜子 「泥濘の食卓」(テレビ朝日系 毎週土曜23時30分放送)は土曜日ですよね。「単身花日」に続き、2枠連続で不倫ドラマ!
綿貫 「泥濘の食卓」は主人公・深愛を演じる
──深愛の母・美幸を
綿貫 筒井さんは日本のドラマの毒親をすべて引き受けてくれているんじゃないかと思う(笑)。あとは
明日菜子 私は
編集部注:櫻井海音扮するハルキと原菜乃華演じる尾崎ちふゆは幼なじみ。ちふゆはハルキに異常なほどの愛情を抱き、ストーキングや脅迫行為を加速させていく。
──前編の座談会ではNHKのドラマが大好評でしたが、「ミワさんなりすます」はいかがでしょうか?
明日菜子 「ミワさんなりすます」は映画が大好きな主人公が家政婦になりすまして推し俳優の家でしれっと働くというファンタジーな内容だけど、
綿貫 ミワと(
明日菜子 現時点では、ミワさんは八海にときめいてるけど、八海は彼女のことをそういう目で見ていないですよね。堤さんが色気を封印しているから、楽しく観られるのかも。
複雑な思いを抱くのに観てしまう「いちばんすきな花」(綿貫大介)
──後編もたくさんお話が伺えて楽しかったです。まだ各作品の放送は続きますが、最後に2023年10月期ドラマを改めて振り返りましょう。
明日菜子 秋ドラマって、1年の総括として(制作サイドが)力を入れる印象ですが、今年はけっこうチャレンジしている作品が多い感じがします。
綿貫 やっぱり王道の恋愛モノってもう少ないんだなと思いました。秋ドラマの放送期間にはクリスマスがあるから、恋愛ドラマが多いイメージだったんです。こうして振り返ると、今回は「silent」(2022年10月期放送)みたいなまっすぐな純愛モノが少ない。その残念さはあるけど、最近少なかったホームドラマが増えてきたのはうれしいです。今はもう、家族みんなでドラマを観るシチュエーションってあまり想定されてない作りなのかな。だからこそ個性がバラバラな作品が生まれている気がします。
──2023年秋ドラマ全体の中で、特に好きな作品は?
明日菜子 私はいつも年末にその年のベスト決めるんですけど、今の段階でランキングに入りそうな作品は「時をかけるな、恋人たち」と「コタツがない家」かな。
綿貫 私は順位を決めたくないので、“トータル1位”はないんですけど、複雑な思いを抱くのに観てしまう「いちばんすきな花」ってなんなんだろう?とずっと考えています。 観始めても途中で脱落する作品がいくつもある中で、それでも観させるってやっぱりそれはすごいことですから。
【前編はこちらから!】
明日菜子(アスナコ)
2017年に日本のドラマの楽しさに目覚め、毎クール20本以上のドラマを鑑賞しているドラマウォッチャー。「文春オンライン」などに寄稿している。トンチキドラマが好き。
綿貫大介(ワタヌキダイスケ)
エンタメを中心としたカルチャー分野で活動する編集者・ライター・テレビっ子。「TVerプラス」で今季ドラマのレビューコラムも連載中。“恋に仕事に大忙し”の主人公が出ているドラマが好き。
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