sleepy.ab、キネマ倶楽部を包んだ静謐な音世界
2010年1月29日 13:26 1
1月24日、
今回のツアーは、昨年11月に発売された最新アルバム「paratroop」を携えて行われているもの。演奏される楽曲はアルバムからの楽曲を中心としながら、過去曲も随所に織り交ぜた充実のセットリストが展開された。
定刻からしばらく経った頃、客電が落ちると静かな拍手が起こり、オーディエンスの視線がステージ中央に注がれる。しかし予想に反してメンバーはお立ち台に登場。その意外な登場方法にどよめきと拍手が起こった。
通常のライブハウスとは異なる構造や舞台装置を生かし、この日は映像作家・小嶋貴之によるVJを導入。1曲目の「ダイバー」では4人の紡ぎ出す浮遊感あふれるサウンドとシンクロするように、水中へ潜っていく映像がスクリーンに映し出され、ゆっくりと観客をsleepy.abの世界へと誘っていった。
成山剛(Vo,G)の「こんばんは。札幌から来ましたsleepy.abです」という挨拶が口火となり、ライブは本格的にスタート。序盤で披露されたのは「四季ウタカタ」「inside」「インソムニア」「ナハト・ムジィク」など、田中秀幸(B)と津波秀樹(Dr)の2人が鳴らす重厚なリズムが肝となる楽曲たち。うねるようなビートの上に、成山の繊細で美しい歌声と山内憲介(G)の奏でる幻想的なギターが絡み合い、ひめやかな音世界を会場に構築する。そこに小嶋によるさまざまな映像が有機的に重なり、各楽曲のサウンドスケープの魅力を増幅させた。
中盤に差し掛かるとステージ後方のカーテンが降り、映像演出は一時中断。緊迫していた空気を解きほぐすように「メロウ」「ドレミ」といったやわらかな印象を与える楽曲が披露される。メロディと歌を際立たせるように、津波と田中は控えめだが芯のあるリズムを刻み、山内は丸みのある音色を爪弾く。その演奏を支えに成山の声はふんわりと会場を伝い、オーディエンスを多幸感で包んだ。
途中のMCでは、田中がツアー中の思い出話を振り返る中で、いつしか食べ物の話に。田中が全国ツアーがグルメツアー状態になり美味しいものを食べ過ぎて違う意味で大きくなったことを語れば、成山はイカの鳴き声が入っている「さかなになって」を引き合いに出し、「(ツアー中に)山内がイカ、イカうるさくて。北陸行ったらすごいイカが美味しくて、イカランキングをツアー中にやってたんだけど(山内の出身地の)函館は4位くらいで。どうしてくれんの?」と山内をいじる。山内がそれに対し「ホントは1位なんだよ!」と反論するも、成山は「訛ってるよ!」とピシャリ。音楽性とはかけ離れたキビキビしたやり取りにフロアから笑いが起こった。
パイプオルガンを思わせる荘厳なギターから始まる「メリーゴーランド」、儚げでメランコリックな「メロディ」、流麗さと軽やかさが同居した「sonar」を経て鳴らされたのは「flee」。リズムを重視したこの曲では津波と田中が舵取りを担い、sleepy.abの硬質な側面を浮かび上がらせる。間断なく繰り出される肉体的な音像は実に圧巻で、先ほどまでの穏やかな雰囲気は鳴りを潜め、張り詰めた空気が再び会場を覆った。
そして本編のラストナンバーを飾ったのは、アルバムの終盤に収録されている「メトロノーム」。成山は「札幌を拠点にして、これからも活動していきたいと4人で意思確認できた曲です」と語り、自分たちの現在と未来を描いた歌詞を噛みしめるように歌い上げた。
その後のアンコールで4人は、北国の光景をイメージさせる「雪中花」と「ねむろ」の2曲を贈り、オーディエンスを夢心地に。さらにダブルアンコールでは「24」を披露。クライマックスが近付くに従い激しさを増す、聴き手を目覚めさせるような1曲でライブを締めくくった。
なお、ツアーファイナルは彼らの地元札幌の道新ホールにて1月30日に行われる。当日は東京公演と同様に小嶋による映像演出が入るほか、ストリングスを加えた特別編成でパフォーマンスが行われるとのことだ。
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音楽ナタリー @natalie_mu
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