初夏に行われた
6月に開催された東京公演は、演劇などを上演している座・高円寺2で行われたが、今回のライブは映画館を改装して作られたというユニークな会場で実施。追加公演ということもあり、ツアー本編とは異なるセットリストが組まれた。
定刻を少し過ぎた頃、ゆっくりと客席が暗転。スモークの音がかすかに響く中、メンバーが順番にステージに現れる。成山剛(Vo,G)、山内憲介(G)、田中秀幸(B)、津波秀樹(Per)の4人は定位置に着くと、緊張気味の客席の空気を和らげるように「PAIN」を奏でた。観客は丁寧に紡がれるアコースティックサウンドに耳を傾け、sleepy.acの作り出す夢見心地な音世界に身を委ねた。
前半で演奏されたのは、独特の閉塞感が漂う「アクアリウム」、谷山浩子の「まっくら森の歌」のカバーといった物憂げなナンバーの数々。ワインレッドに染められたステージで披露された「inside」では、津波の叩くうねるようなウドゥの音と成山の艶やかな歌声が、幻想的なサウンドスケープを作り出した。
「sleepy.acのライブ盤が発売になりまして、帯に安眠導入盤って書かれてたんですが、今日は安眠導入ライブってことで」と田中がMCの口火を切ると、成山がそれを受け「(会場の)席が気持ちいいらしいですね。ゆっくり楽しんでいってください」と観客に語りかける。
中盤ではsleepy.acのライブには欠かせない、「palette」や「さかなになって」を披露。「palette」はチャーミングな歌声や、跳ねるようなリズムが心を浮き立たせるナンバーだが、肝はなんと言っても山内のマトリョミン演奏。間奏で山内はおもむろに立ち上がると、いつものように楽器を抱えたまま客席へ。この日も通路をウロウロとしたかと思えば、空いている席に座ったりとノープランなパフォーマンスで観客を笑わせる。他のメンバーはそれを見守り、彼が無事ステージに帰還すると成山は「山内君はステージに戻ってきてからよく素で弾けるよね……」と一言。田中は「今回のライブ盤に『palette』が入ってないってファンに言われたんですが、こういうハプニングがあるんで。ぜひライブで観てください」とフォローを入れ、オーディエンスを再び笑わせた。
ライブも折り返しに入った頃「追加公演ということで、ライブでは初披露の曲を……」という紹介で「街」がスタート。山内の奏でる繊細なグラスハープを皮切りに、宇宙空間をイメージさせる浮遊感たっぷりの音像が会場を支配する。クライマックスでは、成山のボーカルに寄り添うように田中と津波の繊細なコーラスが重なり、楽曲を立体的に浮かび上がらせた。CDとは異なるゆったりとしたアンサンブルが響いた「君と背景」の後は、初夏のツアーでも演奏された新曲「夢織り唄」。子守唄のようにやわらかな旋律、多幸感あふれる詞世界が会場を満たす中で、本編は穏やかに終幕した。
「今日はなかなかいいお知らせがあるんですよ」という田中の含みのある言葉で始まったアンコールでは、11月にシングルをリリースすることを発表。物販紹介コーナでは、山内考案のイカの絵が描かれたカリンバ、通称イカリンバのセールストークも展開される。成山は「(イカリンバを)みんなに持ってきてもらって合奏とかしてもいいかもね。俺は観てるけど(笑)」とツンデレ発言。楽屋にいるようなアットホームな空気が会場を漂った。
そのカリンバの可愛らしい音色が印象的な「メリーゴーランド」を経て、ラストナンバーとして演奏されたのは「ねむろ」。「最後は『ねむろ』という曲を聴いて眠ってください」という言葉に続き、ぬくもりに満ちたサウンドがオーディエンスを包み込んだ。終盤のMCで「追加公演やらせてもらえるなんて。“ab”でもやったことないのに、最近“ac”づいてるよね」と語っていた成山。札幌での追加公演の後は、しばらくsleepy.acとしての活動は予定されていないが、再び“安眠導入”ツアーを行ってほしいと誰もが願ったことだろう。
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音楽ナタリー @natalie_mu
sleepy.ac、元映画館舞台にゆったり安眠導入ライブ http://natalie.mu/music/news/38032