映画・映像制作のプロセスを学ぶ講座「映画のすべて マスターズ・オブ・シネマ」が本日7月9日、東京・早稲田大学にて行われ、同大学教授の
講演台に上がった細田は、ホストを務める是枝に対して「前にトロント(国際)映画祭で会って、少し立ち話をした以来」とほぼ初対面であることを述べ、「是枝監督から質問を受けて、緊張しないでいられる人はいるんでしょうか?」とコメント。続けて、教室に詰めかけた生徒に「いいなあ、(是枝の)授業受けれて」とこぼす。
こんな機会じゃないと聞けないと前振りをした是枝は「『
その言葉に是枝は「僕も『
「子供の成長に興味がある」という細田は、自身が所属していた東映動画(現・東映アニメーション)を例に出し「東映動画は勉強できる場だなと思った。『こんな演出しちゃダメだよ』って思っちゃうような人、反面教師がいっぱいいた。だから僕は、反面教師としての父親というのは子供にとって意味のあるものなんじゃないかなと考えてます」と持論を展開。一方、制作会社テレビマンユニオンに長く所属していた是枝も「僕も95%反面教師でした。でもごく少数、尊敬できる人がいるというその環境も悪くなかったなと思いますね」と振り返る。
是枝が「あるインタビューで細田監督が『人は夏に成長する』とおっしゃっていたのを読んだんですが」と話を振ると、細田は「それは(映画が)夏に公開されるからです。春に公開されるなら僕は、『人は春に成長する』って言いますよ」と返し、聴講生の笑いを誘う。また聴講生からメインキャストに俳優を起用する理由を聞かれた細田は、声優ごとに収録する“抜き録り”はしないようにしていることを明かし「僕は、1シーン1シーン通しで録音するんですが、人気のある声優さんは、スケジュールを取るのが難しくて、1週間丸ごととか時間をもらえないんですよ」と声優の起用が少ない理由を説明。細田にキャスティング時に意識していることを聞かれた是枝は「声で選んでます。その人の声でセリフが書けるかが決め手になってくる」と基準を明かす。
また是枝が「『映画を作ることは公園を作ることだ』と細田監督は言っていた。テレビではよく聞く言葉だが、映画の世界で公共性の意識を持った人は少ないのでは」と問いかけると、細田は「僕は東映にいて、アニメーションは子供が観るものという刷り込みがあるんですね。そのように考えたとき、作家主義的なものより公共性が先に来るべきだと。それを外しちゃうんだったら、作らなくていいよってなっちゃう」と返答。細田が「東映は、企業としていかに利益を出すかを真剣に考えている。その中にいる作り手は、商業主義の中でも実のあるものを作らなければというふうに考えるようになる。だから、東映が倫理的だったら僕はこうなってなかった」と言葉を重ねると、是枝は「いい父親だったってことですね」と細田と東映の関係を評した。
現在の日本のアニメーションに対して細田は「作り手が、観客は同じものを求めているだろうと勝手に決めちゃって、表現の可能性を狭めてしまっている」と述べ、「僕が目標にしている『白蛇伝』から始まる東映長編(アニメ)は表現力を広げていこうとしていた。僕はそれに倣いたいし、今の流れに逆らって表現を広げていきたい」と力強く意欲を語る。
最後に次回作について聞かれた細田は「次回作もオリジナルです。今までの作品とは全然違う切り口を見つけることができた。いい意味で観客を裏切って、でも面白いと言わせたい」と声を弾ませた。
なお本講座の様子は、8月20日発売のSWITCH9月号でも紹介される予定だ。
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