「令和8年初春歌舞伎公演」に「鏡山旧錦絵」、八代目菊五郎「心晴れ渡るような仇討ちの物語を」
2025年11月21日 21:07
1 ステージナタリー編集部
「令和8年初春歌舞伎公演」が、来年1月5日から27日まで東京・新国立劇場 中劇場にて上演される。それに向けて11月18日に東京都内で取材会が行われた。
「令和8年初春歌舞伎公演」では、尾上菊五郎劇団を中心とした出演者により、通し狂言「鏡山旧錦絵」が上演される。原作は、石見松平家の江戸屋敷で起こった侍女による主人の仇討ち事件をもとに、天明2(1782)年に容楊黛によって書き下ろされた人形浄瑠璃で、翌年に歌舞伎化された。
取材会では、出演者たちがそれぞれの思いを語った。八代目尾上菊五郎は「八代目菊五郎となりまして初めての国立劇場、そして20年ぶりにお初を勤めさせていただくということで、とても身の引き締まる思いがいたしております。働いて、働いて、働いて、働いて参る忠義一途なお初を勤めたいと思っております。お正月ということで、心晴れ渡るような仇討ちの物語をご期待ください」とあいさつ。また自身が演じる召使いお初について「お初は忠義一途で、女忠臣蔵ともいわれておりますけれども、忠臣蔵の中では平右衛門のような役でしょうか。尾上のために忠義一途、そして尾上に対する憧れを持って使えている人です。その日本の古き良き“主と従”、そして“孝”の関係を、より鮮明に描きたいと思っております」と意気込みを述べる。また「襲名から、半年経ちましたけれども、歴代の菊五郎が作ってきてくださったその菊五郎という名前の重みを日々感じている次第でございます。父が大きくしてくださった菊五郎という名前を私でまたさらに大きく、そして、歌舞伎の魅力をより多くのお客様に伝えられるように、もっともっと研鑽していきたいと思っております」と述べた。
局岩藤役を演じる坂東彌十郎は「令和8年のお正月を、こうして国立劇場で迎えられますこと、気の引き締まる思いで、とても緊張いたしております。岩藤という大役をお正月にやらせていただく、本当に来年は素晴らしい年になるだろうな。いい古希を迎えられるな、と思っております。私が今まで、学んできたことすべてをかけて、勉強させていただきたいと思っております」と話す。さらに作品について「この『鏡山旧錦絵』は、若い頃からよく拝見していましたが、出させていただくのは今回が初めてです。皆様に『彌十郎にしなきゃよかった』と言われないように、全身全霊をかけて臨むつもりでございます。女忠臣蔵ともいわれますが、敵討ちのためには、敵が憎たらしくなければならないと思います。精一杯憎く恨まれるように勤めたいと思っておりますし、いかに憎たらしくできるかで、八代目さんのおっしゃった、“忠・孝”というものが際立つのだと思います。私の持てる憎さを全て出したいと思っております」と言葉に力を込めた。
中村時蔵は「私にとりまして『鏡山』は憧れの舞台、尾上は憧れの役でございまして、死ぬまでには必ず一度は勤めたいと思っておりました。今回17年ぶりの上演ということで長い年月がかかりましたが、2026年の年明けから憧れの役を勤めさせていただけるのが本当に嬉しいです」と笑顔を見せる。また、自身が勤める中老尾上役について「尾上は、岩藤やお初と違いまして町人階級の出身でございます。町人階級の出身だからこそ、武家社会に勤める女性はこうでなくてはならないと、武家で育ってきた女性よりも強く思っているのだと思います。隙のない女性だからこそ草履で打たれるという、その屈辱が死につながっていくと思い込むのではないでしょうか。『忠臣蔵』ですと、尾上は塩冶判官のような役でございます。『忠臣蔵』四段目の、塩冶判官の切腹の場で、由良之助と赤穂浪士たちがその無念を晴らすために動き始めますけれども、その無念を赤穂浪士だけではなくお客様にも感じ取っていただいて、お客様も赤穂浪士の一員となって仇討ちに向かっていく……尾上もやはりそれと同じで、お初と一緒に仇討ちに進んでいっていただけるような、お客様にも無念を感じ取っていただけるような作り方をしたいなと思っております」と語った。
源頼朝役を勤める七代目尾上菊五郎は「女方が主体のこのお芝居で、一番最後にどうも暗いままお正月を迎えるのは嫌だなと思っておりましたが、大詰めで花見の場で明るく、源頼朝ということで、もう明るくにぎやかに令和8年もいい年になるように願いながら勤めたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします」とあいさつ。さらに「菊五郎劇団では、父の(尾上)梅幸は尾上の雰囲気ではなかったですし、(尾上)松緑のおじさんも岩藤という雰囲気ではなかったので、劇団では鏡山をぜんぜん取り上げなくって、わたくしも50歳近くになってから、はじめてお初を勤めさせていただいたようなことでございまして……彌十郎君が、『岩藤を教えてください』と言うので、『そんなもの、やったことがないよ』と言ったら、『やっていますよ』って(笑)。皆さんが新しい感覚を持って、この鏡山を作り上げてもらえたらうれしいなと思っております」と和やかに話して場を和ませた。
チケットの一般前売りは12月13日10:00にスタート。
令和8年初春歌舞伎公演
開催日程・会場
2026年1月5日(月)〜27日(火)
東京都 新国立劇場 中劇場
スタッフ
通し狂言「鏡山旧錦絵」
作:容楊黛
補綴:国立劇場文芸研究会
出演
通し狂言「鏡山旧錦絵」
召使いお初:八代目尾上菊五郎
中老尾上:中村時蔵
奴伊達平:坂東彦三郎
庵崎求女:中村萬太郎
頼朝息女大姫:中村玉太郎
牛島主税:片岡亀蔵
剣沢弾正:河原崎権十郎
侍女左枝:市村萬次郎
局岩藤:坂東彌十郎
頼朝御台所政子:中村魁春
源頼朝:七代目尾上菊五郎
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【会見レポート】「令和8年初春歌舞伎公演」に「鏡山旧錦絵」、八代目菊五郎「心晴れ渡るような仇討ちの物語を」
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