2005年公開の映画「
イギリスの田舎町で、老舗の靴工場の次期社長として生まれたチャーリーは、父の意向に反し、フィアンセのニコラとロンドンで生活する道を選ぶ。しかしその矢先に父が急死。社長となったチャーリーは、工場が倒産寸前と知り途方に暮れる。チャーリーはロンドンで出会ったドラァグクイーンのローラにヒントを得て、“キンキーブーツ”を作ろうとし……。
劇中ではシンディ・ローパーが手がけたポップな楽曲に乗せ、華やかなパフォーマンスと共に物語が展開。ローラの登場ナンバー「Land of Lola / ~ローラの世界~」では、舞台装置や衣裳、照明が赤で統一され、ショーの世界に観客を引き込む。1幕ラストの「Everybody Say Yeah / ~みんなでYEAH!~」では、キャストたちが工場のベルトコンベア上をランウェイのように歩き、にぎやかなパフォーマンスを繰り広げた。また2幕の、ローラと工場の従業員・ドンがボクシング対決をする「In This Corner / ~赤コーナーVS. 青コーナー~」の場面では、ローラの仲間であるエンジェルスが、レフェリー役やラウンドガール役、さらにはリングのコーナー役やゴング役までも務め、ステージを盛り上げた。
チャーリーは家族同然の存在である従業員を守るために懸命に闘う。東は1幕のソロ曲「Step One / ~第一歩~」を声高らかに歌い上げ、自身を工場を守る“ヒーロー”になぞらえて奮起するチャーリーの姿を体現。その一方、2幕の「Soul of a Man / ~真の男~」では、思いが空回って周囲の人々を傷付けてしまったチャーリーの葛藤を、力強くも繊細な歌声で表現した。
甲斐はダイナミックなダンスと豊かな声量で、ローラとしてパワフルなパフォーマンスを披露しつつ、体重を聞かれて「適度な体重よ」と目をむいてすごんだり、チャーリーが作ったワインカラーのブーツを見て「あずき色はおばあちゃんの湯たんぽの色よ」と怒ったりと、コミカルな演技で客席を盛り上げる。その反面、ローラが父へのコンプレックスを告白する場面で歌う「Not My Father's Son / ~息子じゃないの~」では、傷付いた少年のように頼りない表情を見せ、観客をグッと惹き付けた。
ローレン役の田村は、エアダスターをマイクのように使ってチャーリーへの恋心を歌いながら、「どうして男の人って、フリーじゃないときばかり素敵に見えるの」と嘆いて笑いを誘う。またドン役の
ゲネプロ前に行われた囲み取材には、東、有澤、甲斐、松下、演出・振付のミッチェルが登壇。東は本作について「音楽が素晴らしい。ジェンダーや、相手を“受け入れる”ことを扱う作品でもあるので、多様性について考えるきっかけにもなるはず。そういった要素が作品の魅力につながっていると思う」と思いを語る。また身長190cmの東が、高身長の甲斐や松下との共演について「(ローラの)ハイヒールのおかげで、同じ目線の高さでお芝居ができます」と話すと、甲斐が「“標高”が合うよね」と笑顔で答えた。
本作への出演を夢見ていたという有澤は「お客様の熱狂を想像しながら稽古してきた。通し稽古を重ね、いろいろな形の『キンキーブーツ』を試せた」と瞳を輝かせ、「作品を作り上げてきた方たちの愛と熱量がすごい。僕たちもその愛をお客様にお渡ししたい」「ジェリー(・ミッチェル)の演出で“魔法”をかけてもらった気分。カンパニーの士気が最上級に高まっている」と開幕への期待を口にした。
甲斐は「ローラは、自分の居場所を探し、なりたい姿になることこそ人間の美しさだと教えてくれる」と語る。また、「『ローラって休めないんだ』と稽古が始まって知った(笑)。一度登場したら、その後は幕間も含めて最後まで、舞台袖に入るたびに着替え、メイクをチェンジしている。おかげでひたすら役を生きる感覚があります」とコメント。これを聞いたミッチェルは「公演後に(ローラのオリジナルキャストである)ビリー・ポーターとタクシーに乗ったら『今日、本番やりましたっけ? 一瞬で、何も覚えていない』と言っていたことがある」というエピソードを紹介した。
松下は「皆様ごきげんよう、“松下優也役のローラ”です!!」「渋谷が明るいのは私がいるから」とローラさながらに言い、記者の笑いを誘う。また松下は本作が愛される理由について「それは私たちが最高だから!」と共演者たちを沸かせつつ、「ローラは派手なパフォーマンスをするけど、悲しい過去も抱えている。“本当の自分を探し求めるあなた”に寄り添ってくれる作品だと思います」と言葉に力を込めた。
ミッチェルは東、有澤、甲斐、松下を「皆さん、フルアウト(全力)で臨んでくれる」「この4人はそれぞれの方向性を持ち、自信をもって役を作っていて素晴らしい」と称賛。また上演に向けては「『キンキーブーツ』は“我々”の物語。お客様は誰しも、舞台上に自分自身を見出せるはず」と観客にメッセージを送った。
上演時間は休憩20分を含む、2時間30分を予定。東京公演は5月18日まで行われ、その後26日から6月8日まで大阪・オリックス劇場でも上演される。
ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」
2025年4月27日(日)〜5月18日(日)
東京都 東急シアターオーブ
2025年5月26日(月)〜6月8日(日)
大阪府 オリックス劇場
スタッフ
脚本:
音楽・作詞:
演出・振付:ジェリー・ミッチェル
日本版演出協力・上演台本:
訳詞:
出演
CHARLIE PRICE(チャーリー・プライス):
LOLA / SIMON(ローラ / サイモン):
LAUREN(ローレン):
NICOLA(ニコラ):
DON(ドン):
GEORGE(ジョージ):
PAT(パット):飯野めぐみ
TRISH(トリッシュ):多岐川装子
HARRY(ハリー):中谷優心
ANGELS(エンジェルス):
ANGELS / SWING(エンジェルス / スウィング):本田大河 / 長澤仙明
SIMON.SR(サイモンシニア):藤浦功一
MR.PRICE(ミスタープライス):石川剛
RICHARDBAILEY(リチャード・ベイリー):聖司朗
MARGE(マージ):舩山智香子
MAGGIE(マギー):伊藤かの子
GEMMALOUISE(ジェンマ・ルイーズ):熊澤沙穂
HOOCH(フーチ):竹廣隼人
MUTT(マット):趙京來
YOUNG CHARLIE(ヤングチャーリー):奥田奏太 / 星駿成 / 村山董絃
YOUNG LOLA(ヤングローラ):古澤利音 / 見﨑歩誠 / 髙橋維束
SWING:上條駿 / 加藤文華
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のんちゃん @kamikilittledj
大好きさぁ、キンキーブーツ!❤︎
#キンキーブーツ
【公演 / 会見レポート】“本当の自分を探し求めるあなた”に寄り添う、新たなキャストが立ち上げる「キンキーブーツ」開幕 https://t.co/CoqqVoFhoL