ジョナサン・ラーソンが脚本・作曲・作詞を手がけた「RENT」は、アメリカ・ニューヨークのオフブロードウェイ公演を経て、1996年にブロードウェイで幕を開けた作品。プッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」をもとにした同作では、ニューヨークのイーストビレッジに生きる若者たちの姿を描き、ピュリツァー賞やトニー賞などに輝いた。日米合作公演となる今回はトレイ・エレットが演出を担い、日本語字幕付きで英語上演される。
舞台背景にはレンガ調の壁が立てられ、中央には階段、下手側にはバンドブース、上手側には電飾が付けられた金属パイプ製の大きなオブジェなどが設置されている。開演と共にまずステージに登場したロジャー(アレックス・ボニエロ)がギターをかき鳴らすと、マーク(山本)たちがドッと舞台に駆け込んできて、観客を一気に物語の世界へと引き込んだ。
マーク役の山本は鍛え上げた肉体を生かし、軽やかな身のこなしを見せつつ、英語のセリフを自在に操って共演者とテンポの良い掛け合いを展開。また山本は、HIVポジティブの友人たちが苦しむ中で、ひたすらカメラを回し続けるマークの葛藤や疎外感を、静かな語り口で表現した。Crystal Kayはエネルギッシュな歌声を響かせ、エキセントリックでパワフルなモーリーンを好演。モーリーンがホームレスの立ち退き計画に抗議するためにパフォーマンスを行うシーンでは、観客を巻き込みながら「ムー!」と牛が鳴くような声を上げ、会場を大いに盛り上げた。
ゲネプロ前に行われた囲み取材には山本、ボニエロ、Crystal Kay、演出のエレットが出席。1998年の日本語版「RENT」初演に出演した山本は「当時生まれた子供が舞台に立っていてもおかしくないくらいの月日が経ちました。今回は英語上演でとてもチャレンジングですが、準備万端でお届けできると思う」と意気込みを語る。また山本は約1年かけて英会話を学んできたことを明かし、「子供に『コケコッコー』や『チョコレート』を英語でなんて言うのか聞かれた」「妻に英文法を教わることもあった」と、家族との微笑ましいエピソードを披露した。
ボニエロは日本を訪れた感想について「とても楽しく過ごしています。コーヒーショップでもバーでも、僕が舞台に立つと知ったお店のスタッフがとてもエキサイトしてくれて、全米代表選手になった気分」と笑い交じりに話し、「とても良い環境で舞台に取り組めてありがたいです」と述べた。
Crystal Kayは「『RENT』が大好きな人たちが集まっていて心強い」と言い、「アメリカのメンバーが日本の文化や言葉にとても興味を持ってくれていて、まるで文化交流をしながらサマーキャンプをしているみたい。公演が終わってみんなと離れる日が来ると思うと寂しい。カンパニー内に素敵な絆が生まれていると感じます」と笑顔を浮かべる。
エレットは「すべてのキャストが特別ですが、今回は耕史さん、Crystalさんのおかげで作品に新しい雰囲気が生まれていると思う」と出演者に視線を送る。続けてエレットは「初演から長い時間が経っても、『RENT』のメッセージは今の世に通ずるものがある」と話し、英語ネイティブではない山本については「耕史さんほど努力している人を見たことがない。素晴らしい本番を見せられるはず」と称賛しつつ厚い信頼をのぞかせた。
最後は山本が出席者を代表してあいさつした。山本は「僕は今真ん中に立たせてもらっていますが、素晴らしいキャストたちの力を観てほしい。ぜひこの機会に、皆さんに観てもらえたら」と観客にメッセージを送り、「We begin on Christmas Eve!」と冒頭のマークのセリフを引用して取材を締めくくった。
上演時間は休憩20分を含む約2時間40分。東京公演は本日8月21日から9月8日まで行われ、その後は9月11日から15日まで大阪・SkyシアターMBSでも上演される。
日米合作 ブロードウェイミュージカル「RENT」
2024年8月21日(水)〜9月8日(日) ※公演終了
東京都 東急シアターオーブ
2024年9月11日(水)〜15日(日) ※公演終了
大阪府 SkyシアターMBS
スタッフ
脚本・作曲・作詞:ジョナサン・ラーソン
初演版演出:マイケル・グライフ
演出:トレイ・エレット
出演
※ジョアン役で出演予定だったNasia Thomasは、足首の負傷により、出演できなくなりました。代わって、Leanne Antonioが出演します。
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