3月に京都・南座で上演される「三月花形歌舞伎」に向けて、出演する
「三月花形歌舞伎」は、若手の歌舞伎俳優が中心となる公演。今回は壱太郎、右近、隼人が出演し、「乍憚手引き口上(はばかりながらてびきこうじょう)」と題した口上のあと、“松プロ”では「河庄」と「将門」、“桜プロ”では「女殺油地獄」と「将門」が上演される。「河庄」では
近松門左衛門の演目が並んだことについて壱太郎は「近松没後300年ですので、やはり近松の作品をやるのが良いのではということで、『河庄』と『女殺油地獄』が並んでおります。それぞれの演目を一言で表すと、『河庄」は愛、『女殺油地獄』は情、『将門』は妖艶の艶。また“松プロ”“桜プロ”という名称は、近松の『松』と、近松辞世の句、『それ辞世 さる程さても その後に 残る桜の 花し匂はば』の『桜』から取りました」と説明した。
右近は「上方のお芝居自体にとても親近感を感じています」と言い、「役者としては近松の作品になじみのある環境ではありませんが、個人的には近松作品が好きで、中でも『河庄』は“大人な作品”というか、集大成的なものを感じる作品だと思っていました」と話す。自身の役については「主人公の治兵衛は、妻子持ちなのに遊女に入れ込み、優柔不断で……今だったらバッシングされるような人格の持ち主ではありますが(笑)、お芝居ではそこが魅力的に見えてくる不思議なお役。『河庄』は、僕たちの世代には少し先のタイミングで勤めさせていただくような作品に思われるかもしれませんが、僕も三十代に突入しましたので、熱演とか力演だけではない部分で、脚本への愛情だったり、大事にお役を演じるということだったりに取り掛かっていきたいと思っています。また、南座という場所で、上方の歌舞伎として大事にされている、なおかつ壱太郎さんのお家である成駒家のお家芸の『河庄』を、作品との縁が遠い尾上右近が演じるということに、お客様には興味や意義を感じていただけたらと思っています」と意気込みを述べる。
隼人は今回演目を考えるにあたって「僕がまず一番に思い浮かんだのが『油地獄』でした」と話す。「この作品は人形浄瑠璃で初演されてからあまりにも凄惨な場面があるため、一時期上演が途絶えていた時期もあるという近松作品の中でも異色の作品です。僕はこの3・4年ほど仁左衛門のおじさまのもとで修業と言いますか、いろいろなお役を教えていただいておりますが、20歳のときに仁左衛門のおじさまがこの作品を勤めて“歌舞伎の道が開いた”、というお話をよく伺っています。最近ではいろいろな先輩方も河内屋与兵衛を演じていますし、いつかこの役を勤めたいと思っていたところ、30歳になって初めての『三月花形歌舞伎』で勤めさせていただけるのはうれしいです」と喜びを見せる。さらに「与兵衛を演じるに当たって大事にしたいことは、与兵衛が複雑な家庭環境で育った男であるということ。また仁左衛門のおじさまがおっしゃっていましたが、殺しのシーンは、最初は無我夢中でお吉を殺しにいきますが、だんだんと殺しが楽しみになっていき、とうとう殺してしまったあとで、『大変なことをしてしまった』とハッと我に帰る……そこまでに、何回も気持ちが変わるんです。そんな与兵衛の気持ちの変化を、グラデーションのように見せられたら」と述べた。
2人の話をうなずきながら聞いていた壱太郎は「まさに2人が言う通りだなと思います」と笑顔を見せる。「近松は、そのとき起きた事件を描いていて、『油地獄』は殺人事件と不倫ドラマと、今ならNetflixなどで取り上げられそうな芝居です。その辺りを意識して、どこかに色っぽさ、エロティックさが必要だなと。その空気は、自分1人ではなく相手役と出していくものだと思いますし、今回、右近くんと隼人くんとやらせていただく中で、新たなお吉像が生まれてくるのではないかと思います」と期待を込める。
また「将門」について問われると、壱太郎は「これをそのままやらないだろう、というのは、『三月花形歌舞伎』をこれまで観てくださった方ならおわかりだと思いますが(笑)、単にストーリーや踊りが変わるというのではない形でお見せしたいなと。『歌舞伎ってダイナミックで綺麗で面白いな』と感じていただけるものになると思います」と自信をのぞかせた。
右近はかつて南座で上演された「坂東玉三郎特別舞踊公演」の「日本振袖始」に出演した際、もう1つの演目が「将門」だったことを振り返り、「袖から拝見していて、照明や踊りの感じが印象でした。南座のように、芝居小屋のような距離感、キャパ感の劇場と『将門』は相性がいいと思います」と話す。隼人も「スペクタクルがある、常磐津の名作」とうなずきつつ、「お二人は舞踊作品の出演が多いですが、僕はなかなか舞踊に出させていただく機会がないので、今回はしっかりと勤めたいです」と語った。
最後に京都での公演に楽しみにしていることを問われると「桜ですね、3人で桜が見たいです」と右近が即答し、壱太郎と隼人が「ロマンチックですね(笑)」と声をそろえる。右近は「『三月花形歌舞伎』はお芝居を作っている中でも、日常を共有している感じで強化月間と言いますか。ですので、この3人で桜を眺めたいと思います」と理由を続けた。壱太郎も「『三月花形歌舞伎』は演目をやっています、というだけではない良さがあるので、今回も来場者の方々に喜んでいただけるもの、舞台が終わってからも楽しんでいただけるものを1つのチームとなって考えているところです。演目以外も楽しむ、というところが『三月花形歌舞伎』の楽しみですね」と答えた。隼人は現在出演中の「新春浅草歌舞伎」に触れ、「『新春浅草歌舞伎』は若手の登竜門と位置付けられている公演で、浅草はあこがれの公演。『三月花形歌舞伎』は浅草よりも大人な雰囲気の公演だと思っていますが、『三月花形歌舞伎』に出たいなと思われるような公演に、さらにしていきたいです。そのためにもお二人と協力しながら、芝居のクオリティは第一ですが、それ以外の部分でも試行錯誤する時間を過ごしたいと思います」と語った。
「三月花形歌舞伎」のチケット一般販売は2月9日10:00にスタート。
「三月花形歌舞伎」
2024年3月2日(土)~24日(日)
京都府 南座
松プロ
「乍憚手引き口上」
一、近松門左衛門歿後三百年「心中天網島 玩辞楼十二曲の内『河庄』」
原作:近松門左衛門
改作:近松半二
指導:
出演
紙屋治兵衛:
粉屋孫右衛門:
紀の国屋小春:
二、「『忍夜恋曲者』将門」
出演
傾城如月実は滝夜叉姫:中村壱太郎
大宅太郎光圀:中村隼人
桜プロ
「乍憚手引き口上」
一、近松門左衛門歿後三百年「女殺油地獄」
作:近松門左衛門
監修:
出演
河内屋与兵衛:中村隼人
豊嶋屋七左衛門:尾上右近
お吉:中村壱太郎
二、「『忍夜恋曲者』将門」
出演
傾城如月実は滝夜叉姫:中村壱太郎
大宅太郎光圀:尾上右近
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