1月に上演される、ロームシアター京都×シアターオーケストラ・コンサートシリーズ「Oblivion(オブリビオン)~失われた時間と音楽、そして新たな始まりのために」の合同取材会が11月29日に開催され、構成・演出を手がける
これはロームシアター京都が、京都市交響楽団と異ジャンルのアーティストのコラボレーション作品を創出し、オーケストラの新たな魅力を発見するシリーズ。「Oblivion」では白井が演出を担当する。
取材会冒頭では小倉が、白井にオファーした理由を説明。「新型コロナウイルスが猛威を振るう状況下で、大人数による創作と上演の貴重さ、緊張感、そして苦労を共有できる人物が良いなと考え、同じ思いを抱える舞台芸術の演出家である白井さんにお願いしました」と話す。これに対して白井は「今も続くつらい時期の中で我々が感じてきたことを大切に、一緒に1つの舞台表現が作れたらうれしいなと思いました」と同意する。
今作のテーマは、“失われた時間を取り戻す”。オファーを受けた当時、「パンデミックの影響を考えざるを得なかった」と言う白井は、まず京都市交響楽団が2020年に中止することになった演目リストを見せてもらったと話す。そして「リストを眺めるうちに、本来ならその時に生まれていたであろう演奏者の気持ち、観客の気持ち、劇場空間の気持ちを、何らかの形で再生できないかと思ったのが出発点でした」とテーマの成り立ちを物語った。
演出にあたって白井が意識したのは、観客が自分の記憶を重ね合わせながら物語を想起できるような構成。白井自らアイデアを出した曲目・曲順には、パンデミックに限らず戦争などの世界情勢も投影され、当たり前の日常が失われる前と後、そして再出発するまでの道程がイメージされている。
また本作の出演者は、京都市交響楽団の楽団員を中心としたメンバーのみ。俳優やダンサーは出演しない。というのも、白井は「以前から演奏会で指揮者や演奏者、楽器が出入りや、チューニングの場面を目撃できることに、演劇にはない特別な臨場感や面白さを感じていた」と言い、「オーケストラが演奏している姿をもっと劇的に見せられないか、という思いが根本にあったかもしれません。演奏家の皆さんに焦点を当てて、交響楽団をシアトリカルな枠組みの中に取り入れたい」と、意気込みを述べた。
さらに本作では、映像と演奏のコラボレーションも見どころの1つ。映像に京都の映像作家・美術家の宮永亮を起用した理由について、白井は「宮永さんの作品は、社会を若干俯瞰したような、時間と空間を何層にも重ねるユニークな映像手法が持ち味です。宮永さんの映像を観ると、記憶の積み重ねという言葉を思い出します。“楽曲たちの記憶”というものが演奏と映像のコラボレーションで表わされ、さらにロームシアターのホールの中に観客が入ると、また違うイメージの膨らみを持たせられるのではないかな」と期待を寄せた。
本作の指揮は、園田隆一郎が担当。公演は来年1月14日に開催される。
ロームシアター京都×京都市交響楽団 シアターオーケストラ・コンサートシリーズ「Oblivion(オブリビオン)~失われた時間と音楽、そして新たな始まりのために」
2023年1月14日(土)
京都府 ロームシアター京都 メインホール
指揮:園田隆一郎
構成・演出:
映像:宮永亮
管弦楽:京都市交響楽団
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Toshiki MIYAZAKI @toshikimiyazaki
ロームシアター京都で来年1月14日開催>> 【会見レポート】白井晃×京都市交響楽団のコラボレーションで記憶と希望を呼び起こす「Oblivion」 https://t.co/CmPqT3BjCP