KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「湊横濱荒狗挽歌~新粧、三人吉三。(みなとよこはまあらぶるいぬのさけび~しんそう、さんにんきちさ。)」の公演に先駆け、演出の
作劇を野木萌葱、演出をシライが手がける本作は、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場の2021年度メインシーズン「冒」の開幕を飾る作品。劇中では、河竹黙阿弥による歌舞伎「三人吉三」をモチーフにしたハードボイルド現代劇が展開し、和尚吉三にあたる柄沢純役を玉城、お嬢吉三にあたる弁才瞳役を岡本玲、お坊吉三にあたる矢部野晶役を森優作が演じる。
「湊横濱荒狗挽歌」がメインシーズンの1作目として上演されることについて、シライは「もともとKAATという劇場が好きでしたし、同世代の長塚(圭史)さんが芸術監督になって、共に作品を作る仲間を探しているということで、自分も一緒にやらせていただけることになってとてもうれしいです」と喜びを明かす。初タッグとなる野木の印象について問われると、「野木さんも僕も社会派と言われることがありますが、野木さんの作品は社会的なメッセージが先に来るわけではなく、歴史的な題材を使って“人間模様”を描いている作家だと思います」と分析。続けて、「『三人吉三』は、社会の底辺に近いところで生きる人たちが必死に他者を求める物語。僕も今まで不良が登場する芝居ばかりやってきたので、ついにあの『三人吉三』をやれるんだ、久しぶりに大暴れできるぞ!(笑)と、うれしくなりましたね」と笑みをこぼした。
シライと玉城の出会いは、昨年上演されたシライ脚本、千葉哲也演出による「BIRTH」がきっかけ。かつて自身が務めた役を玉城が演じているのを観て、シライは「不思議な俳優だなあ、面白い俳優だなあと思いました。玉城くん自身はストレートを投げてるつもりだと思うんだけど、変化球で勝負しているみたいな感じ」と印象を語る。さらに「若い俳優さんはあまりはみ出しちゃいけないんじゃないかって思ってるかもしれないけど、もっとやっていいんだよと感じることが多くて。なので玉城くんが持っているものは、とても大切な武器だと思う」と玉城を絶賛。これを受けて、玉城は「『BIRTH』がきっかけで声をかけていただいて、とてもうれしかったですね。役者として本当に幸せだなと思いました。ビジュアル撮影のとき、『グチャグチャにしてやる!』というシライさんの気合いが伝わってきたので、早く稽古でグチャグチャになりたいです。心の準備はバッチリです!」と稽古に向けて心を躍らせていた。
共にキーパーソンを演じる玉城と岡本は過去に共演経験があり、玉城と森は今回が初共演となる。岡本の印象について、玉城は「玲ちゃんは芯のある方。久々にご一緒するので、どのくらい進化しているのか楽しみ。これからもっと距離を縮めていけたらと思います」と明かし、森については、「ビジュアル撮影で初めてお会いしたのですが、人を惹きつける力を持った方だなと会った瞬間に感じました。その魅力が舞台上でどのように表れるのか楽しみです」と共演が待ち遠しい様子。
最後にシライは昨今の演劇シーンについて、「作・演出家の存在感が増す一方で、俳優の存在感が薄くなっている気がするんです。この20年の間に“看板俳優”と呼ばれる人たちが減ってきて、残念に思っています」と言及しつつ、「僕が演出をやっている一番の理由は、俳優さんが見たいから。『湊横濱荒狗挽歌』では、作品を突き破る俳優のエネルギーや、劇場からはみ出していくような人間の力強さを表現したいです。今回のキャストには看板俳優になれる人たちがそろっているので、それぞれの看板を存分に掲げてもらって、暑苦しい芝居がしたいですね」と抱負を述べる。シライに触発され、玉城も「はみ出せなかったらどうしようという不安もありますが……(笑)、すさまじいパワーを持った共演者の皆さんに負けないように、僕なりの精一杯を出し切って、看板を背負えたらと思います」と意気込みを語った。
公演は、8月27日から9月12日までKAAT神奈川芸術劇場 大スタジオで行われる。
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KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「湊横濱荒狗挽歌~新粧、三人吉三。」
2021年8月27日(金)~9月12日(日)
神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
作:野木萌葱
演出:
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【会見レポート】大切なのは“はみ出す”こと、シライケイタ&玉城裕規が意気込み「暑苦しい芝居がしたい」
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