赤堀が同劇場で作・演出を手がけるのは、2014年の「殺風景」、15年の「大逆走」、17年の「世界」に続き、今回が4回目となる。「美しく青く」には、赤堀と初タッグとなる
物語の舞台となるのは、海と山に囲まれたとある集落。8年前、災害に見舞われた集落は、現在は野生の猿による被害に悩まされている。この町には、猿害から町を守るために活動する自警団のリーダー・青木保(向井)や妻の直子(田中)、自警団の男たち(
赤堀はシアターコクーンの広い劇場空間を活用しながら、うらぶれた海岸、木が生い茂った山中、青木夫妻と認知症を患う母親が住まう家、町の人々が集う居酒屋と、1つの町のあらゆる場所を具象的な舞台美術で表現。その中で繰り広げられる他愛ない会話を通じて、停滞感が漂う町で不安や不満を抱えながら暮らす人々の心の機微を、細やかに描き出した。
自警団で強いリーダーシップを発揮する一方、家庭内では過干渉し過ぎない、比較的温和な夫として振るまう青木を、向井は自然体で演じ、彼の多面性を浮き彫りにしていく。田中もまた、実母の介護で追い詰められた青木の妻が、今にも決壊しそうな感情を理性でコントロールする様子を、目に涙を溜めて熱演。また、赤堀作品に出演経験豊富な大倉らが絶妙なテンポで繰り広げる会話や、認知症の母を演じる
ゲネプロ前に行われた初日前会見には赤堀、向井、田中の3人が出席。これまでにもさまざまな作品で市井の人々の暮らしを題材にしてきた赤堀は「今回は人間描写をスケッチするというより、もう少し根源的なもの、人間としての営みや幸福のあり方を掘り下げていきたい」と思いを口にする。また「美しく青く」というタイトルには「人知の及ばないものへの希望や畏怖の念が込められている」と明かした。
自身が演じる青木の人物像について、向井は「普通の人ではあるのですが、とにかく一生懸命生きている人。物事とうまく向き合えなかったり、直面した出来事から逃げてしまったりするような、誰にでもある衝動を抱えながら生きている」と分析。さらに「この作品には不毛なセリフが多いですが、それを繰り返し積み上げていく中で、登場人物たちの感情が動いていくところを楽しんでもらえたら」と作品の魅力を解説した。また向井は今回赤堀作品に参加したことで、「もっと違う視点で芝居を構築していかなければと思った」と、俳優として刺激を受けたとも語っている。
そして田中は「直子の心の奥底には“悲しみ”があって、そのこととしっかり対峙できたからこそ、現実に向き合えているのではないかと私は解釈しています」と考察しつつ、「不安定さこそが直子なんじゃないかと思うので、リアリティをもって彼女を演じたい」と決意を新たにした。
上演時間は休憩なしの約2時間15分。Bunkamura シアターコクーンでの公演は7月28日まで行われ、その後、8月1日から3日まで大阪・森ノ宮ピロティホールで上演される。
Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019「美しく青く」
2019年7月11日(木)~28日(日)
東京都 Bunkamura シアターコクーン
2019年8月1日(木)~3日(土)
大阪府 森ノ宮ピロティホール
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