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長塚圭史がKAAT芸術参与就任への思いを語る「まずやるべきことは散歩かな」

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左から白井晃、長塚圭史。

左から白井晃、長塚圭史。

4月1日より、長塚圭史が神奈川・KAAT神奈川芸術劇場の芸術参与に就任する。これに伴い本日3月25日、同劇場で記者懇談会が実施された。

記者懇談会には長塚のほか、KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督・白井晃が出席し、取材に応じた。長塚は4月1日から2年間にわたり芸術参与を務めると共に、次期芸術監督予定者となる。14年から劇場のアーティスティック・スーパーバイザーを務め、16年に芸術監督となった白井は、「スーパーバイザーになったときは劇場のことが何もわからず、芸術監督として方向性を打ち出すまでに2年かかった。21年度以降は新しい監督に立ってもらいたいと思いましたが、準備に2年かかった経験があったので、長塚さんに19年度から参与をお願いした」と長塚の就任経緯を語った。白井は長塚について「僕はあまり演劇人の友達はいないのですが(笑)、長塚さんは私にとってよきパートナーで相談相手」と信頼を語り、「一番大きいのは、彼が僕より18歳も若いこと。自分でも今の演劇や劇場の状況を知ろうと思っていますが、足りない部分もある。長塚さんの若い視点や馬力が、僕やこの劇場には必要」と期待を寄せる。

長塚は「この2年は白井さんをサポートしつつ、一緒にこの劇場を複眼的に見つめていきたい」とコメント。これまでもKAATで作品を手がけてきた長塚は、2011年の「浮標」を振り返りながら「素晴らしい創作環境でした。できたての劇場なのに、掃除のしにくい砂を敷かせてくれたんです(笑)」とエピソードを語り、「『浮標』は創作の転機になった思い入れのある作品。この劇場と共に歩んできたという意識が強くあります」と思いを口にする。また長塚は白井に「いつも新しい視点を与えてくれる。得意な人に得意なことを与えるだけでなく、秘めたポテンシャルを生かすための目を持っていらっしゃいます」と信頼を寄せ、「僕は、現状に慣れ親しんで大切なものを忘れることへの危機感があり、作っては壊し、作っては壊しを繰り返してきました。そういう思いきりのよさを携えながら、まずは参与をまっとうし、その先につなげられたら」と抱負を述べた。

白井は自身の芸術監督としての活動について「公共劇場の芸術監督ですから、神奈川県民に還元するため全力でやってきた。2019年度のラインナップは『これ以上ないくらいがんばった』というピークに来ていると思う」と述懐しつつ、「今後もさらにがんばりたいですが、勢いが持続できるか不安」と胸の内を明かし、改めて「若い力が必要」と繰り返す。白井は「2021年には僕は63歳で、もし2期目を務めたら68歳。そんなおっちゃんがやってどうすんねん!と思う」と笑いを交えつつ、「若者と我々の世代では、演劇に求めるものの感覚が違いますし、ここはみんなの劇場なので僕の理想だけ求めても仕方ない。1人で理想を考えるより、若者と一緒に考えられたら」「長塚さんに参与になっていただくことで、連続性を持って劇場がつながっていけば。僕の監督任期のあとは、しっかりバトンタッチしつつ新たなものを作ってほしい」と長塚にエールを送った。

長塚は白井の言葉を「若い世代に驚くことは僕にもある。僕よりもっと若い人たちへの視野を広げつつ、先輩が受け継いできた大切なものを残したい」と受け止め、「神奈川県民が誇れる劇場にしていきたい」と目標を掲げる。さらに芸術参与として活動するにあたり長塚は、「KAATは中華街やみなとみらい、山下公園、横浜スタジアムなどさまざまなものに囲まれている。この2年はこの街、エリアを見つめたいと思っていて、まずやるべきことは散歩かな(笑)」と語りつつ、「この場所にちなんだことを、長期的な展望の中で作れないかなと思っています」と展望を述べる。これを受けた白井は、「1人より、2人で騒ぐことで話が通ることもあるのではないかと(笑)。この劇場が、皆さんにとって無視できない場所になればいい。夢を持って二輪駆動でやっていきたいですね」と意気込んだ。

なお長塚は、12月にKAAT神奈川芸術劇場 ホールにて上演される秋元松代作「常陸坊海尊」の演出を手がける。

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