オープニングの影アナウンスの後、きゅっきゅっという足音とともにゆずのキャラクター「NEWゆずマン」がステージ上に姿を見せるとオーディエンスはそれを合図とばかりに立ち上がる。「ゆずの2人はファンのみんなに支えられて15周年を迎えることができました!」とゆずマンが感謝の言葉を告げ、「ゆずのライブと言えばまずはこれから!」という合図を口にし流れ出したのはラジオ体操第1の音楽。ドームを埋め尽くした観客のみならず、会場のあちこちにいる警備員やスタッフも音楽に合わせて腕を伸ばし、来るべきライブスタートに向けて体をほぐした。
ラジオ体操が終わるとすぐに、グラウンド中央に作られたセンターステージからせり上がりでゆずが登場。2人は向かい合ってお辞儀し握手を交わす。そして北川が「東京ドーム11年ぶりに帰ってきました! 最後まで楽しんで帰ってくださーい!」と絶叫し、1曲目として「嗚呼、青春の日々」をかき鳴らした。
2曲目に入る前には、北川が「ドームを3つに分けたいと思います」と語りかけ、アリーナ、スタンド下、スタンド上と声をかける。さらにバスドラムのペダルを踏んでリズムを取りながらピアニカで「ドームボンバイエ」のメロディを吹き始めると客席が一斉に沸く。「元気があればなんでもできる!」と力強く歌う声は、この日のライブの盛り上がりを予兆しているかのよう。そして続く「行こっか」では「♪継ぎ接ぎのズボンじゃ格好つかないだろう」と歌う下りで北川が履いていたつぎはぎのジーンズがカメラに大映しになり、観客の笑顔を呼ぶ。さらに次のブロックは「ねこじゃらし」「スミレ」とメロウなナンバーを立て続けに演奏し、しっとりとした空気で会場を包んだ。
最初のMCで、北川は「今日は4万9067人が来てくれているそうです! ありがとうございまーす!」と感謝を伝える。また岩沢に顔を向け「ねー、うれしいねー」とつぶやく一幕も。そして、オフィシャルサイトで行っていたドームライブで演奏してほしい曲の募集企画「ドーム公演リクエスト」について触れ「総数7万3399!」とその応募数を発表すると、観客から驚嘆の声が上がった。続けてこの日は「みなさんの意見を聞いたり、ときには無視したりしながら」さまざまな曲をパフォーマンスしていくと宣言し、大きな拍手を浴びた。
そしてまずはカップリング曲のリクエストから。岩沢が作詞作曲を手がけた「始発列車」、歌い始めでオーディエンスの嬌声が起こった「月影」、北川が「僕らは横浜出身なんですけどこの曲には横浜の原風景が詰まっています」と紹介した「赤いキリン」と、普段のライブではあまり演奏されることのないレア曲の連発に会場は沸き上がる。さらに「『夏色』のカップリングでした」という言葉から始まった「贈る詩」では、北川の呼びかけで観客が男女に分かれて大合唱し、一体感で会場の空気を満たした。
「15周年ということで在庫整理をしてたら倉庫で懐かしい物を見つけて」と口にし、センターステージの奈落に降りていく北川。「こちら(ステージ向かって右)側のスタンドの人からは丸見えだと思うんですけど、見えてない体でお願いします!(笑)」と言う北川と、準備ができた頃を見計らってホイッスルで合図を送る岩沢。ピッピッピッピッと鳴らされるホイッスルの音にあわせ、せり上がりでステージに戻った北川は「横浜YUZU」のナンバーがついた車の作り物を履いた姿。昔からのファンがわぁっと盛り上がる中、披露されたのは「運転技術の向上」だ。岩沢のギターに乗せ、北川がクラクションを鳴らしたりステージ上をところ狭しと駆け回ったりすると、そのたびに観客からは笑いと歓声が起こっていた。
続いては未収録曲リクエストの下りへ。ここではまず「ほかのはマークシート方式で選んでもらったんですけど未収録曲だけ書き込み形式にして。そしたらちょいちょい皆さん間違ってて(笑)。中でもどうしても発表したいものがありまして」(北川)と、面白い間違いが紹介された。曰く「これ(音源に)入ってますよね」と言われた「カナブン」、「aikoさんの曲ですよね」と笑われた「カブトムシ」、「僕ら演ったことないよね!?」と困惑した「Everyday、カチューシャ」、「それっぽいけどありません、でも思わず岩沢に確認しちゃった」と北川も迷ったという「眠れぬ夜」と、珍回答が続出する。さらに北川がフリップで5番目の回答を隠している紙をめくろうとするも、間違えて6番目の紙をめくってしまう事態に。慌てる北川を見て、岩沢が「生放送ですから(笑)」とフォローを入れるひとときを挟み、改めて「星くず」という間違いが発表されるも、会場の笑いは収まらない。続けて北川が貼り直した6番目の紙を改めてめくり「☆」という回答に対して「これはどういうことなんですかね?」とわざとふくれっつらをしてみせると、約5万人のオーディエンスはどっと沸き立った。そして演奏されたのは、路上時代の名曲「うすっぺら」。また北川が「育てのおばあさんが入院したときに元気になってほしいと思って作った」と制作エピソードを明かした「おじや」と、胸に染みるナンバーが続く。
次はアルバム曲のリクエストに応えるブロック。北川の「あれ、今日って何曜日だっけ? 明日は何曜日だっけ? 明後日は何曜日だっけ!」というシャウトから始まった「月曜日の週末」、「四捨五入したら40歳のゆずがお届けします!」と観客を笑わせた「もうすぐ30才」と、ファンからの人気も高い楽曲を連投する。そして、票数がばらける傾向にあったアルバム曲の中でも非常に多くのリクエストを獲得したという「うまく言えない」を情熱的に披露。ゆずらしい温かみのあるラブソングで、しっとりとした雰囲気を紡ぎ出した。さらに村上隆との出会いから生まれた「ユーモラス」では、北川が村上によるペイントが施されたギターで熱唱。幅広いトーンのセットリストを2人だけで演奏し、満員のドームを惹きつける。
そしてシングル曲のリクエストに応えていく時間に。岩沢の伸びやかな歌声が響いた「飛べない鳥」に続いては、1位を発表する時間となった。北川が「得票数9844!」という言葉のあとに「我々にはとても予想外でした……次に演るけど、君たちが決めたんだからな(笑)」と思わせぶりなことを口にする。そして「ぜひ一緒にやってほしいと思います」と知らされたのは、2011年リリースの「LOVE & PEACH」だ。意外な曲名にどよめく客席を前に、「ステージで一緒に踊ってみたい人いる?」と追い討ちをかける北川。ゆずの2人が軽く演奏するのにあわせ観客が踊り、その中で「踊りがグレイトな奴、テンションがグレイトな奴、キャラがグレイトな奴」(北川)をスタッフが選んでくるというサプライズに、ドーム中がざわめく。最終的に数人のゆずっこがダンサーと一緒にステージに立つことになったほか、この曲の振り付けを担当したラッキー池田、そしてイチローのそっくりさんが現れ、約5万人を巻き込んで踊りまくるお祭り騒ぎとなった。
北川の「行ってみましょう、季節はすっかり……?」との問いかけに「ギャー!」と悲鳴に近い絶叫が起こる。そうして披露されたのは、もちろん「夏色」だ。イントロで早くも特効のテープが発射されたほか、演奏後には恒例の「もう1回!」コールも炸裂。北川は「ものすごい人数がいるから『もう1回!』コールもよくわかんない!」とうれしそうに叫び、満面の笑みで再度サビを弾き始める。楽曲の終わりではスタッフが北川に特効用のハンドガンを渡そうとするも、満員のオーディエンスから「もう1回!」コールが発せられたのを聴き、スタッフを下がらせる。「ごめんね、『もう1回!』」と2度目の大サビを楽しそうにかき鳴らす2人に、観客も大合唱で応えた。
楽曲が終わると、このライブを通して初めて客電が全て落ちる。熱狂を冷ますように客席に静寂が訪れると、前方ステージを覆っていた幕がゆっくりと開き、フルオーケストラの姿が現れる。どよめきがさざなみのごとく会場に広がる中、ゆずの2人が立つセンターステージの中央がゆっくりと上昇。荘厳なストリングスのイントロから、フルオーケストラの伴奏で「栄光の架橋(オーケストラバージョン)」が鳴らされると、これまでとは異なる興奮が場内を満たした。続いて、オーケストラの演奏に合わせて北川と岩沢が花道を前方ステージまで歩いていく。2人が前方ステージに到着し、始められたのは「虹(オーケストラバージョン)」。ティンパニやオーボエ、ホーンによるスケールの大きなイントロを経て、北川と岩沢の歌声が絡み合い、壮大な楽曲の全貌をあらわにしていく。ゆずの2人のみで演奏されたこれまでのライブとはまた違った感動が東京ドームを包み、本編は終わりを告げた。
アンコールを求めるオーディエンスに応え、まず登場したのはゆずマン。「ドーム公演リクエスト」投票に添えられていたメッセージの中から「11年前の東京ドーム公演のときに告白された人と昨年結婚した」「会社員時代、毎週日曜22時に伊勢佐木町に通っていた」「『LOVE & PEACH』を聴くと当時の世情とゆずが込めた優しさを感じて涙が出る」といった印象的だったメッセージ3つを紹介し、拍手喝采を浴びた。さらに、フジテレビ系バラエティ番組「ピカルの定理」出演者であるハライチ澤部と渡辺直美が花道に姿を見せ、観客を驚かせる。2人から「『FROM IRON FACTORY』というコントにゆずの2人にゲスト出演してもらうことになりました」「私たちがラッパーの役で対バンがゆずという設定で、そのコントの一部をここで録っちゃおうと思います」と発表されると、喜びの声が続出した。なおゆずが登場するのは6月13日(水)放送回。果たしてゆずの2人がどんな演技をみせるのか、ゆずっこは見逃さないようにしておこう。
澤部&渡辺が下がると、SEとして「夏色」が場内に響き渡る。そして前方ステージに自転車に乗った北川と岩沢が姿を見せ、そのまま左右の花道を自転車で駆け抜ける。さらにグラウンドに降り、アリーナ外周をぐるりと自転車で走って最後尾に設営されたサブステージに到着すると、怒号のような歓声が起こった。そして「サヨナラバス」を演奏した後、北川が「ちょっと季節外れですが、大切なバラードを聴いてください」と、11年前の東京ドーム公演でも披露した「いつか」をかき鳴らす。サブステージでの演奏は短い時間だったが、全方向のオーディエンスを余すことなく楽しませようと意気込むゆずの気持ちが表れたひとときとなった。
2人は再び自転車をこぐと、今度はセンターステージに帰着。「今日は2人で演ると言いつつ先程オーケストラの皆さんがいましたが(笑)、もうちょっと2人で歌いたいと思います」という北川の宣言から「センチメンタル」をパフォーマンス。また、続く「Hey和」では、多くの観客が持参のライトを灯し、客席がろうそくのような幻想的な明かりに包まれる。「思いをひとつにして、このドームを突き抜けて世界中に響くように歌ってください」という北川の呼びかけから、大サビでは「Hey和」と大合唱が繰り広げられ、ゆずとオーディエンスが一体となって壮大な世界観を作り上げた。
岩沢がハープとギターで「蛍の光」のメロディを奏で始めると、場内のあちこちから「えー!」とブーイングにも似た声が沸く。続いて北川から「11年前はライブをやるだけでいっぱいいっぱいでした。でも今日はみんなに楽しんでほしくて。楽しんでいただけましたでしょうか!?」という問いが投げかけられると、拍手と歓声で応じるオーディエンス。そして鳴らされたのは「シュビドゥバー」。11年前の東京ドーム公演のライブ映像をバックに、2人は最後の力を振り絞いながら歌い、ギターを弾く。約5万人の観客から大合唱とスイープが起こるのを目にしながら、笑顔で歌いきった。
これでフィナーレかと誰もが思ったが、北川が「せっかくだからもういっちょ行きますか! なあ、15周年だもんな!」と口にするとこの日一番の驚喜の声が。「俺たちが路上で最初に録った曲をやりたいと思います!」というシャウトから演奏されたのは、ゆずっこ垂涎の「てっぺん」だ。地団駄のように足を踏み鳴らす北川と、ギターをかき鳴らす岩沢。ゆずの原点とも言える楽曲を最高にハッピーな雰囲気の中熱唱し、東京ドーム公演初日を大成功のうちに終えた。
YUZU 15th Anniversary Dome Live YUZU YOU ~二人で、どうむありがとう~
2012月6月2日@東京ドームセットリスト
01. 嗚呼、青春の日々
02. ドームボンバイエ
03. 行こっか
04. ねこじゃらし
05. スミレ
06. 始発列車
07. 月影
08. 赤いキリン
09. 贈る詩
10. 運転技術の向上
11. うすっぺら
12. おじや
13. 月曜日の週末
14. もうすぐ30才
15. うまく言えない
16. ユーモラス
17. 飛べない鳥
18. LOVE & PEACH
19. 夏色
20. 栄光の架橋(オーケストラバージョン)
21. 虹(オーケストラバージョン)
<ENCORE>
22. サヨナラバス
23. いつか
24. センチメンタル
25. Hey和
26. 蛍の光
27. シュビドゥバー
28. てっぺん
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