Furui Riho特集|テレビアニメ「CITY THE ANIMATION」主題歌は“天からのプレゼント”、自然と湧き出た自分らしさ

Furui Rihoの新曲「Hello」が7月7日に配信リリースされた。

「Hello」は7月30日にリリースされるニューシングルの表題曲。京都アニメーションによる約6年ぶりの新作テレビアニメーション「CITY THE ANIMATION」のオープニング主題歌として書き下ろされた1曲で、「大人になることへの不安を感じながらも、仲間と自分らしさを探しながら進んでいこう」という前向きなメッセージが込められている。

音楽ナタリーでは、昨年4月に2ndアルバム「Love One Another」をリリースして以降、初のZeppツアー「Furui Riho Zepp Tour 2025 "Vloooooom"」の開催や、Ayumu Imazuの楽曲「LIVE IT UP! (feat. Furui Riho)」への参加など、着実に成長を続けるFuruiにインタビュー。「Hello」に込めたこだわりや、現在のモードについて話を聞いた。

取材・文 / 谷岡正浩撮影 / 垂水佳菜

新曲「Hello」は天からのプレゼント

──新曲「Hello」、素晴らしいですね。Furui Rihoというアーティストの中核を成すものでありつつ、新しさもしっかり感じられる1曲になっています。まずは、どのような経緯で制作が始まったのかを伺えますか?

この曲は「CITY THE ANIMATION」のオープニング主題歌として書き下ろしたんですけど、最初にアニメのスタッフさんとお話をさせていただいて、自分なりにテーマや曲調のイメージを膨らませて方向性を決めていきました。でも、すぐに曲作りに向かうのではなく、しばらくは頭の中で置いておくというか、寝かしていた期間があって。それが今から1年くらい前で、まだ東京に家がなくて、北海道と行き来していた頃だったので、わりとバタバタしてたんですよね。それで仕事を終えてホテルの部屋に戻って来た瞬間にメロディが降ってきたんです。トラックのイメージも同時にブワーッときて「あ、これだ!」って。そのときに浮かんだ最初のピアノのフレーズや、リズムパターンをスマホのボイスメモで1つずつ録音していきました。

Furui Riho

──「メロディが降ってくる」というのはよくあるんですか?

いえ、1年に2、3回ですね。ただ、降ってきたからといって、それが全部いい曲というわけではないんです(笑)。でも今回は作りたいイメージのもので、曲としてもタイミングとしてもバッチリでした。だから“天からのプレゼント”みたいな感じなんです。

自分の中にあるものが自然と出てきた

──その“天からのプレゼント”の中身をこれから探っていくわけですが、まず原作マンガ「CITY」に触れて、そしてアニメのスタッフさんと話す中でどのようなことを感じましたか?

打ち合わせで最初にリファレンスとして挙がったのが洋楽の曲だったんです。私の中で「CITY」は日本の普通の街や風景、生活がベースにあって、そこに“ありそうでない”シュールさとハチャメチャ感が合わさっているイメージだったから、リファレンスは洋楽なのかと少し意外に感じました。でも、私がイメージしていた「CITY」の世界観にFurui Rihoの要素が加わったらどうなるんだろう?という面白さも感じて。そもそも私にお話をいただいたということは、そういう要素を求められているんだなというのがわかったし、スタッフの方が思いっきりFurui Rihoらしさを出してもいいとおっしゃってくださったんです。だから最初にイメージしたのは、「CITY」という作品にあふれるわちゃわちゃとしたにぎやかな感じをビートで表現したいということ。そこに私らしいテイストをきっちりと感じられるものを目指したいと思いました。

Furui Riho

──絶対に暗い方向性ではないなと(笑)。

そう(笑)。ちなみに曲が降ってきたときに泊まっていたホテルはすごく暗い感じだったんですけどね。作っていた環境とのギャップがすごい(笑)。

──そうだったんですね(笑)。ほかには何かイメージしたことはありましたか?

ライブでみんなとシンガロングできる曲がいいなと考えていました。打ち合わせのときにも「幅広い世代の方が歌えるような曲」という意見が出ていて、確かにそれはいいなと思ったんです。曲の方向性が決まってからは、今挙げたような要素をどれだけわかりやすくキャッチーに落とし込めるか、頭の中でぐるぐると考えていました。でも、なんとなくのゴール地点は見えてはいたんですよ。“あそこ”に行けばいいんだなって。

──そのイメージや方向性というのは、新しいものにチャレンジするという感覚? それとも、これまでの自分をより突き詰めるという感覚のどちらに近いものでしたか?

打ち合わせのときに、スタッフさんから「イメージ的には『LOA』(2023年11月リリースの配信シングル)の雰囲気が作品にはぴったり合うんです」とおっしゃっていただいたんです。むしろそのときは「LOA」がいい、くらいの感じで(笑)。思えば「LOA」も降ってきたタイプの曲だったんですよ。だから新しいことに意識的にチャレンジしたというより、もともと自分の中にあるものが自然な形で出てきたのかなと思いますね。

──「LOA」も「Hello」もゴスペルテイストの楽曲で、そこはFuruiさんのベースとしてあるものですよね。2ndアルバム「Love One Another」のインタビューでは、「次のフェーズに行くために未完成な自分も入っている作品」とおっしゃっていたのがすごく印象に残っていて(参照:Furui Riho「Love One Another」特集)。だから「LOA」の次のフェーズとして出てきたものが「Hello」なんじゃないかなと思ったんです。

そうかもしれないですね。「Hello」は自分の中の一番純粋な部分というか、最後の一滴まで絞り切れた感じがします。だからすごく満足のいく作品になりました。

テーマは“ひさびさの再会”

──歌詞についてはいかがですか?

歌詞が一番悩みましたね。京都アニメーションさんのひさしぶりの新作ということで、冒頭の「Hello, Dear my friends」という歌詞は、京アニファンの方々に呼びかけるようなイメージで降りてきたんです。

──Furuiさんの歌詞におけるソングライティングは自問自答から始まり、「LOA」で自分以外の身近な人に呼びかけ、そして「Hello」ではより多くの人たち、つまり“friends”に語りかけているという広がりが感じられます。

おっしゃる通り、私の歌詞は自分に向けたものが多くて、「LOA」でようやく特定の誰かに向けた曲も書けるようになった。で、「Hello」はもう少し範囲の広い“誰か”に向けたものなので、この曲を聴いた人がそれぞれどんなことを感じるのかすごく楽しみです。

Furui Riho

──「Hello」はメロディと歌詞の密接度が高いので、もしかしたら歌詞も一緒に降ってきたのかなと思いましたが、さすがにそうではなかったんですね。

部分的にはメロディと一緒に出てきたフレーズもありました。そういう意味では、降ってきたものでもあるし、苦労して考えたものでもあるし、“特別な個”という感覚のある曲ですね。