K-POPバーチャルアイドル・PLAVEが6月16日に日本1stシングル「かくれんぼ」を配信リリースして日本デビュー。同作のCDシングルが7月9日に発売される。
PLAVEはセルフプロデュース体制で活動する5人組。韓国でのデビューからわずか1年で音楽ストリーミングサービスでの楽曲の累計再生数が10億回を突破し、韓国の大手音楽配信サービスMelonで"史上最速"の記録を打ち立て話題となった。そのほか、初動ミリオンやBillboardチャート入りといった快挙も成し遂げている。今年日本で開催された大型音楽アワード「MUSIC AWARDS JAPAN」でベスト・ソング・アジア部門にノミネートされ、今年2月発売の3rdミニアルバム「Caligo Pt.1」はミリオンセラー達成。さらに8月にスタートするアジアツアー「2025 PLAVE Asia Tour [DASH: Quantum Leap] in Seoul」のKSPO DOMEでの韓国公演が3日間全日完売するなど、その勢いは加速するばかりだ。
音楽ナタリーではPLAVEの日本デビューを記念し、「最近よく名前は見かけるけど、実はよく知らない」という音楽ファンに向けた、PLAVEの入門特集を展開。デビュー以降快進撃を続け、多くの人にとっての“気になる存在”となっているPLAVEの“すごさ”を紐解いていく。
文 / 岸野恵加
バーチャルアイドルの枠を越えて
「どうやらPLAVEがすごいらしい」。最近、あらゆる場面でそんな声を聞く機会が増えてきた。独自の存在感で快進撃を続け、音楽シーンをにぎわせる彼らのことが気になっていた人も少なくないだろう。ついに日本デビューを果たすタイミングで、PLAVEの“すごさ”についてつづっていきたい。
PLAVEは2023年3月に韓国でデビューした、5人組のK-POPバーチャルアイドル。グループ名はPlayとRêve(夢)を組み合わせたもので、「夢を叶えるために新しい世界を作っていく」という意味が込められている。メンバーはYEJUN(イェジュン)、NOAH(ノア)、BAMBY(バンビ)、EUNHO(ウノ)、HAMIN(ハミン)の5人。キャラクターたちが暮らす世界「カエルム」と、私たちが暮らす「テラ(地球)」の間にある「アステルム」という神秘的な惑星で、ファンとコミュニケーションを取るという世界観のもとで活動している。
日本ではバーチャルアイドルがすっかり文化として浸透しているが、韓国でも近年人気が上昇。PLAVEはその筆頭として──いや、もはやバーチャルアイドルの枠を超えて、大衆的な支持を獲得しつつある。2023年8月にリリースされた1stミニアルバム「ASTERUM : The Shape of Things to Come」は初動20万枚を突破し、音源が韓国最大のストリーミングサイト・MelonのTOP100チャートで43位を記録するなどの好成績を残した。
1年半足らずで総再生回数10億回
2024年7月には、デビュー後約1年4カ月でストリーミング総再生回数10億回を達成し、Melonのサービス開始以降、約20年の歴史の中で最短記録を更新。Melonの殿堂である「ビリオンズクラブ」入りを果たす快挙を成し遂げた。そして2025年2月に発表した3rdミニアルバム「Caligo Pt.1」は、初動売上枚数がなんと100万枚を突破。また2月19日付けで発表されたアメリカの「Billboard Global 200」と「Billboard Global Excl. U.S.」に男性バーチャルアイドルとして初めてランクインし、グローバルな人気も築いている。
ウェブトゥーン風のビジュアルで活動するメンバーの動きや表情は、アメリカのEpic Games社が開発したゲームエンジン・Unreal Engineとモーションキャプチャを活用した高い技術力を駆使して、リアルに表現される。激しいダンスパフォーマンスや複雑なフォーメーションチェンジも、とても動きがなめらかで違和感がない。表情も驚くほど細かく変化し、見ているとメンバーが“そこにいる”という感覚が湧いてくる。ファンダム名の「PLLI」はPlayとRealityを合わせた造語で「現実をともにする」という意味が込められているそうだが、まさにリアルタイム性と実在性が高く感じられるグループだと言えるだろう。一方で、バーチャル空間だからこそ実現できる演出や映像美が楽しめるのも魅力の1つである。
TWICE、J.Y.Park、TOMORROW X TOGETHER、LE SSERAFIM…そうそうたる面々とコラボ
彼らの活動内容は、通常のK-POPアイドルとほぼ同一。新作をリリースして“カムバック”した際には、ミュージックビデオはもちろん、ダンスプラクティス動画などの関連コンテンツを公開し、音楽番組でパフォーマンスを披露する。音楽授賞式などのイベントにも出演し、2024年11月に大阪・京セラドーム大阪で行われた「2024 MAMA AWARDS」では、人気ヒップホップアーティストのイ・ヨンジとコラボ。彼女のヒット曲「Small girl(feat.D.O.)」を一緒に歌い上げ、ほかの出演者をも驚かせるステージを繰り広げた。
またTikTokでのダンスチャレンジも精力的に展開。これまでにJ.Y.ParkやTWICEのサナ、TOMORROW X TOGETHERのYEONJUN、ENHYPENのJUNGWON、LE SSERAFIMのSAKURAら、そうそうたる面々とコラボしてきた。上下のフォーメーションに分かれたり、拳を突き合わせたりといった複雑な動きもしっかりと表現され、毎回話題を呼んでいる。
5人が歌える“自主制作アイドル”
PLAVEを語るうえで欠かせないのが、彼らがメンバー全員で作詞作曲と振付制作を行うセルフプロデュースグループであるという点だ。YEJUN、NOAH、EUNHOが楽曲制作を担い、BAMBYとHAMINがコレオグラフ制作を担当している。PLAVEの人気を押し上げた要因はさまざまにあるが、楽曲の魅力は大きいだろう。明るくさわやかなエネルギーを放つ「Pump Up The Volume!」や強烈なロックサウンドが特徴の「Dash」、ノスタルジックなバラード「The 6th Summer」など、彼らのディスコグラフィには幅広いジャンルの楽曲が並ぶが、総じてキャッチーで聴きやすいメロディの楽曲が多いのが特徴だ。
そして驚くことに、5人全員が抜群の歌唱力の持ち主。キレのいい動きでファンを魅了するメインダンサーのBAMBYや、迫力満点のラップが得意なメインラッパーのEUNHOが、高音パートを担当することも珍しくない。またメンバーは頻繁にカバー曲のパフォーマンス映像をアップするため、そこを入り口にして彼らに魅了され、PLLIとなる人も珍しくない。昨年開催したファンコンサートでも、メンバーはROSÉ(BLACKPINK)「On The Ground」やWOODZ「Drowning」、aespa「Next Level」など、さまざまな人気楽曲のカバーパフォーマンスを披露していた。日本の楽曲も多数カバーしており、NOAHによる優里「ベテルギウス」の歌唱動画は、YouTubeで1000万近い再生回数を記録している(2025年6月現在)。PLAVEの活動を追う中で、新たな音楽との出会いを経験したファンも少なくないだろう。
“バグり”すらも味方に
さらに親しみやすく明るいキャラクターや、バラエティスキルの高さもPLAVEの大きな魅力である。わちゃわちゃと息の合った5人のトークを少しでも覗いてみれば、すぐに彼らの人間性とチームワークのよさが把握できるはずだ。メンバーは毎週YouTube配信を行い、飾らない姿を見せてファンと密にコミュニケーションを取る。またゲストとして出演した番組でも毎回軽妙なトークで場を盛り上げており、SOOBIN(TOMORROW X TOGETHER)がMCを務める「推しの推し」では、YEJUNが恋愛リアリティ番組の魅力を熱弁。D-LITE(BIGBANG)の「家D-LITE」では、宮殿やサイバーパンクシティ、監獄といったアステルムでの個性豊かな暮らしぶりを紹介して笑いを誘った。そうした場面では、頭から数式が浮かんだり、ウインクすると目からハートが出たりするという彼らのユニークな特殊能力も、視線を集める強い武器となる。
モーションキャプチャ技術が素晴らしいとはいえ、ゲームエンジンの問題や通信環境により、意図しないところでメンバーが浮いてしまったり、腕や足などが非現実的なポーズで表示されてしまったりと、稀に表示上のバグが発生することがある。しかしその際のメンバーのリアクションやツッコミは、巧みのひと言。ハプニングを笑いに変える対応力の高さを漂わせ、PLLIからも愛されている。PLAVEはこうした多面的な魅力で、K-POPシーンや2次元シーンを中心に、幅広いフィールドのファンを惹きつけてきた。
「anan」表紙号は初の海外重版
日本でもすでに高い人気を誇るPLAVE。2024年6月には「2024 Show! Music Core in JAPAN」で日本初のパフォーマンスを披露し、10月には「Rakuten GirlsAward2024 AUTUMN/WINTER」に出演した。同年12月には女性誌「anan」の表紙を飾り、同誌初の海外重版が行われるほどの大反響を起こす。また3rdミニアルバム「Caligo Pt.1」はオリコンデイリーアルバムランキング、Billboard JAPAN「週間アルバム・セールス・チャート“Top Albums Sales”」で1位を記録するなど、日本のチャートでも好成績を残している。
そんなPLAVEの日本デビューが発表されると、Xでは歓喜の声が起こり、またたく間にトレンド入り。コンセプトフォトは2種用意され、Aでは夕陽に包まれた電車の中に座る5人の様子が、Bではカジュアルなファッションをまとって並ぶさわやかな姿が切り取られている。背後には日本の標識があり、日本の風景にPLAVEの姿が溶け込んでいる。
日本語能力試験にも合格
日本1stシングルのタイトルは、決して交わることのない過去と現在を表現した「かくれんぼ」。PLAVEらしい叙情的なメロディと、エレキギターの音色が響くバンドサウンドが印象に残る。青春の切なさを帯びた歌詞は、数々の名曲を手がけてきたUTA、JUNとの共作によって完成。どこか消化できない思いを抱えた「僕」が「君」を探すさまが歌われ、後半では「僕」が、「ありふれた景色の中 歩み重ねた足跡 君の元へと続いていたんだ」と気付きを得る。これはバーチャルK-POPアイドルとしての道を切り開いてきたPLAVE自身がファンへ向けた思いを歌っているようにも読めるし、はたまた「君」は、5人がずっと追いかけてきた夢なのかもしれない。もちろん彼ら自身と切り離して聴いても、多くの人が自分の経験を呼び起こされるであろう名曲だ。
メンバーは全員日本語を熱心に勉強したそうで、BAMBYは日本語能力試験のN3に合格したことをライブ配信で報告していた。全員が自然なイントネーションで感情のこもった美声を響かせ、楽曲への没入感を高めている。
MVでは、メンバーが共に過ごした輝かしい青春が描かれ、5人がまるでかくれんぼをするかのように“まばゆい記憶の中の僕ら”を探してさまよう。日本らしい街並みや電車、トンネル、コインランドリーといった日常を想起させる背景も、リスナーの感性に訴えかけてくる。
このほかシングルには、「Caligo Pt.1」に収録されている「RIZZ」と「Chroma Drift」それぞれの日本語バージョンも収録。「RIZZ - Japanese Ver.」では軽やかなヒップホップビートにメンバーの個性が際立つボーカルとラップが乗り、シティポップ調の「Chroma Drift - Japanese Ver.」では、PLAVEが心地よい歌声でレトロなムードを表現している。3曲それぞれが異なる魅力を放ち、これまでPLAVEを知らなかった日本のリスナーも手に取りやすい1枚となっている。
グループ名の通り、新たな世界を自分たちの手で作り、それを拡張し続けている5人。8月からは初のアジアツアー「2025 PLAVE Asia Tour [DASH: Quantum Leap]」にて、6都市を回る。11月に開催される日本公演でも、多くのダンベル型ペンライトの光が客席を埋め尽くすだろう。これを機にぜひ、奥深い魅力を持つPLAVEの“今”に触れてみては。
プロフィール
PLAVE(プレイブ)
2023年3月に韓国でデビューしたK-POPバーチャルアイドル。メンバーはYEJUN(イェジュン)、NOAH(ノア)、BAMBY(バンビ)、EUNHO(ウノ)、HAMIN(ハミン)の5人で、作詞・作曲・振付まですべて自ら手がけるセルフプロデュースグループとして知られている。2024年7月には韓国最大級の音楽配信サービス・Melonにおいて、デビューからわずか1年4カ月でストリーミング累計再生回数10億回を突破し、2004年のMelonのサービス開始以降、歴代最短記録を塗り替える。2025年2月には、同サービスでの累計再生回数は20億回を突破し、同月発売の3rdミニアルバム「Caligo Pt.1」の初動売上は100万枚を突破。6月16日には日本1stシングル「かくれんぼ」で日本デビューを果たした。8月からはアジアツアーを開催。KSPO DOMEで3日間開催される韓国公演のチケットは完売している。
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