SSW・みさきメジャーデビュー「この世って、愛じゃないですか」

TikTokのフォロワー数が63万人を超えるシンガーソングライター・みさきが、ユニバーサルシグマからメジャーデビューを果たした。

高校時代にカバー動画の投稿を始め、あどけなさが残る繊細な歌声で早々に人気を獲得したみさき。「誰も見ないだろう」という本人の予想を裏切り、リスナーからの温かく大きな反響を受けて、保育士の道を断って音楽の世界へ飛び込んだという。

オリジナル曲の源となっているのは、彼女自身や身近な友人たちの恋愛体験。「この世って、愛じゃないですか」と語り、友人からは「恋愛マスター」と呼ばれるほど恋愛相談を受けているというみさきは、どのような思いで楽曲を制作しているのか。このインタビューではみさきの音楽ルーツやメジャーデビューについて、家族や犬の話なども交え、あらゆる角度から彼女を掘り下げる。

取材・文 / 森朋之

ルーツはお母さんとOne Direction

──まずは音楽に興味を持ったきっかけから教えてもらえますか?

お母さんがいろんな歌を口ずさんでいて、それを聴きながら育ったんです。なので私も小さい頃から歌うのが好きでした。音楽のよさに気付いたのは小学校4年生のとき。One Directionの「Live While We're Young」を聴いて、「こんな曲があるの? 音楽でこんな気持ちになったの初めて!」と思って。CDを買ってもらって、車に乗るときもずっとかけてました。

──音楽の入り口はOne Directionだったんですね。ちなみにお母さんはどんな音楽が好きだったんですか?

Kiroroさんや花*花さんの曲が多かったですね。家事をしながら曲に合わせて歌っていて。けっこううまいんですよ。

──みさきさんもKiroroのカバーをアップしてますね。

そうなんです。小さいときから聴いていた曲ですね。

──ギターを弾き始めたきっかけは?

YouTubeなどで弾き語り動画をアップしている人たちを見て、「いいな、私もやってみたい」って。最初に練習したのはback numberさんの「ヒロイン」です。初心者向けの曲を検索して、その中から好きな曲を選びました。何日か練習してもまったくできなかったので、半年くらい放置してたんですよ(笑)。でも、またやる気になって弾いてみたら急に上達が早くなって「できるじゃん!」って。

──高校時代はブラスバンドもやっていたとか。

コントラバスを弾いてました。女性がコントラバスを弾いてるのはカッコいいなと思って。今もベースの音は好きですね。ベースがないと曲が締まらないし。いつかはバンドをやってみたい気持ちもあります。担当はベースで(笑)。

──ベースが弾けると、音楽の聴き方の幅が広がりそうですよね。その頃から将来は音楽の道に進もうと思っていたんですか?

いえ、実は保育士になりたいと思っていたんです。でもTikTokに自分の歌をアップしてみたら、思った以上にたくさんの方が聴いてくれて。ボカロ曲のサビをアカペラで歌ったんですけど、初投稿なのに1万を超える“いいね”が付いたんです。全然期待してなかったし、「誰も見ないだろう」という気軽な気持ちで投稿したんですけど、最初からこんなにバズるなんてと驚きました。

──すごい! 「自分には可能性がある」と思いませんでした?

……思っちゃいました(笑)。「こんなに聴いてくれる人がいるんだ」と知って、音楽の道を目指してみようかなと思い始めたんです。でもそのあとは伸び悩んでしまって……バズるのってすごく難しいし、最初の投稿でバズったのは奇跡だったんだなって。それでも「このチャンスを手放したくない」と思って、音楽を続けることにしました。

みさきTikTok LIVEの様子。(Photo by Genta Uematsu)

みさきTikTok LIVEの様子。(Photo by Genta Uematsu)

──歌声だけで1万を超える人を惹き付けたわけですからね。オリジナル曲を書き始めたのはいつ頃だったんですか?

高校2年のときです。YouTubeやTikTokで活動している皆さんもオリジナル曲を作っているし、自分にも作れるのかな?と思って。弟と一緒にギターを弾きながら、「適当にメロディを歌ってみようか」と。

──セッションというか、すごく自然な作り方ですね。

そうかもしれないです。今も「よし作ろう」と思ってもなかなかできなくて、なんとなくギターを弾いているときに、いいなと思うメロディが浮かんだりするんですよ。歌詞については、ちょうどそのとき恋愛中だったので、そのことを歌詞にしたらよくない?と思って。面と向かって言葉にできないことを歌詞にしたらエモいと思ったし、「私の気持ちに気付いてほしい」という願いを込めて「気づいたら」というタイトルにしました。

──リアルな気持ちが反映されているんですね。「気づいたら」の反響はどうでした?

たくさんの人に聴いてもらえたし、「気づいたら」をきっかけにして「この曲をリリースしてみませんか?」というお話をいただけました。この曲がなかったら今の自分はないと思ってます。ファンの皆さんも「ついに!」という感じで喜んでくれたし、「ここまで応援してきてよかった」と言ってくれる人もいて、うれしかったですね。

──本格的に動き出したんですね。

はい。オリジナル曲を本格的に作るようになって、ライブもさせてもらえるようになりました。ずっと歌を聴いてくれていた皆さんと直接お会いできるようになって、幸せだなと思ってます。何にもないときに私を見つけてくれた人たちですからね。

──最初の楽曲作りに立ち会った弟さんにも感謝ですね。

そうですね。でも、弟はあまり私の音楽活動に興味がないみたいで。宿題しているときに「新しい曲ができたから聴いて」ってギターを持って部屋に入ると、「マジでうざいからやめて」って追い出されるんですよ(笑)。私は“かまちょ”なので誰かに聴いてほしくて、家族がテレビを観ているときにリビングで大声で歌ったりしてます(笑)。両親はめっちゃ応援してくれてるし、誰よりも私のファンなんですよ。「次は何?」って、新しいリリースや活動を楽しみにしてくれてます。

──実体験をベースにした楽曲を聴かれることに抵抗はなかったですか?

それは最初から全然なかったですね。私の実体験が元になっていても、きっとみんなも同じような経験があると思うし、とにかく「共感してほしい」という気持ちが大きかったので。

この世って、愛じゃないですか

──その後も「私じゃなかった?」「もし明日が来ないとしたら」とコンスタントに楽曲をリリースされています。これらもやっぱりみさきさんの実体験から生まれた楽曲なんですか?

「私じゃなかった?」はそうですね。「もし明日が来ないとしたら」は、TikTokで日頃から集めている“いい言葉”が元になっていて。例えば失恋した人の投稿や、「これはいいな」と思う言葉を普段からメモしてるんですよ。それを見ながら書いたのが「もし明日が来ないとしたら」です。

──なるほど。みさきさんの楽曲は恋愛ソングが多いですが、多くの人が共感できるテーマなんでしょうね。

一番身近なんだと思います。なんていうか……この世って、愛じゃないですか。愛がないとダメじゃないですか。

──その通りだと思います。

なので恋愛はすごく重要だなって。あと、みんなの気持ちを救ってあげたいという気持ちもあるんです。楽曲をリリースしていく中で、「この曲で救われました」「私もこの曲と同じ気持ちです」「もっと早くこの曲に出会いたかった」みたいなことを言ってもらうことが増えていて、私が書いた歌詞がこんなにも響いてくれたんだなと。

──楽曲を一番ダイレクトに伝えられるのは、やはりライブだと思います。初ライブの思い出は?

初ライブは京都のお祭りだったんです。4年くらい前なんですけど、めちゃくちゃ緊張しました。その頃は顔出ししてなくて、ステージは真っ暗で仮面も着けていたので、緊張は半分くらいだったんですけどね。

──メジャーデビューのタイミングで“顔出し”解禁は大きな変化ですよね。

そうですね。顔を出して歌ったほうが表現の幅が広がるだろうし、曲のよさもさらに伝わるんじゃないかなって。初めてのアーティスト写真の撮影はすごく緊張しました。もともと写真を撮られるのが得意ではなくて、集合写真とかもできれば写りたくないんですよ。景色を撮るのは好きなんですけど、自撮りとかもしないし。なので、これからがんばって慣れます(笑)。