Vol.3となる今回はミュージックビデオ制作について教えてもらうため、大阪芸術大学映像学科出身のありぼぼさんが憧れる映像監督・
取材・
ヤバTにとって関さんはキーパーソンなんです
ありぼぼ 私、大阪芸術大学の映像学科出身なんですけど、関さんが監督されたPerfumeの「エレクトロ・ワールド」のミュージックビデオを観て、「今ってCGでこんなことまでできるんや!」って感動して映像学科への進学を決めたんです。そこで出会ったメンバーとヤバTを結成したので、関さんがいなかったらヤバTは今いないんですよ。それくらい私にとって……いやヤバTにとって関さんはキーパーソンなんです。
[Official Music Video] Perfume「エレクトロ・ワールド」
関和亮 ホントですか? じゃあヤバTの年表を作るときにはそう書いておいてくださいね(笑)。
ありぼぼ はい! だから今日やっとお会いすることができてうれしいです。関さんは「エレクトロ・ワールド」みたいなCG作品もやりながら、サカナクションの「アルクアラウンド」とかPerfumeの「不自然なガール」みたいなアナログな作風もやってはるじゃないですか。アナログな手法で撮影した作品はもちろん、CG作品からも人間の温かみを感じて、とても魅力的だなと思いました。ミュージックビデオという尺でもこんなに表現できることがあるんやって。
サカナクション - アルクアラウンド(MUSIC VIDEO) -BEST ALBUM「魚図鑑」(3/28release)-
[Official Music Video] Perfume「不自然なガール」
関 僕から影響を受けてくれたなんて、仕事をしていてこんなにうれしいことなかなかないですよ? ありがとうございます。そういえば僕、大阪芸大で講演をしたことがあります。畑の中にポツンと美術館みたいな建物があって驚きました。在学時はバンドをやりながらミュージックビデオも作っていたんですか?
ありぼぼ そうですね。授業の課題として大阪で活動しているバンドのミュージックビデオを作るお手伝いをしたり、芸大の中で組んでいるバンドのミュージックビデオを撮ったりしていました。関さんの作品みたいに最初から最後までずっと飽きずに観られるミュージックビデオを作ろうと心がけて試行錯誤していたことを覚えています。
関 今日会ったら絶対に聞こうと思ってたんですけど、ヤバTのスタイルって見た目も音楽性も一貫してるじゃないですか。あのスタイルはどうやって決めたんですか?
ありぼぼ ヤバTは、こやま(たくや)さんが「“ヤバイTシャツ屋さん”っていう名前のバンドを組みたいねん」って、私とドラムの(もり)もりもとに声をかけてくれて結成したんです。最初にできた「ネコ飼いたい」という曲からその方向性はずっと変わらずここまで来ました。こやまさんが監督・編集をして撮影クルーもいない手作り感満載のものもあります。撮影クルーがいるミュージックビデオでもこやまさんが監督をするものもあって、楽曲制作やライブ以外にも細部までヤバイTシャツ屋さんのこだわりが行き渡っていると思います。
ヤバイTシャツ屋さん - 「あつまれ!パーティーピーポー」Music Video[メジャー版]
「かわE」ミュージックビデオ(ニセコイじゃない ver.)
関 音楽とビジュアルのコンセプトを最初に決めて、それをやり続けているということですよね。普通はちょっと違うことやってみようってなるのに、ずっと同じように続けられているのがヤバTの個性になっていますよね。
ミュージックビデオの根っこは音楽
ありぼぼ うれしいです。関さんがミュージックビデオを作るときに心がけていることってなんですか?
関 ミュージックビデオの根っこはやっぱり音楽だから、その音楽をどう称えるか、一番いい形で聴かせられるかを重視してますね。その音楽が伝えたいことをフォローできる存在でありたい。例えば恋愛ソングだったら、そのまま恋愛するカップルを描く手法もあるけど、僕の場合は別の対象……例えばカエル同士とか、鉛筆と消しゴムとか、人間以外のやり取りでも根っこは恋愛みたいな、そんなふうに作ってます。
ありぼぼ 音楽をフォローする存在……私、Perfumeの「Let Me Know」のミュージックビデオが大好きで、初めて観たときにめちゃくちゃ泣いちゃって。
[Official Music Video] Perfume 「Let Me Know」
関 おー! そのタイトルが出てくると思わなかった。
ありぼぼ 私がPerfumeにハマった理由の1つにミュージックビデオがあるんですよ。関さんの作品はもちろん、ほかの曲でも音楽に深みを与えるミュージックビデオを一貫して作っているから。
関 ファンの人にそう言ってもらえるのは本当にありがたいですね。曲を聴いたときに思い浮かぶ映像って人それぞれだと思うんですけど、僕は自分が思い描いたものにプラスアルファするというか、別視点を加えて映像化していて。ミュージックビデオをきっかけに「私だったらこうする」とか「こんなふうに感じた」とか、みんなが話すきっかけになればいいなって。
ありぼぼ 考察が捗るやつですね。
関 そうそう。だから僕の場合は「今の時代だからこうする」とかそういうのはあんまりない。カット割りが速いのがいいとか、開始何秒で動きがあったほうがいいとか、そういうものは気にしてないんです。というか、ずっと映像の仕事をしているのに流行る映像もみんなが好きな映像がどんなものなのかも正直わからないし(笑)。どういうときにバズるかって、みんなが「何これ!?」って感じるときだと思うんですよ。そういう意味では自分がいいと思えるものを続けていくしかない。ヤバTも自分たちのスタイルを貫いているから、同じですよね。
音楽ラバーな関監督の思考回路
ありぼぼ ミュージックビデオの発注を受けたらまず何をしますか?
関 最初に楽曲をいただくので、その曲をひたすら聴きます。
ありぼぼ 内容については丸投げのこともありますか?
関 たまにありますよ。曲を聴いて関さんが作りたいと思ったものを作ってくださいって。でも多くはテーマだったり、やってみたいことがあって発注されることが多いですかね。
ありぼぼ 関さん的にはどっちの方がやりやすいですか?
関 僕はお題があるほうがやりやすいかな。何年もやってわかったのは、枷がついたほうが映像って面白くなるんですよ。ヤバTはお金がないから定点で撮ろうって話がさっきあったけど、そういうアイデアはお金が潤沢にあったら生まれないじゃないですか。Perfumeの話で言えばもう、タイトルが「エレクトロ・ワールド」なら「エレクトロなワールド」を作るしかないんです。飲み屋で親父が飲んでてもそこが「エレクトロ・ワールド」だと言われればそうかもしれないけど、やっぱりそれは音楽を一番いい形で聴かせられる映像ではないかもしれない。ミュージックビデオは曲の尺という枷があるから、その時点で自分には合っていたのかもしれないですね。
ありぼぼ なるほど……。お題をもらったあとは、どうやって制作を進めていくんですか?
関 100曲あれば100通りというか、毎回違うんですよ。そのたびに曲を何度も聴いて、引っかかりを見つけます。例えばこのリズムの音が足踏みっぽく感じるから歩くシーンを入れようとか、「好き」というフレーズを「スキー」に置き換えちゃおうとか。どこがキーになるのかをじっくり探すんです。それは音だったり、言葉だったり、いろいろあって。
ありぼぼ 関さんの作品を観て、きっとリズム感のいい人なんだなと思ったんです。例えばベースの「ブーン」という音が入ったらそれにあわせて何かが動くとか、そういうシーンがすごく多い印象で。関さん、音楽がかなり好きですよね?
関 そうですね。中高生の頃からミュージックビデオをたくさん観ていて、進路を考えたときに「音楽家と一緒に作品を作るという仕事があるならやってみたいな」と映像監督を目指すことにしたので。そういう形で音楽に携われるのはすごく素敵だなと思ったんです。音楽に対してカッコいいと思う部分は人それぞれじゃないですか。僕の場合は、このフレーズにうまく映像がハマったら自分が気持ちいいなとか、そういう感じで編集をしています。「このハイハットのオープンの音カッケー! ここにこういう映像をはめよう!」みたいに。
ありぼぼ 観てる側もそれが気持ちいいんですよね。私はベーシストなので、ベースに沿って映像が展開していくと「来た来た!」ってうれしくなります。
関 音楽的にちゃんと紐解いてくれるのはうれしいですね。さすがミュージシャンだなって思います。
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