アジカン酔杯ツアー、地元ファイナルで2000年代を総括

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ASIAN KUNG-FU GENERATIONの全国ツアー「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2009~酔杯リターンズ~」の追加公演が、12月22日に横浜BLITZで開催された。

終盤にさしかかり「あと何曲かなんですけど……」と後藤が話すと、フロアからは「えーっ!?」という悲鳴が。「そりゃそうでしょう、始まった時から残りあと何曲かなんだから(笑)」と苦笑しながら返していた。

終盤にさしかかり「あと何曲かなんですけど……」と後藤が話すと、フロアからは「えーっ!?」という悲鳴が。「そりゃそうでしょう、始まった時から残りあと何曲かなんだから(笑)」と苦笑しながら返していた。

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全国ツアーやアルバム&シングルのリリースラッシュ、恒例の「NANO-MUGEN FES.」の大成功など、精力的な活動が続いた2009年を締めくくるにふさわしい圧巻のライブを披露した4人。

全国ツアーやアルバム&シングルのリリースラッシュ、恒例の「NANO-MUGEN FES.」の大成功など、精力的な活動が続いた2009年を締めくくるにふさわしい圧巻のライブを披露した4人。

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超満員の観客の盛り上がりで、横浜BLITZの中は年末とは思えない熱気に包まれた。

超満員の観客の盛り上がりで、横浜BLITZの中は年末とは思えない熱気に包まれた。

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「酔杯リターンズ」は11月30日からスタートした、恒例の全国対バンツアー。初日の新代田FEVER公演とLIQUIDROOM ebisu公演を除く各公演にゲストアクトが出演し、全国各地で熱いステージを展開した。最終日の横浜公演はアジカンにとって地元への凱旋公演。また、この日の対バンゲスト・Qomolangma Tomatoも横浜出身のバンドであることから、会場には開演前からライブへの強い期待感が漂っていた。

場内の客電が落とされるよりも早く、Qomolangma Tomatoの4人がステージに登場。不穏な爆音のイントロで始まる「ネタのないパブリック」、小倉直也(G)の奏でるギターフレーズと石井成人(Vo)の声がからみ合う「through your reality」と、攻撃的なチューンを続々と披露していく。

短いMCでは大工原幹雄(Dr)が満員のフロアを前に「ありがとうございます!すごいですね今日は」と笑顔を浮かべる。5曲を演奏したステージで最後を飾ったのは「動揺」。静かに始まった楽曲が徐々に熱を帯びていき、オーディエンスも両手を上げて彼らのパフォーマンスを称える。ラストは石井がフロア最前の柵上に立ち、観客の大歓声に応えた。

Qomolangma Tomatoのライブ終了後、一旦場内の照明が点灯し転換と休憩に入る。転換が終了すると突然照明が落とされ、フロアには12月2日にリリースされたばかりのシングル「新世紀のラブソング」のイントロが流れ始めた。

いきなりのライブスタートにオーディエンスがどよめく中、アジカンの4人がステージに姿を現す。後藤正文(Vo,G)はサンプラーでイントロに音を乗せ、ゆっくりと「新世紀のラブソング」を歌い始めた。そこへそれぞれの音が重なっていき、後半でバンドの熱量がピークに高まっていく。打ち込み的アプローチからバンドサウンドへ変貌する楽曲の持ち味を生かした演出に、フロアからは熱狂的な歓声が沸き起こった。

3曲目に入る前、後藤は「どうもこんばんは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONです。新曲やります、『マジックディスク』」と曲紹介をしてから新曲を披露。サイケデリックなメロディの前半部分からストレートで開放感を漂わせるサビへ展開していく、4人の旺盛な創作意欲を感じさせるナンバーだった。

「ブルートレイン」の後のMCでは、後藤がフロアからの呼びかけに「うるせえ、帰れ!(笑)」と毒づくシーンも。「今日は地元なんで、異様なテンションでやってます」と語ったとおり、観客とのコミュニケーションをさまざまな形で楽しんでいる様子がうかがわれる。その後も「ライカ」「長谷サンズ」とライブは続き、「惑星」では4人がライブを楽しんでいる表情が曲の持つ前向きなメッセージを強調。その一方、後半部分では山田貴洋(B)のソロから雰囲気が一変し、ジャムセッション的な展開でバンドのグルーヴを存分に響かせた。

中盤のMCで後藤は、ライブ後にファンと遭遇したときのエピソードを披露する。「みんなわりと馴れ馴れしいんだよね、普通に『ゴッチ!』って話しかけてくるし(笑)。一番びっくりしたのが『メガネちょうだい』って言われたときでさあ、ほんとどうしようかなーって思ったよ。俺何も見えなくなっちゃうから困るんだよね(笑)」。普段以上に毒舌が冴えわたるトークに、自分でも「今日はMCしないほうがいいのかな?(笑)」と反省気味。「まあその分を曲で伝えたいです、って言葉で言うと嘘っぽくなっちゃうけど……曲とか動きとかでアピールします」と宣言し、中盤戦に突入していった。

「未だ見ぬ明日に」では山田の流麗なベースラインに全員がじっくり聴き入り、「十二進法の夕景」では後半に向かっての盛り上がりと同期してフロアのテンションが高まっていく。場内の雰囲気を自在に操りながら、続いて再び新曲「ソウシヨウ」を披露。喜多建介(G)が手がけたというこの曲は、攻撃的なギターフレーズから始まるナンバー。伊地知潔(Dr)の叩く重めの音と、ひねりの効いたメロディラインが絶妙のハーモニーを作りだしていた。

ライブが終盤戦に近づき、後藤は着ていたシャツを脱いでTシャツ姿に。「カッコつけてシャツ着て出てきたけど、暑くて」と言いながらフロアにシャツを投げた。「俺だけ脱いでたら不公平だから全員1枚ずつ脱げ!……いや、嘘です(笑)。でもね、せっかくこうやってみんな集まってるんだから心の第2ボタンをはずすというか、そんな気持ちで観てほしいです。フェスとか行っても知らないアーティストに対して『なんかよくわかんないなぁ』って思ったり、心の中でファイティングポーズをとったりするんじゃなくて、とりあえず周波数が合うかどうか試してほしいんだよ。こんな狭いところにみんな集まってさ、誰も演奏してなかったらただの収容だよ?(笑)こういう集合体ができたんだから、そのつもりでみんな楽しんでほしいです」と、ライブという空間の持つ意味を熱く語った後藤に、フロアからは大きな拍手が沸き起こった。

「出がらしになるまで弾き狂いますんで、みんなも踊り狂ってください。じゃあ、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのカバーで『バードメン』」と短く紹介し、突如次のナンバーが始まった。アジカンにとって憧れのバンドの名曲を、赤いライトに照らされたステージで爆音で奏でる4人。一瞬何が起こったのかわからない表情を浮かべていたオーディエンスだが、すぐに彼らのビートに乗って踊り出すファン、そのまま茫然と立ち尽くすファンと反応はさまざま。サプライズに近いカバーに、場内は異様な興奮に包まれた。

その勢いと熱を引きずったまま、ライブはいよいよ終盤戦に。「振動覚」「リライト」「アフターダーク」とアッパーチューンが立て続けに披露される。「リライト」の間奏では後藤がシンセサイザーとサンプラーを奏で、マイケル・ジャクソン「スリラー」のフレーズも取り入れた演奏を繰り広げる。さらにフロアから2人のオーディエンスをステージに上げ、サンプラーやカウベルを渡してセッションを展開。ステージとフロアの距離をゼロにする小粋な演出に、全員が沸きかえった。そして本編ラストを飾ったのは「転がる岩、君に朝が降る」。4人の奏でる音色が、会場にじっくりと染みわたっていった。

大きなアンコールの拍手に応えて、再びメンバーがステージに現れる。「本当にありがとうございます。じゃあ、マイホームタウンですけど『君の街まで』」と後藤が話し、アンコール1曲目を奏で始める。原曲よりも優しさを感じさせる柔らかいアレンジは、フロアの雰囲気を温かく盛り上げていく。2曲目は「君という花」。途中で山田と喜多がステージ最前までせり出し、観客を煽る。その煽りに応えて全員がジャンプし、BLITZが大きく揺れる中アンコールが終了した。

満員のフロアがダブルアンコールを貪欲に求めていると、4人は三たびステージへ登場。後藤は「昨日リクエストもらってたけどできなかった曲をやります」と話し、ファンに人気の高い名曲「エントランス」のイントロを奏で始めた。が、急に演奏を止め「ごめん、間違えた!」と叫ぶ。だが山田から「合ってたよ?」というジェスチャーを受け「もう燃えカスよ(笑)」と苦笑い。改めてスタートした「エントランス」の音は、彼らのリラックスした雰囲気もあって、まっすぐにオーディエンスの胸に飛びこんでいった。その後は「何か聴きたい曲あるか?」とフロアのリクエストを募りながら「Re:Re:」「アンダースタンド」とアッパーな曲を続々と披露。最後に後藤は「もう1曲だけやります」と、観客に向けて話し始めた。

「2000年代に突入して9年経って、来年から2010年代っていうのはすごく感慨深いです。ここ10年は自分たちの音楽にとって一番濃い10年だったから。昔横浜でライブをやってたころは本当に友達しか来なくて、東京でやったらお客が5人なんてときもあったんだよ。そんな頃からやっていて、ライブでやると他のパンクバンドにバカにされたりもした曲があるんだけど(笑)、この曲があったから自分たちは今までやってこれた。これを2000年代最後の演奏にしたいと思います」。全国ツアー、そして2000年代を締めくくったラストナンバーはインディーズ時代からの名曲「Hold me tight」。オーディエンスは両手を挙げて彼らの演奏を受け止め、ステージ上の4人も真剣な表情と笑顔を交えながら力強いパフォーマンスを続ける。曲が終わると大きな拍手を贈るフロアに後藤が飛び込み、観客の熱を全身で受け止めていた。

ひさびさのライブハウスツアー、そして地元でのツアーファイナルということもあり、メンバー全員が非常に楽しそうに演奏している姿が印象的だったこの日のライブ。2009年を最高の形で締めくくった彼らが、2010年代ではどんな“新世紀”を見せてくれるのか、ますます楽しみになる一夜だった。

ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2009~酔杯リターンズ~
2009年12月22日 横浜BLITZ セットリスト

01.新世紀のラブソング
02.サイレン
03.マジックディスク
04.ブルートレイン
05.ライカ
06.長谷サンズ
07.惑星
08.その訳を
09.白に染めろ
10.未だ見ぬ明日に
11.十二進法の夕景
12.ソウシヨウ
13.夜のコール
14.バードメン
15.振動覚
16.リライト
17.アフターダーク
18.転がる岩、君に朝が降る

EN1-01.君の街まで
EN1-02.君という花

EN2-01.エントランス
EN2-02.Re:Re:
EN2-03.アンダースタンド
EN2-04.Hold me tight

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読者の反応

ふじこⒶ @hayafu_fuji

ついでにググったらがっちり自分写ってたwww 初めてアジカン最前でみたのこのとき。すごくすごく嬉しかったなぁ。 アジカン酔杯ツアー、地元ファイナルで2000年代を総括 - 音楽ナタリー https://t.co/FFKzIlPMYe

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