「スペナタ」#05 香取慎吾|“決意表明”のアルバムがCD化、渾身の「Circus Funk」携えこの先へ

音楽の魅力をテキストで伝える音楽ナタリーと、映像で伝えるスペースシャワーTVがタッグを組み、毎回1組のアーティストをフィーチャーする「スペナタ」。この企画では、さまざまなアーティストに合同で取材を行い、音楽ナタリーではインタビューページ、スペースシャワーTVでは特番という形で紹介している。

第5回に登場するのは、5月28日に3rdアルバム「Circus Funk」をCDリリースし、5月31日からは全国ツアー「SHINGO KATORI 1st LIVE TOUR Circus Funk 2025」をスタートさせる香取慎吾。音楽ナタリーでは過去にアルバムの全曲解説インタビューを行ったが(参照:香取慎吾「Circus Funk」全曲解説インタビュー)、今回はCD初収録となるSEVENTEENとのコラボレーション楽曲「BETTING」、表題曲「Circus Funk」のミュージックビデオ、さらにライブに関する話題を中心に香取の言葉をお届けする。

取材・文 / 柴那典撮影 / YOSHIHITO KOBA
ヘアメイク / 石崎達也スタイリスト / 細見佳代

「そんなことが叶うの? じゃあぜひ!」SEVENTEENとの共作

──香取さんは今回のアルバムを作るときにライブのことを意識されていましたか?

しました。これまでの作品も含めて、自分の音楽活動はすべてライブあってのものだと思っています。ツアーやライブをやるときに「アルバムを引っさげて」とよく言うけれど、僕の場合はライブを考えないで曲を作っていくことがあまりないかもしれないですね。

──エンタメ性の高い華やかなライブの光景を意識して、そこから「Circus Funk」というアルバムを作っていった。

そうですね。ただ、SEVENTEENと一緒に作った「BETTING」という曲に関してはライブを想定したというのとはちょっと違っていて。草彅剛が主演した「罠の戦争」(関西テレビ系)というドラマの主題歌だったので、ドラマのプロデューサーの方と話しながら主題歌として作っていきました。

香取慎吾

──「BETTING」の制作時期はアルバムよりも前でしたが、どのように曲を作っていったんでしょうか?

まず「SEVENTEENと一緒に曲を作りませんか?」という話があって。僕もずっと気になっていたアーティストだし、「そんなことが叶うの? じゃあぜひ! いつにしましょうか?」という会話があったうえで、そのあとに「罠の戦争」の主題歌のお話をいただいたので「今だ!」ということでお願いしてこのコラボが実現したんです。曲作りに関しては、コロナ禍だったので韓国と日本をリモートでつないで、メンバーのWOOZIくんとプロデューサーのBUMZUさんと何度も会議を重ねました。リモートで曲を作るのはとても難しかったです。レコーディングのときにやっと会える形だったので、その前に曲を細かく詰めていったり、歌詞や歌割りを決めるのも、すべてリモートでやったんですよ。僕としては、音楽だけじゃなくいろんなお仕事において、面と向かって話すことによって生まれるものがいっぱいあると思っているので、できるだけそうするのが僕のやり方なんですけれど。モニタの中だけで、通訳の人もいる中で曲を作っていくのは難しかったですね。

──レコーディングはいかがでしたか?

彼らが来日して日本でレコーディングしたんですが、そのときに直接会えたのはめちゃくちゃうれしかったです。何カ月もリモートで曲を作ってきたからようやく会えた喜びもあるし、曲を歌ってくれたJEONGHANとMINGYUとSEUNGKWANとはそこで初めて会ったので。ただ、時間もないからその場で「ここの歌割りはやっぱり変えようか」とか「歌詞変えようか」とか話をして、半日くらいで作りました。この曲がCDに入るのはすごくうれしいです。

──この曲は、CDの曲順では最後になっています。

強い曲なので、どこに入れるかはちょっと悩みましたね。「Not Too Good, Not Too Bad」が終わって「Circus Funk」の世界が終わったかなと思ったら、「BETTING」が聴こえてくる。でもその曲間はかなり空けていて、「ん?」と思うほど間があるんです。そこで終わりだと思わないで聴いてくれたら「BETTING」のイントロが始まる。CDで皆さんに聴いてもらうときの曲間は全部自分で決めてるんです。配信もライブでもそうなんですけど。

香取慎吾

僕自身が「香取慎吾のプロデューサー」

──「Circus Funk」でフィーチャリングしているアーティストは香取さんご自身が声をかけたということですが、普段からいろんなアーティストをチェックされていらっしゃるのでしょうか? 音楽リスナーとしての日常と制作がシームレスにつながっているというか。

つながっていますね。ゆったりしたいと思ってチルな感じの曲を聴いていても「ん、誰これ? いいな」と思っちゃうときもある。基本的にはアンテナを張らないでいるときのほうが少ないです。ずっと考えていますね。チェックするのが大好きなんだと思います。

──今回の作品だけでなくソロデビューのときからいろんなアーティストに声をかけて音楽を作っていくという制作の手法を取られていますが、その由来はどういうところにあるのでしょうか。

今でこそフィーチャリングの曲って世界中にありますし、自分のアルバムもそういう形になってはいますけど、自分はグループの頃からそうだったんですよ。グループのアルバムの中でも、ソロ曲ではフィーチャリングをしていたんです。MONKEY MAJIKに曲をお願いして、倖田來未ちゃんと一緒に歌ったり。ウィル・アイ・アム(Black Eyed Peas)に曲を頼んだりもしていたし。だから今に始まった感じはあまりないんです。自分1人では楽器もできないし、才能のある方とご一緒したいという。

香取慎吾

──ただ、例えば歌謡曲の時代だったら、レコード会社のディレクターやA&Rと呼ばれる人が「この歌手にこういう曲を歌わせたい、作曲家と作詞家はこの人にお願いしたい」と座組みを決めるのが一般的だったわけですよね。今のJ-POPの時代でも、ステージに立つ歌手ではなくプロデューサーが作曲家と作詞家をオファーすることが多い。そう考えると、今の香取さんの活動においては、レコード会社のディレクターやプロデューサーの仕事を香取さん自身がやっているように思うんです。

そうですね。確かにそうだと思います。周りにスタッフもたくさんいますけど、音楽だけじゃなく、自分のことを一番知っているのは自分だし。自然とプロデュースしていますね。僕自身が「香取慎吾のプロデューサー」だと思っています。

──かつては「セルフプロデュース」という概念もあまりなかったと思うんですが、香取さんは「香取慎吾をセルフプロデュースしている」と言うとしっくりくる感じもあります。

でもやっぱり、10曲あったら10人分の才能をお借りして曲を作ることでできているのが“僕”なので。僕1人ではできないし、出会いというものがめちゃくちゃ重要ですね。