折坂悠太が考えるフェスの自由さ、音楽の在り方|「FUJI & SUN '25」開催記念特集

キャンプインフェス「FUJI & SUN '25」が、5月31日と6月1日に静岡・富士山こどもの国で開催される。

「FUJI & SUN」は「富士山と学び、富士山と生きる。」をコンセプトに掲げる野外フェス。富士山の麓で音楽やアクティビティ、キャンプ、地元食材を使用した名物料理などを楽しむことができる。「FUJI & SUN '25」開催を目前に、音楽ナタリーは同フェス3回目の出演となる折坂悠太にインタビュー。「FUJI & SUN」の印象はもちろん、「音楽の在り方として自然に感じられる」というフェス観、曰く「私のライブは盛り上がらない」という自身のステージへの自己評価まで、フェスを中心にさまざまなトピックについて語ってもらった。

取材・文 / 石井佑来撮影 / 入江達也

公演情報

FUJI & SUN '25

「FUJI & SUN'25」ロゴ

2025年5月31日(土)静岡県 富士山こどもの国

<出演者>
折坂悠太(band) / 君島大空(独奏) / くるり / 柴田聡子 / トリプルファイヤー / どんぐりず / 野口文 / HAPPY / HAL / んoon / 堀込泰行 / MONO NO AWARE / やけのはら / 吉原祇園太鼓セッションズ feat. モッチェ永井


2025年6月1日(日)静岡県 富士山こどもの国

<出演者>
井上園子 / MFS / Sam Wilkes Quartet feat. 中村佳穂 / SAMO / 鎮座DOPENESS / 七尾旅人 / ハナレグミ / ハンバート ハンバート / betcover!! / 森山直太朗 / U-zhaan

公式サイト

「FUJI & SUN」は毎年ドキドキ感がある

──折坂さんが「FUJI & SUN」に出演されるのは、2021年と2023年に続いて3回目です。過去2回の「FUJI & SUN」出演を経て、このフェスにはどういった印象を持たれていますか?

前回、自分のステージが終わってから車で移動していたときに、お客さんのほうを見たらすごくテンションが高くて。とてもピースフルな空気が流れていたから「ここから出て走り出したい!」と思ったくらい(笑)。ほかのフェスと比べても、お客さんがリラックスしているようなムードがあるんですよね。そういう空気感がとにかく楽しかったです。

折坂悠太

──それは“富士山に臨んだ大自然の中”という「FUJI & SUN」ならではのロケーションも影響しているんですかね。

やっぱりそれはあるんだろうなと思います。それこそ「FUJI & SUN」というイベントの色だと思いますし。あと、ラインナップ的に落ち着いて観られるアーティストが多いからか、家族連れの方がけっこういて。それも印象に残っています。

──2023年に出演した際は大雨が降られていたとのことですが、そういう天候などの外部要因でパフォーマンスが変わってくるのもまた野外フェスの醍醐味ですよね。

そうですね。野外ライブは天候とは切り離せないものですからね。でも私は自他ともに認める晴れ男なので、安心してください。……とか言って、この前のリハの帰りも土砂降りだったんですけど(笑)。ライブの本番は晴れることが多いので、期待していただければと思います。

──過去2回「FUJI & SUN」のステージでライブをして、どのようなことが印象に残っていますか?

気付いたら「FUJI & SUN」では毎回新しい試みをしていて、それが自分の中ではすごく印象深いですね。2023年に出たときは、それまでしばらく重奏編成として7人でライブをしていたんですけど、そこからギュッと絞った4人編成でやり始めた頃で。そういうふうに、「よし、次からこういうふうにしてみよう」と思っている時期に出させてもらうことが多い。だから、試行錯誤の跡をお見せしているような感覚もあって。今回も、4月にホール公演が終わったばかりで「ここからどうしようかな」と考えているタイミングなんですよ。とはいえ新しい曲も増えてきたし、届けたいものがたくさんある。「よし、やってやるぞ」という思いと「大丈夫かな?」という気持ちの両方から来るドキドキ感が毎回あるなと。

──今年はsenoo ricky(Dr)さん、宮田あずみ(Contrabass)さん、山内弘太(EG)さん、ハラナツコ(Sax, Flute)さんとの5人編成だそうですね。

そうですね。前回の「FUJI & SUN」のときの編成にハラナツコさんが加わったような形です。このメンバーでわりとライブを重ねてきて、バンドとして戦ってきた感覚があるので、それが「FUJI & SUN」の舞台でどうなるのか、楽しみです。

──過去2回出演したときは、ほかの出演者のステージをご覧になったりもしたんですか?

ちょいちょい観ましたね。2021年に出たときは、僕らのあとがくるりで。袖からくるりのライブを観るという体験を初めてしました。みんな大好き「HOW TO GO」をやっていて、「HOW TO GO!!!!!!」ってテンションがブチ上がったのを覚えています(笑)。当時はコロナ禍以降にようやくフェスができるようになった頃で。だから楽屋に滞留することもなく、「終わったらすぐに帰りましょう」という雰囲気だったんですよ。それもあって舞台裏はいつもと違う空気感が流れていたけど、くるりがステージでいつもと変わらずいい音楽を炸裂させていて、すごく刺激を受けたことが記憶に残っています。

なんだこの生き物は!

──率直にお聞きしたいのですが、そもそも折坂さんにとって“いいフェス”とはどういうフェスですか?

うーん……ごはんがおいしいフェス(笑)。

──あはははは。それは間違いないですね。その点で言うと「FUJI & SUN」のごはんは折坂さん的にいかがでしたか?

もう、最高の思い出です。自分たちのステージが終わってから、ずっとごはんを食べていたので。食べるもの食べるものどれもおいしくて、これはもうライブだなと。「次はどの曲が来るかな」みたいな感覚なんですよ。バンドメンバーとごはんを食べながら「これはリバーブがすごい」みたいな会話を延々してました(笑)。ミュージシャン同士がよくやるうるさい例えトークを(笑)。それくらいすごく楽しかったんですよね。ケータリングじゃまず出ないような、そら豆を焼いたものなんかもあったし、お酒も「なんじゃこりゃ」っていうようなおいしいものがたくさんあって。すごく思い出に残っています。

折坂悠太

──お客さんにとってだけでなく、出演者にとっても、ごはんはフェスの大事な一部ですよね。

そうだと思います。あと、「FUJI & SUN」は楽屋スペースが食堂のようになっていて、ひさびさに会うアーティストの方とお話ししやすいんですよ。私は普段フェスでほかのアーティストと話すことがそんなにないんですけど、「FUJI & SUN」では自然と会話が弾む。そういうリラックス感が、お客さんだけでなく演者側にもあるような気がします。

──ラインナップもフェスを特徴づける大きな要素だと思いますが、その点で「FUJI & SUN」の出演者にはどういう印象がありますか?

なんと言っても知り合いが多いですね(笑)。フェスによっては、普段相まみえない方々ばかりのこともあって、それはそれで楽しいんですけど、「FUJI & SUN」はひさしぶりにお会いする方が多くていいですね。共通したテーマを持ってここまでやってきた人たちばかりというか。そういう人と楽屋で話したりステージを観たりして、その人の現在地を知れるのは刺激にもなりますし。その刺激を受けて自分もステージに立つという感覚が、「FUJI & SUN」にはいつもあるなと思います。

──今年も知り合いの方がけっこう多そうですね。

めちゃくちゃ多いです(笑)。んoonとかMONO NO AWAREは一緒のライブに出るのはひさびさですね。MONO NO AWAREは一時期ちょいちょい一緒になっていたんですけど、バンドを観るのは何年ぶりだろう。少し前にMIZ(玉置周啓と加藤成順のアコースティックデュオ)を「フジロック」で観たけど、バンド編成を観るのはかなりひさびさだと思います。

──2日目には、3月に大阪・ユニバースで競演された中村佳穂さんもいらっしゃいます。

そうですね。中村さんは2017年頃からちょいちょい一緒になっていて。一緒に動画を撮ったりしたこともありますし。本人にもよく言っているんですけど、中村さんと私は全然違う競技をしていると思っていて。ライブで一緒になるたび、「なんだこの生き物は!」という気持ちで観てしまう。私が「隣町で上がってる花火みたい」と言ったことがあるらしいんですけど、3月のツーマンも本当にそういう感じだったんですよ。楽屋で準備をしていたら佳穂さんの歌声が聞こえてきて、「ああ、遠くで上がってる……」と思いました(笑)。それこそ「FUJI & SUN」にも出演される森山直太朗さんもいらっしゃっていて。昔から、中村佳穂さんとライブをやるとびっくりするような人が楽屋にいるんです(笑)。

折坂悠太

──今年の「FUJI & SUN」で特に注目のアクトを挙げるとしたら誰ですか?

……くるり!

──やっぱりくるりですか(笑)。今年も折坂さんの直後ですしね。

くるりのコピバンをやっていましたからね。私はドラムを叩いてて。今年も技を盗めたらと思います(笑)。