龍宮城|セルフプロデュースの第2章へ、7人の目指す道は──“オルタナティブ歌謡舞踊集団”の行方

2025年2月22日、龍宮城は東京・日本武道館で単独公演「裏島」を開催。昼夜2公演のステージで、“オルタナティブ歌謡舞踊集団”のコンセプトに相応しい、極めて個性的で魅力的なパフォーマンスを繰り広げてみせた(参照:龍宮城、原点から新境地まで昇り詰めた初の日本武道館ライブ「1人でも多くの人に寄り添う」)。

この“オルタナティブ歌謡舞踊集団”というコンセプトは、龍宮城誕生のきっかけとなったオーディション番組「0年0組 -アヴちゃんの教室-」にて、“教師”であるアヴちゃん(女王蜂)が掲げたもの。龍宮城のメンバーとして歩み始めた7人は、数多のボーイズグループとは異なるこの難解なコンセプトを体現すべく活動を続けてきた。武道館公演「裏島」は、龍宮城のデビューからのおよそ2年間を総括する集大成と呼べるステージとなったが、ここで初披露された最新楽曲「WALTZ」は、オーディションからここまで7人を育て上げてきたアヴちゃん先生による最後のプロデュース曲であることが後日明らかになった。

セルフプロデュース体制に突入した龍宮城は、これからどうなっていくのか? 7人に話を聞いた。

取材・文 / 臼杵成晃撮影 / YURIE PEPE

武道館に立った龍宮城

──まずは2月に行われた日本武道館公演のお話を。開催前から「龍宮城は武道館が似合うだろうな」と思っていましたが、想像以上のフィット感というか……龍宮城というグループのコンセプトやビジュアル、音楽を表現するうえでこんなにしっくりくる会場がほかにあるだろうか?とすら思いました。皆さん自身はどう感じましたか?

KENT 龍宮城には少し和のテイストもあるので、確かに武道館という空間が似合うなと感じたし、そう感じてもらえたことがうれしいです。

龍宮城

龍宮城

KEIGO イベントなどで何度か立たせていただいたことはありましたが、自分たちのお客さんだけであの空間を埋めることにすごく憧れを持っていたんです。だからステージに立ったとき、ペンライトで一面紫に染まった武道館の客席を観たときは、こんなにもたくさんの方々が僕たちのことを応援してくれているんだなと改めて実感できました。あと、これは個人的な話なのですが……これまで武道館に出演させていただいたときはバックヤードの一部を僕らの楽屋として使わせていただいていたのですが、あの日は全部が自分たちのために用意された空間で、走り放題みたいな。

──(笑)。

KEIGO そこにも感動しました。完全に龍宮城の空間なので「この武道館という会場を、今日は龍宮城だけが使えるんだ」というありがたさが身に沁みました。

KEIGO

KEIGO

──武道館は大人数を収容できる会場ではありますが、ほかのアリーナ会場と比べると客席からステージまでの距離をあまり感じないですよね。龍宮城の公演のようにセンターステージがあるとなおさら。なんならZeppのように大きなライブハウスよりも近いと感じる。それはメンバーの皆さんも感じたのでは?

冨田侑暉 そうですね。距離感の近さはすごく感じました。センターステージで披露した「JAPANESE PSYCHO」の寸劇で花道を歩いているときは、本当にお客さんが真隣にいるような感覚で。

冨田侑暉

冨田侑暉

──間近で観たお客さんはライブハウス以上の距離感で興奮したでしょうけど、すり鉢状になった武道館では上の階から俯瞰で見るステージもきっと楽しかったんじゃないかと思うんですよね。あらゆる角度に観客の視線があることはプレッシャーでもあったかと思うのですが、いかがでしたか?

齋木春空 普通のライブ会場では、ステージの奥のほうで行っているパフォーマンスは少し伝わりにくいのかなと。でもセンターステージでは360°を使って表現できる。

──なるほど。立体的なフォーメーションのパフォーマンスが多い龍宮城にとっては、あのセンターステージもメリットとして働く部分が大きかった。

齋木 はい。今まで後ろのほうで表現していた細かいニュアンスや表情まで直接伝わる感覚があって、本当に楽しかったです。

齋木春空

齋木春空

──ライブとして大成功と言える内容だったのではないかと思いますが、皆さんの充実度としてはいかがでしょう。

Ray 練習してきたことがしっかり出せたし、本番でなければ出ないアドレナリンみたいなものもメンバー全員すごく出ていたと思います。これまでの活動の集大成でありながら、これからの龍宮城も見せる、という一番の目標はしっかりと達成できたと実感できているので、大成功と言っていいのではないかなと思います。

武道館公演が龍宮城にもたらしたものは?

──武道館ライブを通して得た収穫や気付きがあれば教えてください。

ITARU 武道館公演の演出や構成を考えるときに一番大変だったのは、自分たちが見せたいもの、届けたいものと、それがちゃんと伝わるのかというせめぎ合いで。センターステージやモニターをどう使うか。本当にギリギリまでずっと考えて、自分たちが見せたいものをしっかり形にすることにすごく時間を費やしたんです。あの「考える時間」を通して得たものは、これからの活動にも必ずつながっていくと思います。

──なるほど。ではメンバー個人個人のよかったところ、すごいなと思った場面を挙げてもらえますか? ほかのメンバーはもちろん、自画自賛でもかまいません。

S 僕がすごいと思ったのは、春空の「SEAFOOD」の口上。あれをやって成立するのはたぶん春空だけだし、春空のキャラクターのいい部分があの場面にすべて現れていたなと思う。武道館という会場で、「SEAFOOD」という楽曲があったからこその演出だと思うし、何より口上を入れたのは春空自身の発案だったんです。自分も前に「SEAFOOD」で口上をやったことがあったんですが、かなわないなと思いました。すごくよかった。

S

S

──「SEAFOOD」は奇怪でコミカルな要素がある曲ではありますが、武道館では歌舞伎の要素を取り入れた口上がカッコよくハマってましたね。

齋木 「SEAFOOD」は最初に演出を考えたときから「面白さの中にカッコよさを表現したい」と思っていた曲なんですよ。冬ツアーでは少し面白味の強い口上だったんですけど、武道館ではカッコよさをしっかり表現したいと思って歌舞伎を取り入れてみました。

──特別な演出と言えば、KENTさんがピアノ弾き語りで歌ったソロ曲「BOYFRIEND」のパフォーマンスについても聞いておきたいですね。どうでしたか?

KENT うまくできたかどうかよりも、その場で伝えられるものはけっこうあったんじゃないかなと思っています。本番では「BOYFRIEND」の前からピアノのことが頭によぎるくらい不安を感じていて……もっとうまくやりたかったという悔しさはありますけど、日本武道館という大きな会場で、特別な環境だったからこそ誰かの心に届けられたのであれば、がんばってよかったなって。

Ray KENTはこれまでピアノをやっていたわけでもないのに、準備期間に楽譜が何回も変わったりして、ずっと「できない」って言っていたんですよ。でもやっぱりKENTが1人で歌うのを聴きたかったし、実現すればいいステージになることはわかっていたから、メンバーも制作チームも「やってみようよ」と後押しして。実際にできあがったパフォーマンスを観て、KENTは大変だったと思うけど、やってくれてよかったなと思いました。龍宮城は歌とダンスだけではなく、楽器を使ったパフォーマンスなども今後はやっていけると思っているので、ピアノの弾き語りで龍宮城の枠をさらに広げてくれたKENTには感謝しています。

Ray

Ray

──KENTさんの弾き語りを含めて、あの武道館という大舞台の上で皆さん全員が堂々としていたというか、緊張しているようには見えなかったんですよ。萎縮することなく、あの特別な空間をしっかり乗りこなしているように見えたのですが、実際は?

KENT 武道館の前に行った冬ツアーがかなり効いていたと思います。大きなステージに立つ前に、ライブハウスで1人ひとりにしっかりと届けるパフォーマンスを意識して、表情1つとってもしっかりこだわるライブを重ねてきたからこそ、武道館でもあまり不安はなかった。自信を持ってパフォーマンスに臨めたのがよかったのかなと思います。

KENT

KENT

──初の武道館ワンマンで1日2公演というのも大変だったと思いますが、体力的な面でも問題はなく?

KEIGO 1部が終わったときは疲れもありましたが、演出のSota(GANMI)先生やスタッフさんからいただいた言葉がうれしくて、2部はもはや楽しみで仕方ないくらいの感覚で挑んで……さすがに最後の「裏島」3回では体力も限界でしたけど、限界の中でどこまで自分たちを追い込めるかが勝負だったので、それすらも楽しめましたね。

──いろいろと実りの多い武道館公演だったのではないかと思いますが、何か反省点はありますか?

KEIGO はい(挙手して)。1部のときかな? Rayがギターの弾き語りで「完璧」を歌っているとき、僕は次の「BL」のためにセンターステージの裏でスタンバイしていたんですよ。Rayが歌っている裏で「BL」の音確認をしていたんですけど……「完璧」は急に無音になったりするじゃないですか。僕、音が止まったタイミングで爆音で歌っちゃってて(笑)。近くにいたお客さんにはもしかしたらバレているかもしれない。

ITARU 僕も1つ。曲中で、一瞬歌うのを忘れてしまったんですよ。歌詞が飛んだとかではなくて……気が付いたら歌詞が過ぎ去っていた。

ITARU

ITARU

Ray カッコよく言うなよ(笑)。

ITARU そこだけ一瞬空白になったんですよ。でもSが臨機応変に対応してくれて。普段ならそういうことをやらかしちゃうと引きずってしまうんですけど、Sのおかげでちゃんとやり切れた。

──そういった反省点も含めて、日本武道館でのライブが龍宮城にもたらしたもの、一番の収穫はなんだと思いますか?

Ray 「自信」だと思います。大きなキャパでワンマンライブをすること自体が初めてで、それを龍宮城ができるのか?という心配もありました。もちろん集客人数的な問題もありましたけど、僕らの音楽が広い会場の一番奥まで届けられるのか。そこに不安を感じていて、本番まで何度も改良を重ねたので、ライブを終えたときに「できた」と実感できたことは僕らにとって大きな自信につながった。武道館を経て、そのあといくつかライブをやりましたけど……怖いと思うことが減りましたし、あの武道館公演が、これからの自分たちにとって大きな土台になるんだろうなって。