中島健人が1stシングル「MONTAGE」をリリースした。
シングルの表題曲はテレビアニメ「謎解きはディナーのあとで」のオープニングテーマ。作詞をcAnON.と中島、作編曲を澤野弘之が手がけた、ミステリアスな空気が漂うダンスナンバーとなっている。さらにシングルには葛飾北斎をテーマにした次世代型イマーシブ体験「HOKUSAI:ANOTHER STORY」とのコラボレーションソング「碧暦」、ポップに振り切った「JUST KENTY☆」、セクシーな雰囲気のある「SUPERNOVA」、2023年にInstagramで発表された「Jasmine Tea」を収録。ソロアーティスト・中島健人のさまざまな表情を感じ取れる1枚に仕上がった。
音楽ナタリーでは中島にインタビューを行い、各曲への思い入れと、ツアーやフェスに勤しむ近況について語ってもらった。アイドルとしての道を歩み始めて17年、今もなお「まだ最高到達点には至っていない」と中島は話す。その目にはどのような景色が見えているのだろうか。彼の言葉や表情には、充実と希望が満ちあふれていた。
取材・文 / 森朋之撮影 / 梁瀬玉実
澤野さん、そういうことですね!
──ソロ1stシングル「MONTAGE」、素晴らしいです。表題曲「MONTAGE」をはじめ、中島さんの個性とセンスが存分に発揮されていて。
ありがとうございます。そう言っていただけてうれしいです。
──「MONTAGE」はアニメ「謎解きはディナーのあとで」オープニングテーマです。作曲は澤野弘之さん、作詞は中島さんとcAnON.さんの共作ですが、制作のプロセスについて教えてもらえますか?
この曲、制作期間がわりと長かったんですよ。アルバム「N / bias」(2024年12月発表)のリリース前から草案みたいなものがあって、かなり早い段階から取りかかっていました。まず澤野さんがトラックを提示してくれたんですけど、その時点ではどういうふうに「謎解きはディナーのあとで」に寄り添っていくのかうまくイメージできなかったんです。でもメロディが入った瞬間に「澤野さん、そういうことですね!」という感じになって。
──メロディがポイントだった、と。
はい。メロディが入ってない段階では、更地を見ているような状態だったので(笑)。メロディが乗ったときに「なるほど、そういう建物が建つのか」と。だったら塗装はこうして、内装はこういう感じで……と決まっていったという感じですね。ただ、更地のときから自分の中で「MONTAGE」という言葉はあったんです。最初から「この言葉でいきたいです」と提案して、最後まで変わらないままタイトルになって。それくらい、トラックをいただいた時点で勘を研ぎ澄ませられていたんだと思いますね。
──なるほど。
僕は作詞するときも曲を書くときも、キーワードを基準にして作っていくことが多いんですよ。今回のシングルに入っている「Jasmine Tea」も、“ジャスミンティー”という言葉から広げていって。「MONTAGE」もまず言葉を決めてから、「ここからどういう物語を作れるんだろう?」とアニメの映像を観ながら書き進めていきました。
14年の時を経ての巡り合わせ
──「構成」「組み立て」を意味する「MONTAGE」は、「謎解きはディナーのあとで」のストーリーや世界観ともぴったり重なる言葉ですよね。
探偵モノや刑事モノの作品には、登場人物がホワイトボードに写真を貼ってつなぎ合わせながら事件を解き明かそうとする場面がよくあるし、「MONTAGE」を起点にしたのはよかったかなって。もう1つ、「Question mark」というワードもポイントかな。未知の物事を解明することで、未来に進んでいくというイメージですね。あとは遊び心で「ディナーのあとで」という言葉を入れたり。澤野さんにも「『ディナーのあとで』って、どういう譜割りで入れたらいいですかね?」と相談して、「ちょっと英語っぽく発音してみましょうか」というアイデアをもらいました。
──澤野さんといろいろやりとりをしながら制作を進めた?
歌のレコーディングにも澤野さんが来てくれて、いろいろとディスカッションしながら進めました。澤野さんのサウンドは壮大で、かなり濃くて重厚感があるのでリリックもそれに合わせたほうが面白いし、ボーカルの質感を含めて、普段とはちょっと違う感じでやれたかなと。スタッカート気味に歌ってるところが多くて、振付の手の動きもそれに合わせています。コレオグラファーは「THE CODE」(アルバム「N / bias」収録曲)の振付をしてもらったKAZtheFIREさんにお願いしました。音楽と言葉、ダンスが全部連動してるんですよね。
──制作段階から「MONTAGE」のパフォーマンスも見えていた?
そうですね。スタンドマイクをお嬢様に見立てようというのを、最初から決めてました。僕が執事になって。そのお嬢様と執事の関係性も「MONTAGE」の歌詞に入れています。そこもこの曲の面白味の1つだし、最終的に自分にぴったりフィットする楽曲になったという感覚がありますね。
──中島さんはもともと2011年に放送されたドラマ版の「謎解きはディナーのあとで」が好きだったそうですね。
はい。北川景子さんが演じるお嬢様の天真爛漫ぶりがすごく印象的で。隣にクールな佇まいの翔くん(櫻井翔)がいて、そのコントラストがすごく素敵だったんですよね。毎週楽しみにしてたし、劇場版も観に行きました。今回主題歌が決まって、翔くんにも連絡したんですけど、「アニメ版のテーマをケンティーに歌ってもらえてうれしい」と言っていただいて、それもうれしかったですね。そういえば僕が初めて「Mステ」に出たとき、嵐の皆さんも出演されていて、「迷宮ラブソング」(ドラマ「謎解きはディナーのあとで」の主題歌)を歌っていたんですよ。あれから14年の時を経て、アニメ版の主題歌を担当させてもらったのも素敵な巡り合いですよね。
宝物のような“青色”
──そのほかの収録曲についても聞かせてください。2曲目の「碧暦」は葛飾北斎をテーマにした次世代型イマーシブ体験「HOKUSAI:ANOTHER STORY」とのコラボレーションソングです。80'sテイストの楽曲で、とても美しいタイトルですね。
最初に僕が考えたのは「Endless blue」というタイトルだったんです。「碧暦」は葛飾北斎をイメージして制作した楽曲なんですが、北斎は「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」をはじめ、70代になってからもすごい作品を作っているし、90歳まで創作を続けていて、ずっと青春時代を過ごしていたんだろうなと思うんですよね。今の自分もそうで、終わらない青春が続いている感覚があるんです。もう1つの意味合いは、僕にとっての“青”がどういう色なのかということ。僕はSexy Zoneのときから、自分のメンバーカラーである青をずっと大切にしてきたし、ファンの皆さんとのつながりを作ってくれた宝物のような色なんですね。そこにさらに深みを足したくて、宝石などの表現にも使われる“碧”がいいなと。そこに“暦”を加えて「碧暦」とすることで、北斎の人生であると同時に、僕の人生でもあるという意味合いを持たせました。あと、青天の霹靂というニュアンスもあるんですよ。曲や振付を作ったり、芝居をしていたりするときもそうなんですけど、新しいアイデアを思い付いたときの感覚って青天の霹靂だなって。きっと北斎もそうだったんじゃないかな。
──中島さん自身の思いや人生も反映されているんですね。
そうですね。この曲を制作していたとき、スケジュールがすごいことになっていたので、かなり疲弊していて。そのタイミングで書いたのが、「碧暦」のサビだったんですよ。「渇ききった哀を抱いて」というフレーズのように、まさに哀しみ切ってしまって、渇いていたというか……すり減った状態のときに書いた歌詞だからこそリアルな部分が出てますね。歌詞の表現で言えば、“哀”を“藍色”に重ねているんです。気持ちも絵具も乾き切ってるんだけど、それでも描いていくという。何かを創造するのって、そういうことでもあるなと思うんです。きついときもあるし、疲れ切ってるときもある。目標地点もわからないし、すべてが儚いんだけど、こんなところで終われないという強い気持ちもあって。そんなことを全部含めて、ひねり出した歌詞ですね。僕はSexy Zoneを愛していて、ずっとリスペクトしていて。グループとして活動していた13年間は素晴らしいものだったし、僕は今もあのときの輝きを抱えているんですよ。そしてソロになったけど、そうやって青春は続いているし、前に向かって走り続けていて、その中で新たなチーム、新たなファンとの出会いもある。それが「走り出した碧はきっと 孤独を消してくよ」という歌詞になっているんです。
──シリアスな状況に直面しても、それが新たなクリエイティブにつながる。アーティストの醍醐味かもしれないですね、それは。
そうじゃないと自分らしくないなと思っています。クリエイティブに蓋をするのは毒だし、やってはいけないことだと思っていて。自分の信念を信じて創作を続ける中で、たくさんの宝石に巡り合えている気がします。
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