SixTONESサブスク解禁記念、66曲レビューでデビューから現在まで振り返る

結成から10年、デビューから5年──SixTONESの全楽曲の中から66曲のストリーミング&ダウンロード配信がついにスタートした。

多くの人々が待ち望んでいたであろうSixTONESのサブスク解禁。デビュー前から愛されてきた「JAPONICA STYLE」「"Laugh" In the LIFE」、1stシングル曲「Imitation Rain」、大ヒット曲「こっから」、3月にリリースされた14枚目のシングル曲「バリア」、ファンに高い人気を誇る「Strawberry Breakfast」と「MTV Unplugged」出演時のライブバージョン、各ソロ曲など厳選された66曲が楽しめる。あるときはスキルフルなラップを繰り出し、あるときは情感豊かな歌声を響かせ、またあるときには熱烈なデスボイスを放つ──6人はアイドルという枠にとらわれない個性でファンを魅了してきた。彼らの表現力が光る66曲の中から、人知れず傷付いた心を癒やす曲、仕事の突破口を開いてくれる曲、仲間の大切さを再確認する曲、幸福感を高める曲……ほかならぬ“あなた”に響く曲がきっと見つかるはず。

文 / 寺島咲菜

SixTONES 66曲のストリーミング&ダウンロード配信中

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2020年

2012年放送の学園ドラマ「私立バカレア高校」での共演をきっかけにSixTONESを結成したジェシー、京本大我、松村北斗、髙地優吾、森本慎太郎、田中樹。グループ名には6つの音色と音域、メンバーそれぞれが持つ個性=“原石”を磨いて輝かせていきたいという願いが込められている。SixTONESの歴史が大きく動いたのは結成から4年8カ月が経った2020年1月。YOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)提供のロックバラード「Imitation Rain」で満を持してデビューを果たし、メインボーカルのジェシーと京本を筆頭に、貫禄たっぷりの歌声で、ボーカリストとしての高いポテンシャルをお茶の間に印象付けた。3rdシングル「NEW ERA」以降は既発曲のリミックスバージョンを発表し、過去の楽曲に再び光が当たり始める。

4月にスタートしたニッポン放送のレギュラー番組「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」では、田中がオリジナルラップを作る「田中樹全国ラジオ34局ラップチャレンジ」という特別企画が展開された。デビュー1年目で多忙を極める中、田中は2ndシングル曲「NAVIGATOR」のイントロをベースに、ニッポン放送の全国34局分のご当地ラップを披露するという大きな挑戦を成し遂げた。

なおSixTONESのリーダーは年ごとの交代制となり、髙地が初代リーダーを務めた。

リリース作品
シングル「Imitation Rain」「NAVIGATOR」「NEW ERA」、ライブDVD / Blu-ray「TrackONE -IMPACT-」

リーダー
髙地優吾

1月

「Imitation Rain」通常盤ジャケット

「Imitation Rain」通常盤ジャケット

Imitation Rain
[作詞・作曲・編曲:YOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)]

アイドルのデビュー曲にはたいてい口ずさみたくなるようなキャッチーさ、あふれんばかりのフレッシュさを感じるものだが、SixTONESの記念すべきデビュー曲は静謐なピアノで幕を開ける異色のロックバラードだった。書き下ろしたのは、世界を股にかけて活躍するYOSHIKI(X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS)。雨は時に人に試練を与え、時に恵みをもたらす──そんなメッセージを込めるように、YOSHIKIは決して平坦ではなかったSixTONESのデビューまでの道のりを示しながら、6人に夢を託したのかもしれない。SixTONESが激しく打ち付ける雨をものともせず一心不乱に歌い踊るミュージックビデオは強いインパクトを与え、京本の歌唱スキルの高さがうかがえる転調パートも人々の心を大きく揺さぶった。

Telephone
[作詞:ONIGASHIMA / 作曲:Justin Trugman、Jason Parris、Drew Ryan Scott / 編曲:Jason Parris]

甘美な色気をまとった欲望渦巻くアッパーチューン。日本語詞と英語詞が入り混じり、ラップも盛り込まれた複雑な構成の曲をSixTONESはデビュー当時から歌いこなしている。パフォーマンスにおいては、受話器をモチーフにしたしなやかなダンス、松村が踊りながら吐息混じりに発する「Call me girl」のひと言が多くのファンを虜にしてきた。

NEW WORLD
[作詞:SAEKI youthK / 作曲:TAKAROT、SAEKI youthK / 編曲:TAKAROT]

デビューシングルの通常盤カップリング曲として収録されたのは、SixTONESの軌跡をたどるかのような1曲。仲間への思いを込めたストレートなメッセージと、新たな挑戦へと踏み出す決意が、スケール感のあるサウンドとともに届けられた。「果てのない旅路」「新しい世界」「夢の先」──彼らの目には未来は今どう映っているのだろうと想像してしまう。

7月

「NAVIGATOR」通常盤ジャケット

「NAVIGATOR」通常盤ジャケット

NAVIGATOR
[作詞:Seiji Takagi、Kokei“CO-K”Takafumi / 作曲:Seiji Takagi / 編曲:Daisuke Kadowaki、Kokei“CO-K”Takafumi]

2ndシングルの表題曲はSixTONESにとって初のアニメタイアップ。「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」のオープニングテーマとなったこの曲は、ゾクゾクと迫り来るようなストリングスの音や打ち込みのビートが絡み合う危険な香りが漂うロックチューン。たとえ無謀であっても己を突き動かす衝動を止めることはできず、「可能性をゼロの先へ」と手を伸ばす──デビューから半年、さまざまな領域において挑戦の連続であっただろうSixTONESの姿ともリンクする。

JAPONICA STYLE
[作詞:ma-saya / 作曲:Takuya Harada / 編曲:Kushita Mine]

扇子を手にひらひらと舞い、指先まで神経を研ぎ澄ませるように繊細に踊る。妖艶さをまとった歌声はどこか浮世離れしていて、ミュージックビデオはデビュー前に公開されたにもかかわらず大きな話題を呼んだ。全編にわたって和のテイストがちりばめられており、日本を背負って世界を目指すSixTONESの気概を感じさせる。

11月

「NEW ERA」通常盤ジャケット

「NEW ERA」通常盤ジャケット

NEW ERA
[作詞:Page Grace、Dr. Loui、Naoki Itai / 作曲・編曲:Naoki Itai、MEG]

3rdシングルの表題曲は前作に続いてまたもアニメタイアップ。「半妖の夜叉姫」のオープニングテーマとしてアニメを盛り上げた。イントロでは箏がシンボリックに響き、迫力に満ちたロックサウンドと、どこまでも突き抜けるような6人の歌声に否が応でも鼓動が高鳴る。起伏に富んだ旋律で繰り出される田中のラップも聴き応え十分。

NAVIGATOR(H ZETTRIO Crossover Rearrange)

SixTONESの既発曲を新たなアレンジで生まれ変わらせるシリーズは、ここからスタートした。「NAVIGATOR」をアップデートしたのは国内外で活躍するジャズトリオ・H ZETTRIO。音数の多い複雑なサウンドのロックナンバーが、H ZETT M(Piano)、H ZETT NIRE(B)、H ZETT KOU(Dr)の手で洗練されたピアノジャズナンバーへと変化を遂げた。

2021年

デビュー2年目に突入したSixTONESは念願の1stアルバム「1ST」を1月にリリース。本作以降、年始のアルバム発売が恒例化する。2021年と言えば、コロナ禍の真っ只中。その影響は音楽シーン全体におよび、SixTONESもまた「1ST」を携えたアリーナツアー「on eST」の一部公演が中止となり、無観客配信ライブに切り替えることを余儀なくされるなど、多くの困難に直面した。それでもSixTONESは歩みを止めることなく、常田大希(King Gnu、MILLENNIUM PARADE)やくじらとの出会いで新たな表現の可能性を追い求めた。

2021年からはリーダーをじゃんけんで選出することとなり、選ばれたのは松村。2021年度後期放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で英語が堪能な大学生・雉真稔を演じた松村は、この作品をきっかけに俳優としても大躍進を遂げた。

リリース作品
シングル「僕が僕じゃないみたいだ」「マスカラ」、アルバム「1ST」、ライブDVD / Blu-ray「on eST」

リーダー
松村北斗

1月

「1ST」通常盤ジャケット

「1ST」通常盤ジャケット

ST
[作詞:Sarari Matsubara / 作曲・編曲:Kengo Minamida]

記念すべき1stアルバム「1ST」のリード曲として発表されたのは、SixTONESの存在感を遺憾なくアピールするハードロック調のナンバー。ファンのシンガロングを意識した「Wow wow」という歌い出しで始まり、サビでは「完璧だなんて間違ったって思うな」「泣き笑っても憂いても未来は 強い光の方だ そこに向かって行くんだ」と自らを奮い立たせるかのごとく熱唱する。田中が弾丸のように発するラップには「LiSTen now」「STatement」「hiSToric」「STand up」「STory」「hiSTory」「booST」「STarted」という“ST”を含むワードがちりばめられている。

Special Order
[作詞:Atsushi Shimada / 作曲・編曲:Albin Nordqvist]

ジェシーのハイテンションなフェイクで始まるダンスナンバー。重低音が効いたトラックの上で英語詞と日本語詞が複雑に入り乱れる展開は、SixTONESの真骨頂とも言える。「壊す your ordinary」「超える borderline」「魅せる to the top」という歌詞はSixTONESの底知れぬ野心の表れかもしれない。

S.I.X
[作詞:Toru Ishikawa / 作曲:Joe Ogawa、Toru Ishikawa / 編曲:Joe Ogawa]

一聴して脳内に浮かぶのはステージを盛り上げるSixTONESの姿。ずっしりと響くヘビーなサウンドに乗せて「騒げ Party people make some noise」「Clap your hands now 手をたたけ」「ありのまま just dance 飛び跳ねろ jump」と聴く者を煽り続ける。理性を取っ払ってただ音に身を任せるのもいい、そう思わせてくれるパーティチューン。

Lifetime
[作詞:Komei Kobayashi / 作曲:Christoffer Semelius、Jimmy Claeson / 編曲:Christoffer Semelius]

「1ST」の本編を締めくくる、人生や生涯を意味する「Lifetime」をタイトルに冠した珠玉のバラード。「あの出会いも あの別れも」「あの涙も あの笑顔も」糧にして未来に向かって歩みを進める、そんな揺るぎないメッセージが壮大なアンサンブルとともに届けられる。リリース翌年の2022年にSixTONESはクラシック音楽番組「題名のない音楽会」に初出演し、世界的に活躍するチェリスト宮田大とオーケストラとともに「Lifetime」を披露。緻密で格式の高いクラシック的なアレンジに、貫禄すら漂わせるSixTONESの美しい歌声がよく映えた。

うやむや
[作詞:KOUDAI IWATSUBO / 作曲:KOUDAI IWATSUBO、Seiji Iwasaki / 編曲:Seiji Iwasaki、KOUDAI IWATSUBO]

SixTONESの豊かな表現力が示された「1ST」でその一翼を担ったのがボカロテイストの「うやむや」。起伏に富んだメロディに言葉数の多い歌詞──一聴するだけで歌唱難度の高さがうかがえる。和のサウンドに重なる6人の歌声はどこか艶やかで、中でも京本と森本の甘やかなボーカルが聴き終えたあともしばらく耳に残る。

"Laugh" In the LIFE
[作詞・作曲・編曲:GAKU]

心弾むようなエレクトロサウンドに、「So なんだって We can make it」という全能感に満ちたフレーズ。ここまで底抜けに明るいポップチューンはSixTONESの楽曲には珍しい。6人の歌声ににじむのは、弾けるフレッシュさとあふれ出る親しみやすさ。抜群の求心力がリスナーの心をつかんで離さない1曲だ。

RAM-PAM-PAM
[作詞:ONIGASHIMA / 作曲:Scott Russell Stoddart、Warren David Meyers、Mark Angelico / 編曲:Scott Russell Stoddart]

ライブでもたびたび披露されてきた「RAM-PAM-PAM」。アッパーなエレクトロサウンドに合わせ、本能のまま情熱的に歌い踊るSixTONESからはナチュラルな色気が漂う。バウンシーなビートの上で呪文のように繰り返される「RAM-PAM-PAM」のラインには、否応なくテンションが引き上げられる。セクシーで大胆なダンスはジュニア時代から多くのファンを虜にし、ライブでは起爆剤に。

2月

「僕が僕じゃないみたいだ」通常盤ジャケット

「僕が僕じゃないみたいだ」通常盤ジャケット

僕が僕じゃないみたいだ
[作詞・作曲:SAEKI youthK / 編曲:Naoki Itai、SAEKI youthK、MEG]

SixTONES初の映画主題歌は、松村と森七菜がダブル主演を務めたラブコメ作品「ライアー×ライアー」の物語を彩る王道恋愛ソング。映画の主人公たちの純粋な恋を後押しするように、華やかなバンドアンサンブルやみずみずしい歌声がまっすぐに響く。ワイルドさが全面に出たエレクトロやロックチューンの多いSixTONESの楽曲の中で、まばゆい存在感を放っている。

Call me
[作詞:nana hatori / 作曲:Christopher Golightly、Carlos K. / 編曲:Carlos K.]

好きな相手に振り向いてもらえない、やるせない思いがつづられた全編英語詞によるラブソング。頼りない声で「Call me(電話して)」と繰り返されるたび、胸が締め付けられる。忍び寄る失恋の影に心は痛むが、悲痛な思いを見事に表現したはかなげな歌声に、つい聴き入ってしまう。

Strawberry Breakfast
[作詞:MiNE、Atsushi Shimada / 作曲:Josef Melin、Jimmy Claeson / 編曲:Josef Melin]

“君”と“僕”の日々を名作映画になぞらえたこの1曲は、ファンの間で“苺朝食”の名で愛されており、シングルのカップリング曲でありながらその人気は絶大。生バンドが織りなす軽やかなファンクサウンドに身も心も躍り出す。「二人の呼吸が混ざり合うだけで B.G.M さえも必要ない」「世界が恋する Heroine」「主演女優賞をあげる Just for you」というロマンチックなフレーズをSixTONESがさわやかに歌いこなしているのも魅力の1つだ。

8月

「マスカラ」通常盤ジャケット

「マスカラ」通常盤ジャケット

マスカラ
[作詞・作曲・編曲:Daiki Tsuneta]

King Gnu、MILLENNIUM PARADEでクリエイティブな才能を発揮し、カリスマ的な人気を誇る常田大希との歴史に残るタッグが実現したのがこの曲。夢中だった“あの頃”の恋をどこか冷めた視点で振り返り、後悔の念に駆られる大人のラブソング。印象的に響く繊細なアコースティックギターのリフとハーモニクス、歌謡曲のような濡れたメロディにはノスタルジーが漂う。「Call me」もそうだが、SixTONESには失恋ソングが似合う、それを決定付けた1曲だ。

僕が僕じゃないみたいだ(Dramatic Rearrange)

本気の恋に戸惑う“僕”の心情をつづったラブソングが、きらびやかで厚みのあるサウンドから、ボーカルを引き立てるピアノとストリングスのみのシンプルなアレンジに一新。“Dramatic Rearrange”の制作に伴い再レコーディングが行われており、このバージョンでは繊細な息遣いや感情に訴えかけるような6人の歌声が味わえる。

フィギュア
[作詞:Whale Don't Sleep / 作曲:Whale Don't Sleep、Page Grace / 編曲:Naoki Itai]

誰しも、お守りのように携えておきたい曲が1つはあると思う。筆者にとってそれが「フィギュア」だ。yamaの代表曲「春を告げる」でおなじみのWhale Don't SleepことボカロP・くじらがさりげないエールを送るポップチューン。キーボードを軸としたサウンドが軽やかに流れる中、社会の不条理にさらされ、諦念を抱きながらも、替えのきかない存在でありたいと願う姿が描かれている。