
再生数急上昇ソング定点観測 (2025年9月3週目) [バックナンバー]
「モニタリング(Best Friend Remix)」が明かす真実 / CUTIE STREETを今の日本が求めている / 「At The Last」は夢を追う者たちへのエール
今、盛り上がり始めている曲 / これから盛り上がりそうな曲について詳しく解説
2025年9月19日 18:30 3
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで9月5日から9月11日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、2位に
HANA「BAD LOVE」ミュージックビデオ
3位には
藤井風「Prema」ミュージックビデオ
8位には
aespa「Rich Man」ミュージックビデオ
54位にランクインしたのは
GRe4N BOYZ「愛唄」ミュージックビデオ
人気ダンスグループの新曲が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。
DECO*27「モニタリング(Best Friend Remix)」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場1位
さまざまな話題曲を押さえて今週の1位に輝いたのは、
DECO*27「モニタリング」ミュージックビデオ
このリミックスはオリジナルとどこが変わったのか? まずはサウンドについて触れていこう。ダブステップとハウスを融合させたベースハウスと歌謡曲のテイストを組み合わせたところは原曲と同じだが、今作はそこにマンドリンやカッティングギター、ストリングスなどを追加したことで、さわやかさと開放感が生まれている。
そしてそれ以上に変化が印象的に感じられるのが歌詞だ。「モニタリング」の設定は、「ストーカーにモニタリング(監視)されている」という被害妄想を抱えた主人公が想像する、玄関扉の向こう側にいるミクの心情を描いていたと考えられる。一方リミックスは、序盤に「もしもーし。ねえ…大丈夫?…んー、心配だから今からそっち行くね」というメッセージアプリの言葉が流れることからわかるように、ミクは実は主人公を心配して家に訪れていたBest Friend(親友)であり、そんな彼女の心情を表している曲なのだろう。
例えばサビの
お願い きみが欲しいの
慰めさせてシェイクシェイク 愛の才能で
泣いてくれなきゃ 涸かれてしまう 濡れていたい
ねえいいでしょう? 舐め取って 飲み干したいんだってば
という歌詞は、リミックスで
お願い きみが欲しいの
慰めさせてベストフレンド 愛の才能で
泣いてくれるかい きみのツライ 抱き締めたい
ねえいいでしょう? 分け合って 乗り越えたいんだってば
に変更されており、聴感をほとんど変えないまま、原曲の性的なニュアンスを感じさせる歌詞が友情の歌へとシフトしている。
歌詞の世界観が踏襲されたMVは優しい色調や友情の温かさを感じるシーンが印象的で、その点からも親友からの励まし・見守りが物語のテーマになっていると感じた。不安に揺れる主人公の視点と、そこに寄り添う親友の視点、その2つの視点が重なり合うことで「モニタリング」の真実が見えてくるのかもしれない。
CUTIE STREET「かわいいさがしてくれますか?」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場9位
CUTIE STREET「かわいいさがしてくれますか?」和光市民文化センター サンアゼリア大ホール(2025/8/27)
TikTok総再生回数が68億回を突破した「かわいいだけじゃだめですか?」の続編として制作されたこの曲。人は誰しも見えにくい長所や、自分では短所に思える部分にも“かわいい”が存在していて「それを認め合えることができれば、きっと最強の武器になる」という思いを込めて書かれたそうだ。彼女たちが歌う自己肯定感について、筆者がメンバーの
「『かわいいだけじゃだめですか?』にしても、歌詞だけを読むと『かわいいだけでいいでしょ?』みたいにも受け取れますけど、歌の中身を見てみると可愛くないところがあっても、それを私たちが『可愛くないところも可愛いし、みんなも大丈夫だよ』という気持ちを届ける楽曲になっていて。『みんな良いところも悪いところも肯定したうえで、ちゃんと自分を大切にしようね』と訴えているのがめっちゃいい」
(出典:CUTIE STREET ソロインタビュー Vol.2:増田彩乃「やっと恩返しができる」――全ての経験を糧に届ける感謝)
今年発表されたユニセフの報告書によると、先進36カ国の中で日本の子供の精神的幸福度は32位と低い。だからこそ、自分自身のいい面も悪い面もポジティブに認めて前向きに生きようと訴えているCUTIE STREETの音楽は、今の日本に求められているように思う。
SKY-HI「At The Last」from THE LAST PIECE
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場58位
「At The Last」は6月27日にリリースされた
筆者はこの曲から“夢を追う者たちへのエール”を感じた。ただ背中を押すだけでなく、夢を追いかけるその道が決して華やかではないことも描いている。だからこそ、説得力があるのだ。夢に向かって走り出すとき、「無謀だ」「無駄だ」と言われることがある。その声は周囲の人間だけでなく、もう1人の自分の声かもしれない。それでも夢や希望に向かって走り続けていくからこそ、見える景色がある。
そんな前進力のある楽曲をSKY-HIと6次審査メンバー14名で披露したのが、今週58位にランクインしたこのパフォーマンス映像だ。SKY-HIはもちろんのこと、応募者たちの覚悟や勢いが歌声や表情からも感じられる。
- 真貝聡
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ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。
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