
再生数急上昇ソング定点観測 (2023年10月2週目) [バックナンバー]
ミスチル20年前のMV再利用にファン感涙 / ボカロPとポケモンのコラボでヒット曲続々誕生か
今、盛り上がり始めている曲 / これから盛り上がりそうな曲について詳しく解説
2023年10月13日 18:30 9
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeの、9月29日から10月5日にかけて集計されたミュージックビデオランキングのトップ100、および急上昇チャートの中から要注目トピックをピックアップします。
文
YouTubeのミュージックビデオランキングで初登場3位となったのは、テレビアニメ「
DECO*27「ボルテッカー feat. 初音ミク」
※YouTubeミュージックビデオランキング 週間6位
1996年にゲームボーイ用ソフトとして誕生し、世界中から愛されている「ポケットモンスター」。そんなポケモンと初音ミクがコラボした「Project VOLTAGE」が今注目されている。「くさ」「ほのお」「みず」などの18種類あるポケモンのタイプになぞらえて、18名のボカロPが楽曲・MVを制作し、9⽉29⽇から数カ⽉間にわたって順次公開していくプロジェクトだ。
その第1弾として発表されたのが、
稲葉曇「電気予報」
Mitchie M「ミライどんなだろう」
なお「Project VOLTAGE」の第2弾として10月6日に公開された稲葉曇「電気予報」も、1週間で170万回再生を突破し急上昇ランキング入り。本日10月13日には第3弾となる
Mr.Children「Fifty's map ~おとなの地図」
※YouTubeミュージックビデオランキング 週間46位
とぼとぼと歩道を歩く、くたびれた服装の中年男性。手のひらの180円をぼんやり眺めていたら、すれ違う人とぶつかりお金を落としてしまう。必死にかき集めてチラッと上を見たとき、ショーケースに飾られたアコースティックギターが目に入った。まるでギターに呼ばれているかのように、男はそれを買い、家でバンド名を考えつつオリジナル曲を作り始めた。離ればなれになった家族を思って書いたその曲の名前は「くるみ」。そして友人の元を訪ねた男は、1人ひとりにその楽曲を聴かせて、中年3人の同士とともにバンド・Mr.ADULTSを結成する。満を持して臨んだライブはまったく盛り上がらなかったが、全力を出し切り、晴れ晴れとした表情の彼ら。4人で一本道を歩いているとき、男はコートのポケットから紙を取り出し、丸めて捨てた。それを拾った若者は、桜井和寿。紙に書かれていたバンド名の候補、"
これは2003年にリリースされたMr.Childrenのシングル「掌 / くるみ」に収録されている「くるみ」のMVのストーリーだ。同シングルはオリコンチャートで2週連続1位を獲得、10週連続トップ10入りを記録。先述したMVは「SPACE SHOWER Music Video Awards 04」で「BEST VIDEO OF THE YEAR」「BEST GROUP VIDEO」の2つの賞を受賞している。
Mr.Children 「くるみ」MV
あれから20年が経ち、「くるみ」の映像素材を再利用して作られたのが「Fifty's map ~おとなの地図」のMVだ。この曲とのリンクを感じるのは「くるみ」だけではない。歌詞には「友とコーヒーと嘘と胃袋」「つよがり」「REM」「花言葉」「ロードムービー」など、過去のミスチルの楽曲を想起させるワードが随所にあるだけでなく、桜井の敬愛する
桜井が33歳のとき"来る未来"の自分を想像して「くるみ」を発表し、そして53歳になり"20年前の自分"へのアンサーソングとして作られた「Fifty's map ~おとなの地図」。「くるみ」のラストでMr.ADULTSが前に進んでいった土手を、20年後の「Fifty's map」のラストでは、ミスチルの4人が前に進んでいく。その姿に彼らの歩んできた道程が深く胸に響いて、どうしたって感動してしまう。
BAD HOP「TOKYO DOME CYPHER」
※YouTube急上昇ランキング入り
最後に紹介するのは、ミュージックビデオランキングのプレイリストには入っていないが、公開以来ずっとYouTubeの急上昇ランキングにいる
開催に先駆けて東京ドームでワンカット撮影された「TOKYO DOME CYPHER」は、約8年ぶりにメンバー全員でサイファーをする動画。彼らの道程も生き様もアイデンティティも、すべてが美しく集約されている。各々のヴァースでシンセやベースで変化をつけた秀逸のビートを作ったのはFoux。ラップは8人のスキルや個性が光っているだけでなく、有終の美と言えるキラーフレーズばかり。個人的には、patoのヴァース「夏なのに震えが止まらねえ武者ぶるい そりゃあそうだろ ずっと想像した東京ドームでするワンマン 茨の道の遥か向こうのチャンピオンロードを仲間とラン」を満員のドームで堪能したい。
※記事初出時、一部楽曲名に誤りがありました。お詫びして訂正します。
- 真貝聡
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ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。
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野菜ジュース @VocaloidSongRT
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